詩人
レジェンドロワイヤル。
近年人気急上昇中のトレーディングカードゲームである。
基本的なルールは、召喚したモンスターで攻撃することで、相手のライフを0にすれば勝ち。また、ドローステップにデッキが0ならば敗北となる。
カードの種類には、主役であるモンスターの他に、サポート、キャッスル、ウェポンが存在する。
主役であるモンスターには十五の種族が存在する。
例えば、栄治の使用する【スター】シリーズを始めとする《戦士》は、同じシリーズのカードとのコンビネーションが豊富である。
サポートを自在に操る《魔術師》。特定の効果を封印する《天使》。カード破壊に優れた《悪魔》。
ライフを回復する《精霊》。墓地から蘇生する《幽鬼》。キャッスルで起動する《怪鳥》。
特殊な戦略を組みやすい《妖魚》。攻撃力が高い《亜竜》。多種族の特性をすべて詰め込んだ《幻獣》。
相手のデッキを破壊する《害虫》。エナジーのチャージが速い《植物》。防御に特化した《機械》。
数自体が少ない《豪龍》と存在だけが明かされている《超神》の特性は不明である。
現在、レジェンドロワイヤルの人気は子どもだけではなく、大人にも高い。地方都市に専門のカードショップが立つほどのレベルである。
だが、このカードゲームにはある秘密がある。一体、誰が知るだろうか。このカードゲームが、世界を救う英雄の選定に使われているなどと。
あるカードには、文字通りの意味で魂が込められている。
しかし、それを空津栄治が知るのは数年後の話。
■
とある地方都市のカードショップ。店内にはカウンターの他には、数台のカードガチャポンとバトル用のテーブルが2つ。そして、ジュースの自動販売機に、小さなベンチが1つ。小さな店であるため、それだけでスペースが限界であった。
あまり繁盛していないのか、客は少年が一人。小学四年生、レジェンドロワイヤル初心者、空津栄治である。彼は先程購入したばかりのカードパックを開封し、落胆していた。ちなみに、店主はカウンターで熟睡していた。
「うーん、千円も出したけど、スーパーレアは手に入らなかった……。やっぱり、箱買いしたいなあ。でも、おこづかいがなあ……」
新しいカードは手に入った。だが、どのカードも自分のデッキには合わないような気がする。というより、板村兄妹にもらったカードが充実し過ぎているのだ。しかし、これ以上カードをもらうのも気が引ける。
「きひひ、暇かい?」
突然の声に驚きつつも、栄治は振り向く。そこにいたのは、栄治と同い年ほどの少年。右目を医療用の眼帯をつけている。妙に口が大きく、癖の強い黒髪。七色の着流しはどう考えても目に優しくない。妖怪のように不気味な笑顔を浮かべている。
いつからそこにいたのか、栄治は全く気がつかなかった。このカードショップ店内には間違いなく、自分と熟睡中の店長だけだった。自動ドアが開いたような気配はなかった。警戒心を露にする栄治だったが、相手は構わず続ける。
「いやあ、俺っちさ、人を探しているんだよね。まあ、どんな奴かは分かっていないんだが、確かにどこかにいるはずなんだ。案外、それはお前なのかもしれない」
隻眼の少年はどこか愉快そうに笑んだ。そして、ズボンのポケットから何かを取り出す。
「きひひ、あの道化師と我が麗しき姫君が選んだってことはそうなんだろうけどよ。俺っちはそうは思えない。だから、ちょいと腕試しさせてくれよ」
手にはデッキケース。透明なボディから見えるのは、レジェンドロワイヤルのマーク。
「よく分からないけど、レジェロワをやろうってことでいいのか?」
「応とも。ぜひとも頼むぜ。そっちの台が空いているから、いっちょどうだい?」
「そういうことなら喜んで」
デッキをセットしながらゲームの準備をしようとする栄治だったが、ここで重要なことを思い出した。
「そういえば、まだ名前を言ってなかったな。空津栄治だ。お前は?」
「俺っちか? 俺っちの名前はな……」
待っていましたとばかりに、隻眼の少年は答える。
「六道十字。しがない詩人さ」
■
「先攻は貰うぞ。俺のターン」
