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狩道中学校カードゲーム部

 夢を見た気がする。長い長い夢だった。それこそ、世界が生まれて、育って、壊れて、また創られるくらい長い夢。


 創られる? 創るって、誰が? 神様とか?


『当たらずとも遠からず、だな』


 声がした。初めて聞いたのに、どこかで聞いたような声だった。もっと言えば、いつも聞いているかのような親しみを感じた。


『俺は銀河。私は宇宙の欠片。僕は真理にして神秘。我は終焉への道の一本』


 声がした。とても遠くから聞こえてくるような声だった。いや、それは声というより、天空を揺らすような咆哮だった。


『俺達の戦いはまだ始まらん。今はただ、牙を研ぐが良い。精々、俺を使いこなせるように鍛錬を重ねることだ』


 言葉の意味が理解できない。感情の一切を感じさせない、機械的な声。温度がない。冷たい水底にでも沈んでいくような気分に襲われた。しかし、何故か恐怖や不安はなかった。むしろ、その温度の無さに安心さえ覚えた。


『ところで良いのか? 今日はにゅうがくしきとやらなのだろう?』

「ああ、そうだった」


 それでは、夢から醒めるとしよう。俺も今日から中学生だ。




 突然ではあるが、空津栄治のプロフィールを紹介しよう。


 誕生日は七月七日。血液型はAB型。現在十二歳で、本日、四月七日より市立狩道中学校の一年生となる。身長・体重は平均的。容姿も普通。


 家族構成は父と母。しかし、学会では著名な学者である両親は大学や研究機関、出張先で寝泊りすることが多く、家には滅多に帰らない。幼少期の頃からそれが普通であったため、そのことを寂しいと思ったことはない。本人に自覚はないが、性格や価値観は完全に親譲りである。


 趣味は天体観測とトレーディングカードゲーム「レジェンドロワイヤル」。初めてこのゲームに触れたのは、小学四年生の春。クラスメイトの美少女、板村蒔菜から勧められたのがきっかけだ。以来、地域の大会にも出るほど夢中になった。


 使用するデッキは【スター】シリーズを基盤とした【大銀河】。切り札は【ギャラクシードラゴン】と【スターシグナル】。


 栄治をレジェロワに引き込んだ彼女は別の町に引っ越した。栄治をレジェロワに誘ってすぐのことだった。おかげで、彼女と戦った回数は数えるほどだ。ちなみに、戦績は栄治の三勝九十七敗だ。引越しはどうやら親の都合らしいが、詳しいことは知らない。時々ではあるが、手紙やPCメールのやり取りはある。向こうでもよくやっているようだ。


 できることならば、彼女と同じ中学校に進みたかったとは思う。だが、どうしようもないことだ。知らされている住所は、中学生には行こうと思っていける距離ではない。淡い初恋を抱いた相手だったが、いずれ忘れてしまうのではないかと思う。


 そんなことを考えているうちに、目的地の中学校に到着した。狩道中学校はこの町では一番古い中学校で、良い言い方をすれば歴史を感じる。悪い言い方をすれば、ボロい。以前の改装工事は十年以上前で、現代っ子の栄治からすればかなりボロが目立つ。


「あ、栄治だ。おーい」

「ああ、チアキか」


 門の近くで栄治を呼ぶのは、眼鏡以外に特徴らしい特徴が見つからない少年。栄治は自身があまり派手な方ではないと自覚しているが、彼ほどではないと思う。


 この眼鏡の少年は、栄治の小学校時代からの親友、新城智明。名前の読みは「ともあき」だが、「ちあき」とも読めることから、そのまま「チアキ」と呼ばれている。眼鏡は伊達である。栄治と同じレジェンドロワイヤルのプレイヤーだ。使用するデッキは《幽鬼》で統一された怪異デッキ。


