表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

プロローグ-2

 とある病院内の一室。

 静かに安らかに眠る少女の姿と見守る青年の姿があった。


「あら、渚ちゃんのお兄さん。いらっしゃったのね。毎日お見舞いありがとうね。先ほどまで元気に喋っていて、疲れたのか眠っちゃたわ」


「そうだったのですね。ありがとうございます。今日も元気で良かったです」


「ただね……。日に日に体力が落ちてっているのか、寝るペースも早くなってるわね……」


「……そうですね」

 

 このままいくと、妹は死ぬかもしれない状態に青年は暗い顔をするしかなかった。


「本当、世の中って酷ね。若いのに、こんな辛い選択を迫られるしかないって悲しいね。私からは渚ちゃんが元気になれることを祈ることしか出来ないのが辛いわ」


「いえ、気を使わなくても大丈夫です。もう俺は覚悟できてますから」


「若いのにたくましいわね。じゃ、私は行くから何かあったら、そのナースコールで呼んでね」

 そう言って看護師はこの部屋から立ち去る。

 青年はまた少女の方へ視線を向け、今後のことを考え込む。


(結愛を救うのに3億5000万円…。身寄りも無い学生俺では到底払えない金額だ……)


 青年の妹は呼吸器不全による治療が難しい病気を伴っている。治療には海外でしかできない医療施設や予約の難しい有名医師を呼んだりと色々と費用が嵩み、3億近くと大金が必要になってしまった。


(このままでは渚が死んでしまう……)


 青年はただただ妹が亡くなることしかならない状況に哀しみを感じながら、妹の病室を後にしバイト先へ向かった。



 *** *** *** *** *** *** *** ***



 バイト先での仕事が終わり、青年の住むアパート一室へ戻った。

 この部屋には2年前までは青年と妹の二人で暮らしていたが、妹の体調が悪化し入院生活となり青年一人だけとなってしまった。この寂しさを感じる空間にはとうに慣れたのか、青年はただただいつもどうりに服を着替え、布団に ながら倒れ、何もない天井を見つめるのだった。

 何も無いまま時を過ぎる中、唐突に青年の携帯から音が鳴る。

 無言で携帯を覗くと通知欄には見覚えがない連絡先からメールが届いていた。


「…?なんだこのメール?ゲームのご案内?」


 意味不明なメールに疑問符を浮かべるが、よくある迷惑メールと思いつつ、興味本位でメールを開く。さっとメールを読み流す勢いで見ようとするが最初の文言から目が留まってしまう。


 ”西室 乾 様。

 難病を抱えている妹さまの事でお悩みでしょうか?”


 この文言だけで、メールが無作為に送られたものではなく、俺個人に宛てられたものであった。


 俺のことを知っていて、事情を知る人物…?

 知人が悪ふざけで送ってきたのか?だとしたらタチが悪い。今すぐにでもそいつとの縁を切るレベルだ。


 憤りを感じながらも再びメールを読む。先ほどのように読み流さずじっくりと。


 ”西室 乾 様。


 難病を抱えている妹様の事でお悩みでしょうか?


 妹様の治療の為に多大なる金銭が必要だとご理解しております。


 学生の身分の 乾 様では用意できなことも承知です。


 そんな 乾 様にご提案がございます。


 私どもが開催します<ゲーム>に参加し、勝ち残ることが出来ましたら、


 最大で賞金10億を御提供致します。


 しかし上手い話で不審かと思いますが、強制ではございません。


 もし裕樹様が妹様の事を思うなら参加の方いかがでしょうか?


 参加方法はこのメールを空メールでも宜しいので返信頂ければ、


 参加表明したとなります。


 開催時期は近日行われますので、


 開催当日となりましたら私共で会場までお送り致します。


 では 乾 様のご参加を御待ちしております。


 ―――――――――――― 道化なるゲームマスターより。”



 何かの悪戯調のメールには便箋風の背景に空いているスペースには仮面をつけたピエロっぽいデフォルメのキャラクターが可愛らしく添えられている。

 ゲームに勝てば賞金10億、まるで小学生が考えそうな設定だ。しかし悪戯にしては色々と手が込みすぎている。自分の事情を把握しすぎているのも気持ち悪い。本当ならこんなメール無視するのが妥当だが、私情に踏み込むような真似に苛立ちを少し覚える。


「なんだよ、これ……。いいだろ乗ってやるよそのゲームに。ちゃんと100億寄越せよ」


 謎のメールに当たるように文章通り返信を行う。しかし裕樹このメールに少しだけ希望を抱いていた、賞金という文字に。人生に大金を手に入れる機会なんてそうそう無い、しかも必要となる場面で。


「まぁどうせ迷惑メールってオチだろう。変なメールが一杯きたらメアド変更するか」


 半信半疑な気持ちで携帯と一緒に目も閉じていく。意味不明なメールよりも妹のことに思い耽ながら、眠りについていくのだった。

 翌日、学校で知人たちにメールについて聞いて回るも、誰も知らなかった。結局はただの迷惑メールかと結論付け、俺はいつも通り、学校、妹の見舞い、バイト、帰宅といったいつも通りに日常へと戻る。

 しかし忘れた頃にやって来る。西室 乾(にしむろ けん) が参加を申し込んでしまったゲームに…。


「…………? ここはどこだ?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