栄治 手札5→6
「俺は【スターブルー】を召喚」
【スターブルー】
「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000+
「効果」①相手のアタックステップ時、このモンスターのPWは+1000される。
「トリガーをセットして、ターンエンドだ」
栄治 エナジー3 手札4 ライフ5 トリガー1 フィールド【スターブルー】
「ひひ、俺っちのターン!」
十字 エナジー3→4 手札5→6
「俺っちは【スターレッド】を召喚!」
【スターレッド】
「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000+
「効果」自分のバトルステップ時、このモンスターのPWは+1000される。
「お前もスター使いだったのか」
「ひひ、実は違うのよな。使うデッキは毎回違うのよ。今回は偶然このデッキだったってだけだ」
十字の言葉に、栄治は素直に驚く。多くのカードを持つ蒔菜や広樹でさえ使用するデッキは固定されている。故に、毎回使用するデッキが違うプレイヤーというのは新鮮な出会いだった。
「最強のデッキはあるんだが、滅多に使わないんだなあ、これが。トリガーをセットして、バトルステップだ! 【スターレッド】でライフを攻撃!」
「【スターブルー】で防御!」
十字の【スターレッド】には攻撃時にPWが上昇する効果がある。だが、栄治の【スターブルー】には防御時にPWの上昇する効果があるため、2体のPWは同じ値となる。よって、相討ちだ。
「ひひ、俺っちはターンエンドだぜ」
十字 エナジー4 手札4 ライフ5 トリガー1 フィールドなし
「俺のターン!」
栄治 エナジー3→4 手札4→5
「俺は【スターイエロー】を召喚」
【スターイエロー】
「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000
「効果」①このモンスターの召喚時・特殊召喚時、墓地の【スター】と名前にあるモンスター1体を手札に戻す。
「召喚時効果で墓地の【スターブルー】を手札に戻す。そして、二枚目のトリガーをセット。バトルステップ、【スターイエロー】でライフを攻撃!」
「そのまま受けるぜ」
十字 エナジー4→5
「ライフ減少によりトリガー発動、【トレード・チャージ】」
【トレード・チャージ】
「コスト」5「種族」サポート
「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②自分の手札を任意だけ捨てる。捨てた手札と同じ数だけエナジーをチャージする。
「俺っちは手札を3枚墓地に送ることで、エナジーを3つチャージするぜ」
十字 手札4→1 エナジー5→8
「エナジーを増やされたか……。ターンエンドだ」
栄治 エナジー4 手札3 ライフ5 トリガー2 フィールド【スターイエロー】
「俺っちのターンだ」
十字 エナジー8→9 手札1→2
「俺っちは【スターイエロー】を召喚して、墓地の【スターレッド】を手札に戻す。更に、【星の導き】を発動。デッキから2枚ドローして、手札から【スターレッド】を特殊召喚しちゃうぜ!」
【星の導き】
「コスト」4「種族」サポート
「効果」①デッキから2枚ドローする。②自分フィールドに【スター】と名のつくモンスターがいる場合、手札からコスト3以下の【スター】と名のつくモンスター1体を特殊召喚する。
「ついでにトリガーをセットして、バトルステップ! 【スターレッド】で【スターイエロー】を攻撃!」
「そのまま受けるぞ」
「【スターイエロー】でライフを攻撃!」
「トリガー発動、【カウンターファイア】! 【スターイエロー】を破壊する!」
【カウンターファイア】
「コスト」3「種族」サポート
「効果」①トリガー(相手モンスターの攻撃宣言)。②相手のPW1000以下のモンスター1体を破壊する。
「ひひ、そう来たか。ターンエンドだ」
十字 エナジー9 手札1 ライフ4 トリガー1 フィールド【スターレッド】