「お前も一人か?」

「ああ。母さんは来たがっていたけど、身体のことがあるしね。という訳で、後で写真を頼む」

「ああ、了解。こっちも頼むよ。まあ、うちの親はあんまり興味ないだろうけどさ」

「相変わらず、放任主義にも程があるな」

「言ってくれるな。虚しくなる」


 そんなことを話しながら、二人は自分達の教室へと向かう。


「そういえば、部活どうする? この学校、強制入部だぞ?」

「強いてやりたいこともないからね。栄治に合わせるよ」

「……じゃあ、興味あるとこがあるからさ。式が終わったら行ってみるか」

「構わないよ」


 入学式は滞りなく終了した。ひどく退屈な時間だった。校長先生の話の退屈さは中学校に上がろうと変わらないことにうんざりしながら、栄治はこれからの予定を考える。


 入学式後にあった担任から説明はプリントにも書いてあることだったのでほとんど記憶には残っていない。部活への入部は一週間後の部活が終わってからだそうだ。ただ、見学だけならば今日からでも可能らしい。


「という訳で、特別教室棟にレッツゴーだ」

「りょーかーいー」


 眠そうにする智明を伴い、資料で重くなったカバンに身体のバランスを崩しながら、目的地に向けて廊下を歩く。


 狩道中学校は体育系の部活が多く、文化系の部活は少ししかない。美術部、吹奏楽部、将棋部などだ。それらの部活は音楽室や理科室のような特別教室を部室として使用していることが多い。


 そして、栄治達が目指している部屋は「第二ミーティングルーム」。部活の名前は、「カードゲーム研究部」だ。この部活動はつい最近作られたもので、創設には板村広樹が関わっていると聞いた。入部したい理由にそれがないわけではない。あの人の面影をどこかで探していると、栄治は自己分析した。


「それにしても、広樹さんすげえよな。中学校に新しい部活を作るって」

「まあ、ハードルは高そうだね」

「でも、転校しちゃったんだよな……。広樹さんが転校したのって中学一年生だから後輩もいないし、知っている人はいないだろうなあ。あ、でも顧問の先生とかは変わってないかもしれないな。そっちの方から話を聞いてみるか」

「なるほどね。ん、ここじゃない?」

「あ、本当だ」


 懐のメモを取り出し、部屋の名前が正しいことを確認する。装いを軽く直して、アイコンタクトを交わす。深呼吸をして緊張を和らげる。ノックして、ドアを開けた。


「失礼しまーす」


 ドアを開けて目についたのは、机に並べられた大量のカードと、それを睨むように見つける太っちょの少年。おそらくこの部活に所属している先輩であろうと考えた栄治は自分達の身分を明かそうと口を開く。


「えっと、俺達は……」

「むむ! さては新一年生ですな!」


 言葉を遮られて、面食らう栄治。気を取り直して栄治たちが頷く前に、肥満体の先輩は名乗った。


「自分、古いに森林の林に、後で楽しむと書いて、古林(こばやし)後楽(こうらく)と申しますぞ! 二年生で、部長ですぞ!」


 脂肪を揺らしながら、古林後楽は奇妙なポーズを決めた。かなりおかしな空気になっているが、本人は最高に決まったと思ったようだ。異常なほどのドヤ顔をしている。


「えっと、他の部員さんは……?」

「残念ながら部員は自分だけですぞ。まあ、自分ひとりがいれば地区最強と言っても過言ではないでしょうがな!」

「え? 先輩だけなんですか……?」

「ふっ! 我が部活で扱うゲームは、レジェンドロワイヤルが主ですぞ。このゲームは昨今では大きな大会も開かれるというのに、何故部員が集まらないのか自分は不思議で不思議でしょうがないのですぞ!」

「「………………」」


 絶対にこいつが原因だよ。皆、こいつを避けて入部しないんだよ。


 栄治は智明のことを親友と呼んでも過言ではないと思っているが、何を考えているか分からないことが多々ある。だが、今だけは心の声がシンクロしたを理解した。


「では軽く倒してやりますぞ! 自分を戦えたことを、未来永劫称えるといいですぞ!」

「はあ、よろしくお願いします」

「ふっはっはっは! 接待プレイなどする必要はないですぞ。まあ、どうせ自分が圧勝するでしょうが、途中で不貞腐れないことを願いますぞ! ああ、いくら自分が強いからと言って、自信を失うことはないですぞ。君達が弱いのではなく、自分が強すぎるだけですからな!」

