チェリー仲間に会う
喫茶店での友人達である人達の話を聞き、その怒りから思いついたお話です。
R12くらいです。
特に下ネタなどはありません。
四文字だけ引用し、連呼します。
何もなく、真っ白な空間にある三つの寝具。
ベッド二つに布団一つ。その寝具の上に御座をかくのは三人の人間。
それぞれが自分の置かれている現状に理解できていなかった。
一人は、朝早くから始まる定例会議の為に何時もより早く床に入り、目を覚ますと白い部屋にいた事を悩んでいる少年。
一人は、自分の仕事の職を息子に譲り、これからの隠居生活を思い床に入り、目を覚ますと白い部屋にいた事を悩んでいる初老の男性。
一人は、自分の毎日の日課を終えて、夜勤があるからと仮眠を取るため床に入り、目を覚ますと白い部屋にいた事を悩んでいる青年。
三人は、今自分の身に何が起きているのかを話し合っていた。
最初はお互いに警戒し、様子を伺っていたが特に何か感じるところもなかった事もあり、会話を始める。
「やはりこの事態は僕も理解ができません。」
「儂もだ。何故目を覚ましたら自分の部屋におらんのか。実に奇天烈である。」
「お…俺も二人と同じ考えかな。」
三人はそれぞれ自分が、今わかっている事を話したが一行にわからずじまい。
「そういえば、あなた方の事を教えていただけませんか?もしかしたら今の現状打破に繋がる情報があるかも知れません。」
「そうであるな。何も進まぬ現状よりは良いかも知れん。」
「そ…そうっすね。」
子供の提案に二人が乗り、三人は自分の話を始める。
「では、僕から。
僕の名前はアマレウス・ラウル・メラス。
今年で11歳になります。
まわりからは【どうてい】と呼ばれています。
今は緊急事態でもあるので僕の事はラウルと呼んで下さい。生い立ちなどは此処ではやめておきますね。」
「…え?」
ラウルと言う少年の話に青年が疑問の声をあげる。
「ん?お主、いや、ラウルも【どうてい】と呼ばれておるのか?儂もだ。」
「…え?」
初老の男性の返答に、再度青年が疑問の声をあげる。
「次は儂の番であるな。
儂の名前はハヴァス・ガルヴァン・ヴ・ルードヴィッヒと言う。一国の王を務めておった。王の位は息子に譲ったのでな。儂もガルヴァンと呼んでくれてよいぞ。
民や親しい者達からは、ラウルと同じく【どうてい】と言う名誉ある呼び名で呼ばれておる。」
「め…名誉?」
ガルヴァンの返答に、再々度青年が疑問の声をあげる。そんな青年の落ち着きなさにラウルが質問する。
「……あなたは先ほどから可笑しいですね。もしかして何かを知っているのですか?」
「いやっ!俺は何も!」
突然声をかけられ驚く青年。
「失礼ながら僕はガルヴァンさんの事を知りません。自慢ではありませんが、僕は世界中の国や王の名を覚えているつもりです。
しかし、ガルヴァンさんの名もハヴァスの国名も聞いた事がありません。」
「ん?そうであるのか?これでも儂が治めていたハヴァス国は世界に名だたる大国家であるのだがな。」
ラウルの疑問にガルヴァンが答える。ガルヴァンが言うには、ハヴァスと言う国は世界でも有名な国であった様子だ。
「今のガルヴァンさんの話が正しいのであるならば、僕とガルヴァンさんは違う世界からこの白い部屋に連れてこられたのでしょう。」
ラウルがガルヴァンとの話から、別世界からこの白い部屋に連れてこられたと言う一つの推論を立てた。
「うむ。儂も薄々気づいていたのだ。二人は儂を見ても頭を下げたりせずに普通にしていたのでな。これは何か有ると勘付いていた所だ。」
ガルヴァンも、ハヴァス国の王と言う存在であるのに、二人の何も知らぬと言う顔を見てラウルと同じ考えをしていた様だ。
「それで、あなたは何を知っているのですか?名前などから全て教えてください。」
「そうであるな。先ほどからの儂らの反応を見る度に驚く素振り、何を知っておる?」
ラウルとガルヴァンが、青年に質問をする。
「お…俺か!
お…俺の名前は井上優一。
友達からは…その…【どうてい】野郎と酒の席などでよく言われます。
優一と呼んでもらえると嬉しいです。
今は専門学校の為にバイトを続けてお金を貯めています。
二人のその…【どうてい】と呼ばれているのに驚いてしまって…」
優一と名乗る青年は、自分の名を二人に教える。
「あなたも【どうてい】と呼ばれているのですか?
なるほど。自分の他に【どうてい】と呼ばれている人に出会えば驚くのもありませんね。」
「お主も【どうてい】であったか!」
「ど…ど……【どうてい】ちゃうわ!!」
ラウルとガルヴァンの反応に対して、優一は二人に反論をする。
「…優一さんは【どうてい】ではないのですか?先ほど自分から名乗っていましたが?」
「いや……すいません。
…【どうてい】です。何時もの癖でついつい言っちゃいました。」
ラウルの疑問に対し、狼狽しながらも優一は自分は【どうてい】だと答える。
その優一の答えを聞いたラウルは何か思ったところがある様で、顎に手をあて思考を始める。
その様子にガルヴァンも何かを考え始め、優一は二人をただ見ているだけであった。
「…二人の事を少し知り、一つわかった事があります。」
「ん、儂もである。ラウル、お主の考えを言ってみてはくれぬか?」
ラウルが、今起きている自分達の身に起きた事に対して、ある一つの答えを導き出した。
ラウルが答える。
「二人の少ない話、服装を見て、ある一つの答えが浮かびました。
僕を含め三人ともお互いの存在を知らなかった。優一さんに対しては知らない言葉すら出てきましたし…バイトでしたっけ?その事については詳しくあとで教えて下さい。
それで、今の話から導き出した三人の共通点はただ一つ。」
ラウルが人差し指をあげて言う。
その、たった一つの共通点。
「僕たち三人は【どうてい】だからこの白い部屋に呼ばれたと言う事です。」
「うむ。そうであるな。」
「…だよなぁ…」
三人が導き出した答え。
それは三人が【どうてい】 であることであった。その答えに、ただ一人優一だけは深いため息を吐き、頭を悩ませていた。
世界で一人だけに与えられる天才童子の称号。
世界の人々を導いて治めた王の称号。
人生で一度もそういう経験がない男性の称号。
その名は【童帝】
その名は【導帝】
そして、【童貞】
【どうてい】の名を持つ三人が理由もなく集められた白い部屋。
この白い部屋での出会いが、三人の新たにして、奇妙奇天烈な人生の幕開けであった。
広辞苑から【】を引用しました。
ただの言葉なのに心に来る言葉です。
対をなす存在は日本では神聖視されている現状。そして馬鹿にされる【】。
そんな【】を進撃させ、地位向上を目的としています。
他の作品もあるので、週一更新です。
誤字脱字のご指摘、ご感想お待ちしております。