「俺のターン」
栄治 エナジー4→5 手札3→4
自分のターンが来たにも関わらず、栄治は手を決めかねていた。
あのトリガーのどちらかは、おそらく【流星群】だ。質を量で圧倒する栄治の切り札だが、相手もスターデッキならば間違いなく投入されている。まして、先程の【トレード・チャージ】の効果で墓地のモンスターは豊富になった。いつでも発動できるだろう。あの手札が【流星群】である可能性もある。
そのデッキの構造を知っているが故に、過剰な警戒をしてしまっていた。
「おーい、まだか?」
「あ、悪い。すぐにやる。……よし、ここは【スターグリーン】を召喚!」
【スターグリーン】
「コスト」5「種族」《戦士》「PW」1000
「効果」①このモンスターの破壊時、デッキからPW1000以下の【スター】と名前にあるモンスター1体を特殊召喚できる。その後、デッキをシャッフルする。
「バトルステップ、【スターグリーン】で【スターレッド】を攻撃!」
そして、【スターグリーン】は破壊されても次のモンスターをフィールドに呼ぶことができる。わざと相討ちをさせて追撃も行える。だが、栄治の目論見はあっさりと打ち破られることになる。
「おっと、トリガー発動だ。【ビルドアップ】。対象は当然、【スターレッド】だ」
【ビルドアップ】
「コスト」3「種族」サポート
「効果」①トリガー(相手の攻撃宣言)。②このターン、自分のモンスター1体のPWを+1000する。
「……っ。【スターグリーン】の効果で【スターグリーン】を召喚して、ターンエンドだ」
栄治 エナジー5 手札3 ライフ5 トリガー1 フィールド【スターグリーン】
「俺っちのターンだ」
十字 エナジー9→10 手札1→2
「俺っちは【スターブルー】と【スターブラック】を召喚。バトルステップ、【スターレッド】でライフを攻撃するぜ!」
「ライフで受ける」
栄治 ライフ5→4 エナジー5→6
「【スターブラック】でライフを攻撃!」
「【スターグリーン】で防御。破壊されることで、2体目を特殊召喚だ!」
「ひひ、そうなるな。ターンエンドだ」
十字 エナジー10 手札0 ライフ4 トリガー0 フィールド【スターレッド】、【スターブラック】、【スターブルー】
「俺のターン」
栄治 エナジー6→7 手札3→4
「俺は【星の導き】を発動。2枚ドローして、手札から【スターレッド】を特殊召喚。更に、【スターパープル】を召喚!」
【スターパープル】
「コスト」3「種族」《戦士》「PW」1000
「効果」①自分の【スター】と名前にあるモンスターが破壊される時、このモンスターを代わりに破壊することができる。
「バトルステップ、【スターレッド】で【スターレッド】を攻撃!」
「【スターブルー】で防御、相討ちだぜ!」
先程、十字の【スターレッド】の攻撃を栄治の【スターブルー】が防御したが、今度は真逆の構造となった。無論、通常ならば先程と同じように相討ちとなるはずだ。
「トリガー発動、【フィジカルアップ】。対象は【スターレッド】だ」
【フィジカルアップ】
「コスト」3「種族」サポート
「効果」①トリガー(相手の防御宣言)。②このターン、自分のモンスター1体のPWを+1000する。
「おいおい、さっきの【ビルドアップ】をやり返されちまったな」
「【スターグリーン】で【スターレッド】を攻撃。相討ちになることでデッキから3体目を特殊召喚する。【スターグリーン】と【スターパープル】でライフを攻撃!」
「どっちも受けるぜ」
十字 ライフ4→2 エナジー10→12
「2回目の攻撃によるライフ減少で、トリガーを発動だ。【チャンス・ドロー】!」
【チャンス・ドロー】
「コスト」4「種族」サポート
「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②デッキから2枚ドローする。
十字 手札0→2
「ターンエンドだ」
栄治 エナジー7 手札0 ライフ4 トリガー2 フィールド【スターレッド】、【スターグリーン】、【スターパープル】