「ふざけ……悪いけど俺が勝ちますよ?」

「ふっ。ど素人めが。調子に乗っているようですな。では、自分がその腐った性根を叩き直して差し上げますぞ!」


 何でそこまで言われなきゃいけないんだよ。


 栄治の顔は虫唾が走ったことを隠せていなかったが、後楽は後輩の表情を見て、「あ、自分と戦うことに緊張または恐れ戦いているんだ」という非常に訳の分からない思い込みをした。




「先輩特権で、先攻は当然自分ですぞ!」


 後楽 手札5→6


「自分は【山羊丸】を召喚ですぞ!」


【山羊丸】

「コスト」3「種族」《幻獣》「PW」1000

「効果」①このモンスターの破壊時、デッキから【山羊丸】1体を特殊召喚する。


「トリガーをセットして、ターンエンドですぞ!」


 後楽 エナジー3 手札4 ライフ5 トリガー1 フィールド【山羊丸】


「俺のターン」


 栄治 エナジー3→4 手札5→6


「俺は【スターブルー】を召喚!」


【スターブルー】

「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000+

「効果」①相手のアタックステップ時、このモンスターのPWは+1000される。


「トリガーをセットして、ターンエンド」


 栄治 エナジー4 手札4 ライフ5 トリガー1 フィールド【スターブルー】


「自分のターンですな!」


 後楽 エナジー3→4 手札4→5


「自分は【ヘルハウンド】を召喚!」


【ヘルハウンド】

「コスト」4「種族」《幻獣》「PW」1000

「効果」①このモンスターの召喚時、相手モンスター1体を選択する。このターン、選択されたモンスターは防御できない。


「召喚時効果で、【スターブルー】を選択! これで【スターブルー】は防御ができませんぞ! トリガーをセットして、バトルステップ! 【山羊丸】で攻撃!」

「トリガー発動、【カウンターファイア】」


【カウンターファイア】

「コスト」3「種族」サポート 

「効果」①トリガー(相手モンスターの攻撃宣言)。②相手のPW1000以下のモンスター1体を破壊する。


「【ヘルハウンド】を破壊します」

「ぐぬぬ……! しかし、【山羊丸】の攻撃は受けてもらいますぞ!」


 栄治 ライフ5→4 エナジー4→5


「ターンエンドですぞ」


 後楽 エナジー4 手札3 ライフ5 トリガー2 フィールド【山羊丸】


「俺のターン」


 栄治 エナジー5→6 手札4→5


「俺は手札から【星の導き】を発動します」


【星の導き】

「コスト」4「種族」サポート

「効果」①デッキから2枚ドローする。②自分フィールドに【スター】と名のつくモンスターがいる場合、手札からコスト3以下の【スター】と名のつくモンスター1体を特殊召喚する。


「デッキから2枚ドロー」


 栄治 手札4→6


「更に、【スターブルー】がいるので、第二効果が発動。手札から【スターレッド】を特殊召喚!」


【スターレッド】

「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000+

「効果」自分のバトルステップ時、このモンスターのPWは+1000される。


「トリガーをセットして、バトルステップ。【スターレッド】で【山羊丸】を攻撃!」

「受けますぞ」


 赤き星の戦士の一撃によって、白山羊はあっけなく倒された。しかし、山羊は絶命の瞬間に、声を上げて仲間を呼んだ。


「【山羊丸】の破壊時効果発動! 新たな【山羊丸】をデッキから特殊召喚しますぞ! 更に、トリガー発動! 【サモン・チャージ】! これで自分のエナジーは1つ増えますぞ!」


