[♣8]ゲームスタート-1
PiPiPiPi――。
……目覚ましの音。
夢から現実へと引き戻す音色が聞こえてくる。
PiPiPiPiPiPiPiPi――。
……しかし、いつもとは目覚ましの音色が違うような…。
それに若干、肌寒い…。
いつものように布団をもごもごして起きることに抵抗するが、いつもと感触が違う。
まるで全身を優しく包まれているような感覚が…。
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi――。
先ほどからアラームが催促してくるので、西室 乾は意識を覚醒させる。
目を開くと…。そこには見慣れた部屋の天井ではなく、綺麗な青空が広がっていた。
「………? ここはどこだ?」
すぐさま、全体を見回すと、いつもの自分の住んでいる部屋ではなく、建物ひとつない平野が広がっていた。そう完全に外へ出ていたのだった。体を完全に起こし身なりを整えていると、自分が通っている高校の制服を着っぱなしなことを気づく。
「制服着ているし、家には帰っていないのか?」
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi――。
先ほどからアラームがいい加減、俺を見つけてくれっと催促のように鳴り続けていたので、そろそろ発信源を探すべく寝ていた寝袋の奥のあたりを捜索する。中から服と同じ材質ぽい色のナップサックが出てきて、中身を確認する。中には音の発信源の携帯型のタブレット、また同じようなポーチ、水2ℓ入ったペットボトル、乾パンといった食料が入っていた。マトリョーシカみたいに入っていたポーチを開けてみると、金色のコインらしきものが1枚入っていた。
「なんだこれ、金か? いやメッキ加工したおもちゃってこともあるよな」
金色のコインが本物か偽物かは、今の状況判断するのは後回しにして、問題はこれだ。
先ほどから五月蠅くなり続けているタブレットを手に取る。
「これ、俺の持っているやつじゃねぇな。誰のだこれ?」
大手に出回っているようなスマートフォンとは少しデザインが違う。よくよくタブレット観察してみると、表面は似たようなデザインで、液晶の画面に下部分には感圧式のボタン、上部分にはマイク、スピーカー、内カメラ、あとは側面には音量調整、電源ぽいボタンといったよくあるのと似たようなデザインだったが、思いっきり違った部分もあった。側面になにか差し込めるような、差し込み口が3個口あった。また裏面を覗いてみたが、外カメラが付いているだけで特に変わったものは無かったが、よくあるメーカーのロゴの刻印が何もなく、まっさらな裏面であった。
「変わった形のスマホだな、しかも少し分厚いし、どこのメーカーだろう?」
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi――――――――――。
「あぁ! うるさいな!」
一心不乱になり続けているタブレットにいい加減アラームを止めようと思い、自分が持っていたスマホと同じ要領で電源ボタンを押してみる。するとタブレットが点き、画面には目覚まし時計のイラストと、[スタート]というボタンが表示されていた。
「とりあえず、この文字に触ればいいのか?」
[スタート]という文字に触れてみると、液晶はタッチパネルだったので反応し、ずっとなり続けていたアラームが鳴り止む。すると画面中央にあった目覚まし時計がコメディ調に吹っ飛び、一人のキャラクターが歩いてくる。真ん中に立ち、一礼すると…。
「やぁ、みんな! おはよう。気持ち良く寝れたかな? ――ようこそ異世界へ!」
「……は?」