「きひひ、俺っちのターンだ」
十字 エナジー12→13 手札2→3
「俺っちは【スターイエロー】を召喚して、墓地の【スターブルー】を手札に戻す。そのまま召喚する。更に、手札から【スターレッド】と【スターパープル】を召喚!」
1ターンでモンスターを4体も展開した。これは初期に【トレード・チャージ】によってエナジーを確保していたからこそ出来る。だが、初期に手札をあれだけ捨てるなど正気ではない。自分の運とプレイングに自信があるからこそ出来るギャンブルだ。
「これだけ並べれば対処しきれないんじゃねえのか? トリガーをセットして、バトルステップだ。【スターブラック】で攻撃だ!」
「ライフで受ける」
「ひひ、やっぱりそのトリガーはブラフみたいだなあ? 【スターレッド】でライフを攻撃するぜ!」
勝利を確信した十字は攻撃を続ける。だが、その顔色は一瞬で変わった。この状況下で、栄治の口角が吊りあがったのを見たからだ。それは、思い通りに事が運んだ時の笑い方だった。
「それを待っていた!トリガー発動、【フルバーナー】!」
【フルバーナー】
「コスト」5「種族」サポート
「効果」①トリガー(相手モンスターの攻撃宣言)。②フィールド上のPW1000以下のモンスターを全て破壊する。
「なんだと……!」
十字は驚愕していた。よりにもよってPWの低い【スター】デッキに【フルバーナー】を入れる愚か者がいるとは思わなかったからだ。自分モンスターの全滅も有り得る。実際、十字のフィールドには、元々PWの高い【スターブラック】と効果によってPWが底上げされた【スターレッド】が残っている。
「【フルバーナー】で生き残るこの2体が攻撃するのを待っていたってのか? 次のターンに一斉攻撃を仕掛けるために、【スターグリーン】で【スターイエロー】を呼んだのも、そういうことか」
「【スターグリーン】が破壊されたことで、デッキから【スターイエロー】を特殊召喚する。効果によって墓地の【スターレッド】を手札に。そちらの【スターレッド】の攻撃はライフで受ける」
栄治 ライフ4→2 エナジー7→9 手札0→1
「ちっ! ターンエンドだ」
十字 エナジー13 手札0 ライフ2 トリガー1 フィールド【スターブラック】、【スターレッド】
「俺のターン」
栄治 エナジー9→10 手札1→2
「【スターレッド】を召喚。そして、俺はこいつを召喚させる」
この時、少年は確かに輝きを掴んだ。詩人を自称した少年は、目を大きく見開いた。
「回れ、天の星々よ! 降臨しろ、【ギャラクシードラゴン】!」
【ギャラクシードラゴン】
「コスト」6「種族」《豪龍》「PW」2500+
「効果」①このモンスターのPWは、自分の墓地に存在するモンスター1体につき+500される。
「……出やがったか、奇跡の具現化よ」
その呟きは、少年には不相応な懐かしさを滲ませていた。しかし、まだ小学生である栄治にはその言葉に込められたものを読み取ることはできなかった。ただ、奇妙なことを言っているとだけは思った。
「【ギャラクシードラゴン】でライフを攻撃!」
「ライフで受けるぜ」
十字 ライフ2→1 エナジー13→14
自分のライフが残り1つになったというのに、十字は笑みを浮かべた。栄治の前に突如として現れた時のような、口が裂けたような笑い方だ。
「きひひ、このトリガーを【流星群】だと思ってんだろう? だから、モンスターがいるから発動しないとでも思ってんだろうが、残念だったな。喰らえ、【ブラックホール】!」
【ブラックホール】
「コスト」5「種族」サポート
「効果」①トリガー(自分ライフの減少)。②自分の【スター】と名前のあるモンスター1体を破壊する。その後、相手のPW3000以下のモンスター全てを破壊する。
「【スターブラック】を破壊する。よって、お前の【スターレッド】と【スターイエロー】は破壊される!」
星の戦士が砕け散ったかと思えば、暗黒の穴が出現する。その巨大な穴に、栄治のモンスター達は吸い込まれてしまった。