【サモン・チャージ】

「コスト」4「種族」サポート

「効果」①トリガー(自分モンスターの特殊召喚)。②エナジーを1つチャージする。


 後楽 エナジー4→5


 栄治は内心で舌打ちをした。せっかく攻撃したのに、相手にはマイナスどころかプラスの結果となってしまった。


「ターンエンドです」


 栄治 エナジー6 手札4 ライフ4 トリガー1 フィールド【スターレッド】、【スターブルー】


「自分のターンですぞ!」


 後楽 エナジー5→6 手札3→4


「自分は【ジェネラル・ホース】を召喚!」


【ジェネラル・ホース】

「コスト」6「種族」《幻獣》「PW」3500

「効果」×


 出現したのは、巨躯の黒馬。世紀末的雰囲気を醸しだす大物だった。


「バトルステップ! 【ジェネラル・ホース】で【スターレッド】を攻撃ですぞ!」

「受けます」


 巨躯の黒馬の大きな蹄に、赤き星の戦士は呆気なく踏み潰された。


「ターンエンドですぞ」


 後楽 エナジー6 手札3 ライフ5 トリガー1 フィールド【山羊丸】、【ジェネラル・ホース】


「俺のターン」


 栄治 エナジー6→7 手札4→5


「俺は手札から2枚目の【星の導き】を発動して2枚ドロー。【スターブルー】がいるので、手札から【スターイエロー】を特殊召喚」


【スターイエロー】

「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000

「効果」①このモンスターの召喚時・特殊召喚時、墓地の【スター】と名前にあるモンスター1体を手札に戻す。


「【スターイエロー】の効果で、墓地の【スターレッド】を手札に戻す」


 栄治 手札4→6→5→6


「【スターレッド】をそのまま召喚! 更に、【スターレッド】と【スターイエロー】を墓地に送ることで、【スタースカーレット】を特殊召喚!」


【スタースカーレット】

「コスト」5・コスト3以上の《戦士》「種族」ハイパー《戦士》「PW」2500

「効果」①自分のメインステップ、自分フィールドの【スターレッド】と名前に【スター】とあるモンスターを1体ずつ墓地に送ることで、このモンスターをゲートから特殊召喚できる。②自分のアタックステップ、このモンスターのPWは+1500される。


「トリガーをセットして、バトルステップ! 【スタースカーレット】で【ジェネラル・ホース】を攻撃します!」

「そうは上手くはいきませんな、【山羊丸】で防御! 破壊時効果で、3体目の【山羊丸】をデッキから特殊召喚ですぞ! 更にトリガーで【サモン・チャージ】を発動!」


 後楽 エナジー6→7


 これで後楽のデッキに【山羊丸】はいない。次のターンを凌げば、【ジェネラル・ホース】を【スタースカーレット】で破壊できる。


「ターンエンド」


 栄治 エナジー7 手札4 ライフ4 トリガー2 フィールド【スターブルー】、【スタースカーレット】


「自分のターン」


 後楽 エナジー7→8 手札3→4


「ふっふっふっふ。これは勝ちましたな」


 後楽の不敵な笑みに、栄治は身構えた。


「我こそ勝者なり! 全てを喰らえ、最強の魔獣よ! 超召喚、【合成獣オメガ】!」


【合成獣オメガ】

「コスト」8・コスト8以上の《幻獣》「種族」ハイパー《幻獣》「PW」4000

「効果」①このモンスターの超召喚・特殊召喚時、相手モンスター1体を破壊する。②このモンスターは、1度の攻撃でライフを2つ攻撃する。③このモンスターの破壊時、墓地の《幻獣》を3体手札に戻す。


 獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尾を持った魔獣。複数の動物が合わさった怪物の総称「キメラ」の語源――『キマイラ』と呼ばれたものがそこにいた。


