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怠惰の主  作者: 足立韋護
第二世界
31/76

紅白と機械の合戦

 自由行動を命じられ即座に試したのはこの学園都市からの脱走であった。

 ところが授業中につき、学園敷地外に出ることは目に見えない膜によって阻まれた。ならばと、それすら突き破ろうとしたが得られたものは、もはや慣れ親しんだ訝しげな視線のみであった。

 無念、また試そう。


 特別行くあてもないので、ぶらついていた堂前に付きまとうことにした。堂前は特に嫌がる様子もなく、それどころか男前にも「どこ行きゃいいかわかんないでしょ。案内がてら散歩でもしようぜ」と手招きしてくれたのである。

 こんな奴に生まれられなかったのが悔やまれる。今からなろうとは思わんが。


「ここが特殊戦技場。通称、コロシアムだ」


 特殊戦技場は一個の建屋として、教室とは全く異なる場所に建てられていた。スタジアムのような形をしたそれは、白銀色に鈍く輝いている。

 中に入ってみるとだだっ広いだけの、金属で作られた味気ない広場が存在するだけであった。


「堂前、お前は何もしないで良いのか」


「んー? なんの話だ」


「お前のさっきの口ぶりだと、評価は退学にも関わる重大事項なんだろう。他の奴らは勉強なり何なりしているのだと思うが、お前はといえば何が楽しいのか、ずっと歩いている」


 堂前は「おいおい案内させといて」と苦笑いしたが、軽くため息をついてから俺に向き直った。


「まー、それはじきに分かるさ。誰が何を武器にしてこの学園を生き抜いてるのかはな」


「まるで学園自体がコロシアムだな」


「それ、的得てる」


 口角を上げた堂前は頭の後ろに両手を添えながら、コロシアムの中を歩き回った。


「知ってるか。年末にこのコロシアムでマキナの学内大会が開かれるんだ」


「いや、知らないな」


「まさかと思ったけどマジか。紅白歌合戦と並んで超絶有名だと思ってた」


 紅白歌合戦とその大会が肩を並べていることのほうに驚いた。たかだか一つの学内大会だぞ。何を面白がってそんなものに釘付けになるのだ。芸人が尻を猿のように真っ赤になるまで叩き込まれている番組のほうが百倍面白いと思うが。


「優勝者は、その年の評価と毎年違う豪華賞品が貰えるって話だぜ。俺らは一年だから勝手はわかんないけどな」


「そうか。それは是非とも狙いたいところだな」


 あまり興味はない、早く昼飯食おうなどとは言うまい。いかに俺であったとしても、わざわざ案内をし、様々解説までしてくれる者に無礼は働かないのだ。

 しかし、もう話は終わりか。昼時なのだから昼飯食べたいのだが。


「おっと、そろそろ昼だな。最後は学食を案内するか」


「よしきた」


 学食は自由に食べられるビュッフェ形式となっていた。安定と信頼の学園クオリティである。俺と堂前は各々飯を確保してから席に着いた。


「そういえば、郡山はここの先生なのか?」


 堂前は口に含んだ味噌汁を鼻から噴き出し、咳き込んだ。汚い奴め。


「本当に何も知らないんだな! ちょ、ちょ、ティッシュティッシュ……」


 堂前はティッシュで顔面を拭いながら、笑いをこらえている。余程の有名人か奇人なのか。どうやらこの世界で俺は世間知らずという不名誉な称号が与えられそうである。


「彼女は、学内大会の前大会覇者だよ」






────女だったのか。

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