「流石に、【ギャラクシードラゴン】は破壊できなかった。けど、どちらかが生きていて攻撃が通ればこのターンで終わったのにな。次のターンで俺っちの勝ちだ!」
「いいや、これで終わりだ。トリガー発動、【ツインアタック】!」
【ツインアタック】
「コスト」2「種族」サポート
「効果」①トリガー(相手のライフ減少)。②自分のモンスター1体をスタンドさせる。
「ちっ。そんなカードを伏せていたのかよ!」
「ああ、そうだよ。【ギャラクシードラゴン】をスタンドさせる。最後のライフを攻撃だ!」
「……きひひ、そうかよ。ま、楽しかったぜ」
十字 ライフ1→0
■
ゲーム後、二人は店内のベンチでくつろいでいた。『敗者の代償』と評して、十字が自動販売機でジュースを奢ってくれた。
「んー、本当は本気のデッキで再戦したいんだが、今はまだその時じゃねえ。今日はこのまま帰るとしよう」
「負け惜しみか?」
「好きなように受け取れよ」
手の平をぶらぶらと振って、食えない態度の十字。栄治には、その様子がどこか上機嫌そうに見えた。
「そういえば、どうして俺と戦うとしようとしたんだ?」
「ゲームの前に言っただろう? 道化師と姫君と銀河が選んだ男がどんな奴か興味を持っただけだ」
「その道化師と姫君ってのは誰なんだよ」
銀河というのは【ギャラクシードラゴン】を持っているということだろう。何故彼が栄治の所有しているカードを知っているかはこの際気にしないことにする。
「お前もよく知っているだろう? ロ……じゃねえや、板村広樹と板村蒔菜のことだよ」
「え? お前、あの二人と友達なのか? もしかして、従兄弟とか?」
ならば栄治が【ギャラクシードラゴン】を所有していることを知っていても不自然ではない。おそらく、二人のどちらかから聞いているのだろう。「従兄弟」という聞き方をしたのは、理由がある。まず、栄治が知らない以上、蒔菜の同級生ではない。しかし、自分と同い年のように見える彼が広樹の同級生とは思えない。そして、言われてみれば、この少年は似ているのだ。淡い恋心を抱く少女と、敬意を抱く少年に。
何故か、十字は難しい顔をする。眉間に皺を寄せて、真剣に考えて言葉をひねり出そうとしていた。
「友達でないのは確かだが、同類と言うか、親戚と言うべきか。でも、相手はちゃんと俺っちの存在を認知していると言うか。ついでに言えば、俺っちがこうしているのはあいつらは知らないというか……まあ、そんな感じ?」
「どういう感じなんだよ」
栄治が嘆息すると、隻眼の少年は満足そうに笑った。そして、ベンチから立ち上がって、カードショップを後にする。
「きひひ、それじゃあな、空津栄治。お前の物語が始まるのを、楽しみにしているぜ。精々、面白い話を書かせてくれ」
「最後の最後までわけの分からないことを……」
こうして、英雄の卵と詩人のファーストコンタクトは終了した。
十字の姿が見えなくなると、栄治は自身のデッキを見直す。今回は【ギャラクシードラゴン】が最後のドローで来たから勝てたが、【スター】シリーズでは【ブラックホール】で敗北していた。そもそも、【スター】シリーズは数の展開に特化している分、単体の火力が低いのだ。しかし、栄治のデッキ構造上、【スター】シリーズの数を減らすことはしなくない。
「やっぱり、火力が欲しいよなあ」
■
「蒔菜、完成したぞ」
「やったじゃん、お兄ちゃん。これで『ゲート』と『ハイパー』がレジェロワのゲームに組み込めるんだよね? ついに《超神》が使えるようになるね」
「部分的にだが、我らが父、時空神の権能が使えるようになる。それに、栄治の【スター】シリーズは『ゲート』を活かしてこそ真価を発揮する
「喜ぶ顔が目に浮かぶようだね」
「できれば、この瞬間に詩人も立ち会って欲しかったがな。早速連絡しよう。あいつ、家にいるかな?」
ちょうどこの時、栄治はカードショップから家に帰ってきていた。通話によって栄治と詩人の邂逅を知ることになる板村兄妹。一晩かけて町中を探すが全く見つからないのだが、それはまた別の話。