「【合成獣オメガ】の超召喚時効果で、【スタースカーレット】を破壊ですぞ!」


 魔獣が咆哮を上げると、緋星の戦士が消し飛ばされた。


「まずっ!」

「トリガーをセットしてバトルステップ、【合成獣オメガ】でライフを攻撃ですぞ!」

「……っ! ライフで受ける」


 栄治 ライフ4→2 エナジー7→9


「なっ! 1度の攻撃でライフが2つも!」

「ふっはっはっは! 自分のオメガは超攻撃型のハイパー! 空津の使った【スタースカーレット】のようななんちゃってハイパーとは違うのですぞ!」

「……あぁ?」


 なんちゃってハイパー。そんな聞き捨てならないフレーズが耳に入った瞬間、栄治は普段からは想像もつかないような低い声を出した。


「てめえ、もう一回言ってみろよ」

「せ、先輩にその口の利き方をするとは、どういうつもりですかな! いくら己が弱者であるからといって、盤外戦術を使うなど!」

「いや、普通に怒ってんだと思いますが」


 悲しいかな、智明の突っ込みは栄治にも後楽にも届かない。


「決めた。この勝負、絶対に勝つ」

「や、やれるものならやってみることですな!」

「じゃあ、受けてみろ! ライフ減少でトリガー発動だ! 【衛星観測】!」


【衛星観測】

「コスト」5「種族」サポート

「効果」①トリガー(自分のライフ減少)。②自分フィールドに【スター】と名前にあるモンスターがいる場合、墓地からコスト5以下の【スター】と名前にあるモンスター1体を特殊召喚する。③自分の手札からコスト3以下の【スター】と名前にあるモンスター1体を特殊召喚する。


「俺は手札から【スターイエロー】、墓地から【スタースカーレット】を特殊召喚。その時に、【スターイエロー】を特殊召喚時効果で、墓地から【スターレッド】を手札に戻す」


 栄治 手札4→3→4


「ふん。そんな雑魚どもで何ができるというのでしょうな。自分はターンエンドですぞ」


 後楽 エナジー8 手札4 ライフ5 トリガー1 フィールド【合成獣オメガ】、【山羊丸】


「俺のターン」


 栄治 エナジー9→10 手札4→5


「俺は手札から【スターパープル】と【スターグリーン】を召喚! そして、【スターパープル】、【スターイエロー】、【スターブルー】を墓地に送ることで、ゲートから【スターシグナル】を特殊召喚する!」


【スターパープル】

「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000

「効果」①自分の【スター】と名前にあるモンスターが破壊される時、このモンスターを代わりに破壊することができる。


【スターグリーン】

「コスト」5「種族」《戦士》「PW」1000

「効果」①このモンスターの破壊時、デッキからPW1000以下の【スター】と名前にあるモンスター1体を特殊召喚できる。その後、デッキをシャッフルする。


【スターシグナル】

「コスト」7・コスト5以上の《戦士》「種族」《戦士》「PW」3500+

「効果」①自分のメインステップ、自分フィールドの【スター】と名のつくモンスター3体を墓地に送ることで、このモンスターをゲートから特殊召喚できる。②このモンスターのPWは、フィールドの【スター】と名のつくモンスター1体につき+500される。③このモンスターの戦闘時、相手モンスターを戦闘で破壊した場合、このモンスターはスタンドする。


 星の巨大戦士のPWは、自分の星の戦士の数だけ強化される。現在の栄治のフィールドには、【スターシグナル】自身も合わせて3体の【スター】がいる。よって、合計PWは5000となり、【合成獣オメガ】を超える。


「トリガーをセットして、バトルステップ! 【スターシグナル】で【合成獣オメガ】を攻撃!」


 流星の一撃によって、木っ端微塵に粉砕される合成獣。名高い怪物ではあったが、相手が悪かった。


「お、おのれ、なんちゃってハイパーの分際でよくも自分のオメガを……。許しませんぞ! オメガの破壊時効果により、墓地から【ジェネラル・ホース】、【ヘルハウンド】、【合成獣オメガ】を手札に戻しますぞ。ただし、オメガはハイパーなので、手札ではなくゲートに戻りますぞ!」


