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if桃太郎シリーズ

if桃太郎続編・金太郎って、どんなんだっけ?

作者: 四季

if桃太郎の続編で、if金太郎です。

前編になる短編「桃太郎ってどんなんだっけ?」を読んでいた方が分かりやすいと思いますが、忘れてたり読まなくても大丈夫なようにダイジェストに内容を入れてある…つもりです。

 あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。

 おばあさんが川で拾ってきた桃から生まれた桃太郎は立派に成長し、村を荒らしていた鬼と戦い配下として使い村の発展に貢献していました。

 幸せに暮らしていた、そんなある日のことでした。

 いつも通りおじいさんが山に柴刈りに行くと、大きな熊におどかされてしてまい、足に怪我をしてしまったのです。

 おじいさんは何とか家まで帰ってこれましたが、しばらく安静が必要です。

 そこでおじいさんは、桃太郎にお願いをしました。


「桃太郎、じいさんの代わりに山に柴刈りに行ってくれないかい?」

「柴刈り?ああ、薪拾いだろ。代わりに行くから、ちゃんと休んでるんだぞ!」

「すまんのぉ。頼むぞ、桃太郎。」

「任せておけ!」

「熊には気を付けるんじゃぞ。」

「わかってるさ!」


 こうして心優しい桃太郎は、おじいさんの代わりに山に柴刈りに行くことになったのです。


「なぁ、ばあさん。俺がじいさんの代わりに山に行くから、弁当作ってくれるか?」

「はいはい。分かってるよ。」


 お弁当を頼まれたおばあさんは、おじいさんの代わりに働こうとする桃太郎のために、桃太郎の大好物を用意することにしました。

 それは、あつあつもちもちの…出来立てのお餅。


「桃太郎気を付けて行ってくるんだよ。はい、お弁当。」

「ありがとう。ってこれ…。」

「たしかあの鬼退治に行くと言った日もこれを持って行ったねぇ。なんて言ったかねぇ。」

黍団子きびだんごだろ。いや!これ、餅だし!」

「違うのかい?今日もいっぱい作ったんだけどねぇ…。」

「ああ、うん。アリガトウ。ウレシイヨ。イッテキマス。」

「いってらっしゃい。」


 おじいさんの代わりに柴刈りに行く桃太郎の準備は万端です。

 柴を入れるための籠を背負い、柴を刈るためのまさかりを持っています。

 おばあさんから受け取った熱い袋を腰にさげ、山へと出発しました。

 受け取った際の桃太郎の様子は少々おかしかったですが、問題ないでしょう。



 俺、桃太郎。

 鬼を餅で退治して配下にした桃太郎だ。


 …また、ばあさんから餅を受け取ってしまった。

 あの鬼を餅で退治した光景から餅が爆弾にしか見えず、餅を苦手としているわけだが…いまだに婆さんの俺が餅を好きだという誤解を解けずに今に至る。

 村のみんなにもその誤解が広がって、よく餅を受け取ることが増えて…ストレスで禿げるんじゃないかと思っているが、餅を投げて戦ったという食べ物を粗末にした行為を言い出せるわけがない。

 最近は村の収穫も増えているし、桃太郎になる前の俺の感覚としてはそれくらいとも思うが…少し前は鬼が暴れたりしたせいもあり、そのころの貴重な食べ物を粗末にしたなんて言えなかった。


 それに俺が知っている桃太郎なら、金銀財宝を持ち帰れるハズなのに、鬼の所には財宝と呼べるものは無くて…爺さんと婆さんに楽させてやることもできなかった。

 雉と猿と犬を仲間に出来なかった所から失敗していたと思う。

 だから今回爺さんの代わりに働くというのは、親孝行のつもりだ。


 そのつもりなのだが。

 柴刈りって、芝刈りじゃなくていわゆる薪拾いだ。倒木なんかを持って帰るためにこうして斧を持っているわけだが…なんだか、この斧デカくて重い。まさかりというものらしく、マサカリと言うと金太郎が持っているイメージだ。確かにこんなものを余裕で振り回す爺さんなら、熊に見つかっても無事に帰ってこれると思う。


 俺金太郎じゃなくて、桃太郎なんだけど大丈夫かな…?

