一方通行
「ん……と。僕の…名前…山上圭斗…です……これから……ええと…よろしくお願いします…。」
単純で味気のない自己紹介。
ちなみにこの喋り方は生まれてからずーっと続いていて、本人も直すつもりはないらしい
「ああ、なんて綺麗な声!こちらこそよろしくね!」
「感動したよ!よろしくね!」
「よろしく!山上くん!」
よろしく、よろしく、よろしく、と謎の現象が沸き起こる。慣れたよ、この空気。全く。
けれど、幼馴染(私)について触れてくれなくて良かった。そのうちバレるのは確実だけど、今バレると四面楚歌になるので本当に良かった。
短かった自己紹介タイムが終わり、一同解散となった。と、その時、前触れもなく、
「…春……帰ろ?」
「ハッ!」
ああ、意識が飛びかけた。
……はあ、またやりやがったな
この後のことは言うまでもないだろう、女子生徒全員に睨まれながら、圭斗と帰る。何という拷問だよ。
頬が痛くなるほど笑顔で帰ったけど、何か?
次の日。当然の如く私の悪評が飛び交っていた。オンナって怖い。女だけど。ちなみに全て100パーセント完璧に嘘の内容だったのでまあ大丈夫だと思う。
こういう噂は75日とかで消えるとか言うものね。気にしたら負けだ。
べ、べつに気にしてなんていないんだからね!
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山上圭斗 視点
まただ、また春の悪い噂が流れてる。幼馴染の春は強い女の子だ。誰に何を言われようと弱音をあげたり、泣いたりしたことがない。
今回も何故か悪く言われているが、一体春が何をしたと言うのか。
…思い返しても思い返しても、思いつかない
春は僕の憧れだ。幼い頃から一緒にいて、僕と普通に接して、普通に遊んで、普通の友達だ。僕の唯一の普通の友達だ。
他の人はみんな僕をもてはやす。両親でさえ僕を特別扱いする。何故だかは分かる。顔が良いらしい。とはいえ自分の顔の評価など自分で出来るはずもなく、ただ人の評価に疑問に思いながら頷くしかできない。
顔は大事だと思う。僕もキレイな芸能人など見てドキッとしたことはある、けどその人も僕を普通に見てくれないと考えると嫌になる。だから、僕には春が必要なのだ。
普通に接してくれる、春が必要なのだ。
だから、春を傷つけるのはやめて欲しい。
ねえ、これ、ラブコメですかね
……そう簡単にラブに走らせねえよ?コメディーと書いてあるでしょ?
はあ、羨ましい