 後楽 手札4→6


「戦闘に勝ったことで【スターシグナル】をスタンドする。【スタースカーレット】でライフを攻撃!」

「ライフで受けますぞ」


 後楽 ライフ5→4 エナジー8→9


「そして、自分は【チャンス・ドロー】をトリガーで発動ですぞ!」


【チャンス・ドロー】

「コスト」4「種族」サポート

「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②デッキから2枚ドローする。


 後楽 手札6→8


「ターンエンドです」


 栄治 エナジー10 手札2 ライフ2 トリガー2 フィールド【スタースカーレット】、【スターシグナル】、【スターグリーン】


「格の違いを知ると良いですぞ、自分のターン!」


 後楽 エナジー9→10 手札8→9


「自分は【多獣召喚】を発動ですぞ!」


【多獣召喚】

「コスト」3「種族」サポート

「効果」①このターン、自分の《幻獣》のコストは、フィールドの《幻獣》1体につき-2される。ただし、1よりは少なくならない。


「この効果でコスト2になった【ヘルハウンド】を召喚ですぞ! 【ヘルハウンド】の効果で【スターシグナル】を防御不能に! コスト2になった【ジェネラル・ホース】を召喚し、コスト1になった【ケルベロス】を2体召喚ですぞおおお!」


【ケルベロス】

「コスト」5「種族」《幻獣》「PW」3000

「効果」①自分の《幻獣》が3体以上墓地にいない時、このモンスターは攻撃できない。


「トリガーをセットして、バトルステップ! 【ジェネラル・ホース】でライフを攻撃ですぞ!」

「【スターグリーン】で防御。破壊時効果により、【スターグリーン】を特殊召喚」

「【山羊丸】で攻撃ですぞ!」

「もう1度、【スターグリーン】で防御。相討ちになったことで【スターグリーン】は特殊召喚します」

「ふん、やはり引っかかりましたな。この攻撃をライフで受けていれば【ケルベロス】は攻撃できなかったというのに。【ヘルハウンド】でライフを攻撃ですぞ!」

「【スターグリーン】で防御、相討ちになります。破壊されたことでデッキから【スターイエロー】を特殊召喚、効果により墓地の【スターパープル】を手札に戻します」


 栄治 手札2→3


「【ケルベロス】でライフを攻撃ですぞ!」

「ライフで受けます」


 栄治 ライフ2→1 エナジー10→11


「トリガー発動、【ライフ・ヒール】」


【ライフ・ヒール】

「コスト」4「種族」サポート

「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②自分のライフを1つ回復する。


 栄治 ライフ1→2


「小癪な! もう1体の【ケルベロス】で攻撃しますぞ!」


 栄治 ライフ2→1 エナジー11→12


「トリガー発動【リベンジ・ドロー】!」


【リベンジ・ドロー】

「コスト」4「種族」サポート 

「効果」①トリガー(自分のライフが3以下となる)。②このターン中、減少したライフ1つにつき2枚ドローする。③このターン中、破壊された自分のモンスター1体につき1枚ドローする。


 このターン破壊された栄治のライフは2つで、モンスターは【スターグリーン】3体だ。よって、7枚のドローとなる。


 栄治 手札3→10


「ターンエンドですぞ」


 後楽 エナジー10 手札3 ライフ4 トリガー1 フィールド【山羊丸】、【ヘルハウンド】、【ジェネラル・ホース】、【ケルベロス】×2


「俺のターン」


 栄治 エナジー12→13 手札10→11


「俺は2枚目の【衛星観測】を発動。墓地の【スターグリーン】と手札の【スターパープル】を特殊召喚。【スターイエロー】と【スターパープル】を墓地に送ることで、【スターヴァイオレット】をゲートから特殊召喚!」


【スターヴァイオレット】

「コスト」5・コスト3以上の《戦士》「種族」ハイパー《戦士》「PW」2500

「効果」①自分のメインステップ、自分フィールドの【スターパープル】と【スター】と名前にあるモンスターを1体ずつ墓地に送ることで、このモンスターをゲートから特殊召喚できる。②自分の【スター】と名前にあるモンスターの破壊時、手札を1枚を墓地に送ることで、その破壊を無効にする。