 これを現役で振り回している爺さんの代わりが出来るか不安だった。





 おじいさんの代わりに山に柴刈り行った桃太郎。

 熊に会うこともなく、順調に進んでいます。

 太陽が真上にくるころ、桃太郎はお昼にすることにしました。

 ちょうどいい切り株を見つけたのでそこに腰かけ、おばあさんが作ってくれたまだ温かいお餅を取り出しました。

 その時、近くの茂みがガサガサと揺れます。

 桃太郎はとっさに餅を構えて様子を伺っています。

 その茂みから出てきたのは、雉と猿と犬でした。

 どこかで見たような2匹と1羽です。


「あ!あの時の餅だ!」

「嘘つきだ!」

「ネバネバだ!」

「え!?俺は桃太郎だが…お前ら、あの時は悪かったな。」

「餅太郎、許すまじ!」

「嘘つき殲滅!」

「おなかすいたー!」


 鬼退治の時に仲間に出来なかった雉と猿と犬でした。

 桃太郎は真摯に謝りましたが、動物たちは怒ったまま、桃太郎に飛びかかって来ました。

 桃太郎はとっさに立ち上がって、避けようとしました。

 謝ってもう一度仲間になってもらうつもりなので、攻撃するつもりは無かったのです。

 こうげきするつもりは………。


「…!!!」

「ぐっ!!!」

「うがー!!!」


 なんで突然飛びかかってくるんだよ!

 雉!すまん!とっさに餅持った手で防御したから、くちばしが餅に刺さって捕まえちまった!

 猿!なんで!立ち上がった時に落ちた餅が口に入って窒息してるじゃねえか!

 犬!どうして落ちた餅を拾い食いした!牙に餅が絡まって口の中がヤバくなってる!学べよ!


 桃太郎は親切に、困っている動物たちを助けてあげました。

 動物たちは、桃太郎に感謝して許すことに…。

 ゆる………。


「餅太郎、許すまじ!」

「嘘つき殲滅!」

「ネバネバー!」

「おい待てって!俺は桃太郎だし!急に飛びかかってくるな!また餅に絡まるぞ!」

「仕方ない。こうなっては…。」

「ボスー!ボスー!!」

「助けてボスー!」


 助けを呼ぶ動物たちをしばらく呆然と見た桃太郎は、横に倒れているまさかりではなく、足元に落ちた袋を拾い、餅を構えました。

 武器を持たないことで、交渉の余地の残しておいたのです。


 ガサガサという大きな音が近づいてきます。

 2匹と1羽が現れた時よりも、茂みの揺れは大きくて音も大きいです。

 現れたのは、大きな大きな熊でした。

 動物たちは大喜びで熊の後ろに隠れて、桃太郎を威嚇します。

 そして桃太郎を一瞥した熊は、大きな声で吠えました。


「俺の部下に何をしたー!」

「熊!?デカい!!すみませんでした!!」

「こんなに怯えさせるとは!許さん!勝負だ!」

「すみません!許してください!」

「卑怯者め!その武器を使うなら使えばいい。叩きのめしてやる!」

「すみません!すみません!」

「俺に勝てるなら許してやる!来ないなら行くぞ!」

「ええー!?」


 必死に謝る桃太郎でしたが、熊は勝負で決着をつけるつもりです。

 大きく吠えた熊が飛びかかって来ました。

 ですが、桃太郎はすでに熊から言質を得ていました。

 そう。熊を倒せば許されるのです。

 桃太郎は手に持った餅を投げました。

 まさかりを警戒していた熊の顔に、温かくてもちもちのお餅が張り付きました。



 ボスって熊かよ! 

 謝ってるのに…この熊、全然話聞かねぇ!

 飛びかかってくるのかよ!

 こうなったら…餅だ!餅攻撃だ!

 デカい熊だから、餅一つで動きは止まらないだろう。

 …まだまだ!もっと投げてやる!!!

 嫌がるまで投げてやる!


「ぐお!何をする!やめろ!ネバネバする!気持ち悪い!やめてくれ!」

「もう飛びかかってこないか?」

「俺の負けだ!許してくれ!」

「なら止めるけど、後ろの奴らにも許すように言ってくれるか?」

「もちろんだ!だから、助けてくれ!」

「わかったよ。」


 熊と決着のついた桃太郎は、攻撃の手を止めました。

 熊の顔や体は、桃太郎の投げた餅がたくさん付いて餅まみれになっていました。

 餅まみれの熊を桃太郎は助けました。

 そして、感謝した動物たちは桃太郎の仲間になりました。


「ありがとうございます。餅太郎さんですね!」

「いや、桃太郎だし。」

「ボスが負けるなんて。」

「これからは、餅太郎がボス?」

「ネバネバ嫌ー。」


「そうだ。これからは餅太郎さんがボスだ!」

「いや、桃太郎だけど。」

「餅太郎ボス。よろしくお願いします。」

「餅太郎ボス。よろしく。」

「ボス。ネバネバ嫌だよ!」


「ところで、今日はどんな用で山まで?」

「桃太郎だけど…今日は柴刈りに来たんだ。だいぶ集まったし、そろそろ帰るよ。」

「それなら、俺の背中に乗ってください!運びます!」

「いや、いいよ!帰りながらもう少し拾うつもりだったし!」

「それなら代わりに拾いましょう。」

「任せといて。餅太郎ボス。」

「わんわん。」

「…じゃぁ頼むよ。」


 熊の背中に乗るって。俺すごいんじゃないか?

 でもコレ、金太郎っぽいよな。餅太郎でも金太郎でもなくて、桃太郎なんだけど。

 っていうか、犬が枝で遊んでて拾ってこない。

 雉と猿が優秀だな。犬にはマジで拾い食いしないように注意しないと。


 

 こうして桃太郎は、熊と雉と猿と犬を配下にして村に帰りました。

 おじいさんの足が治るまで…いいえ。治った後も、山の動物が柴刈りを手伝ってくれるようになり、おじいさんもとても喜んでくれたとさ。





「桃太郎!良く戻ったね。その動物たちは…?」

「仲良くなったんだ。これから、柴刈りを手伝ってくれるってさ。」

「そうなのかい!?鬼に続き、熊まで…桃太郎は本当にすごいねぇ。」

「…いや。ばあさんの餅のおかげだよ。」

「そうかい?またいっぱい作ってあげるねぇ。」

「え?あーうん。アリガトウ。」

「おや、あんなにいっぱい入れたのに、また全部食べちゃったのかい!?」

「いや、それは…。」

「まさか、食べ物を粗末にしたんじゃないだろうねぇ。」

「いや!そんなことはない!」

「そうだよねぇ。本当に餅が好きだねぇ。」


 熊に乗って村に帰ってきても、その程度の反応ってすげぇな婆さん。

 ああ、村の人もそんなに驚いてないな。

 鬼が手伝いに来るせいもあるかもしれないが…俺、もうダメかも。

 熊に襲われた時に、鉞よりも餅の攻撃に頼るって…マジ、餅太郎だな。

 これからは婆さんと餅に、感謝して生きようと思う。





 ある日の鬼。

「おい、餅太郎さんが熊に乗ってる。」

「やっぱり餅太郎やべぇ。逆らえねぇな。」

「餅コワイ。餅コワイ。」


 ある日の動物。

「見てください。鬼を働かせてますよ。」

「餅太郎、強すぎる。」

「ネバネバ嫌ー。」

「いつか下剋上しようと思っていたが、辞めた方がよさそうだ。」





 桃太郎のおかげで鬼と熊が出入りする村は、治安に優れて発展し、村全体が幸せになりましたとさ。

 感謝する村人だけでなく周辺の村からも、桃太郎の力を求めて好物として有名な餅を持ってやってくる人々が来ましたが、桃太郎は生涯村から離れることなく、村の発展に貢献し続けましたとさ。


 めでたしめでたし。

 …この物語って、桃太郎ですか?金太郎ですか?…そうですか、餅太郎ですか。分かります!


 おしまい。

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