「追加で【スターブルー】を召喚して、念のためトリガーをセットだ。バトルステップ! 【スターヴァイオレット】でライフを攻撃!」

「受けますぞ」


 後楽 ライフ4→3 エナジー10→11


「しかし、このタイミングでトリガーをカッコ良く発動ですな! 【デス・スタンプ】!」


【デス・スタンプ】

「コスト」5「種族」サポート

「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②自分のコスト6以上のモンスター1体を破壊する。その後、コスト5以下の相手モンスター2体を破壊する。


「【ジェネラル・ホース】を破壊することで、【スタースカーレット】と【スターブルー】を破壊ですぞ! ふはははははは! さすが、自分! 超召喚が超相応しいほど超かっこいいですぞ! さっさとくたばるといいですぞ、なんちゃってハイパーめ!」


 高笑いをする後楽。このカードが決まれば、攻撃可能な栄治のモンスターは2体。対して、自分のライフは3つ。これで勝てる。相手のライフは1つで、トリガーはなく、自分の手札に不足はない。それで勝てる。だが、それは見当違いの目論見だった。


「【スターヴァイオレット】の効果を発動! 手札の【スターホワイト】と【スターブラック】を墓地に送ることで、その破壊を無効化する!」


 栄治 手札7→5


「……は?」

「これでトリガーはなくなったし、思いっきりやれる……。【スターシグナル】で【ケルベロス】を攻撃して、戦闘で破壊したのでスタンド。【山羊丸】を攻撃してスタンド、【ヘルハウンド】を攻撃してスタンド、2体目【ケルベロス】を攻撃してスタンドぉ!」

「ぬほおお!? そんな、全滅ですと!?」

「【スターシグナル】、【スタースカーレット】、【スターグリーン】で総攻撃だー!」

「なんですとおおおおお!?」


 後楽ライフ3→0




 その夜、栄治は蒔菜に電話をした。内容は当然、狩道中学校カードゲーム部の現状である。


「で、その人、俺の後にチアキにも負けてさ。『現代において最も偉大なる中学生である古林後楽様になんという無礼な振る舞い! 天罰が下りますぞ!』とか言い出したんだよ」

『うへえ。お兄ちゃんの作った部活、今そういう人が部長やってんだ』

「うん。正直、入部するかどうか考えている。いや、学校で合法的にレジェロワできるのは結構魅力的だったんだけどさ……」

『うーん。人間関係って大切だからねー。嫌な人がいるなら無理して入ることないんじゃない? チアキくんは何て?』

「基本は俺に合わせてくれるみたいだけどさ、『限度がある』って」

『うひゃー。らしくない台詞だね』

「そのくらい強力な先輩なんだよ……。あ、カードゲーム部に入る勇気が出なかったら、将棋部に入るってさ」

『ふうん。栄治は? 狩中って部活、絶対に入らないとダメだったよね?』

「考え中かな。カードゲーム部への未練も捨てきれないし。天文部があれば即決だったんだけどさ」

『あー、栄治、星好きだもんね。【スター】シリーズを使い続けているのも、それが関係しているの?』

「だろうね。広樹さんからもらった【ギャラクシードラゴン】もまだエースだし」

『おお。そいつは嬉しいね。……ねえ、栄治』

「ん?」

『レジェロワはさ、自由なんだよ? それに、栄治の人生は栄治のものなんだからさ。お兄ちゃんに拘って、嫌な選択肢を選ぶことないよ。好きにしなよ。大会の出場だって、別に個人でできるんでしょう?』

「……それもそうか」

『そうだよ。それにさ、私はそんなことがきっかけで栄治がレジェロワから離れたらショックかな。栄治にはレジェロワを好きでいて欲しいしね。でないと、私まで嫌われそうな気がするから』

「え、それってどういう意味……」

『おっと、もうこんな時間だ。今日はここまでね』

「あ、ああ、お休み」


 この夜、栄治は蒔菜の言葉に悶々としながら、部活のことを考えた。最終的に、部活紹介を見て決めようという一般的な意見に落ち着いた。


 結局、智明を道連れにカードゲーム部への入部を決意するのだが、それは別の話。

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