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家族

ユルダの家は少し離れているため、レイズの家に泊まっていくことになった。

幸い、明日は休日だった。

玄関を開け、廊下を通ってダイニングルームに向かうと、「あ、レイ兄お帰り!」とリルがキッチンから顔を出した。

「ただいまー。今日はユルダ泊まってくってさ」

「リルちゃん久しぶり〜」

「あ!ユルダさんこんばんは!えーと...3人だと晩ご飯足りないから他に何か作るね」

「後で俺も手伝うよ」

リルが笑顔で首を振った。

「レイ兄、なんか今日すごい疲れてるみたいだから休んでて」

レイズだけでなく、ユルダも疲れきった顔をしていた。

「そっか。ごめんな。明日は手伝うから」

「気持ちだけで充分助かりますよお兄様〜♪」

楽しげなリルの姿にレイズが笑みを浮かべ、ユルダが2人の様子を微笑ましく感じていた。

レイズとユルダがダイニングの椅子に座り、背もたれに身を沈めた。

「いや〜、相変わらずリルちゃんは可愛いね〜。今度一緒に遊びに行「許可すると思うか?」

「これから宜しくお願いしますお義兄さ「やめい」

リルが即興コントの始まったダイニングを笑いながらちらちらと振り返り、テキパキと料理を作っていく。

「あー、今日はマジで疲れたなぁ」

普段は疲れたとは殆ど言わないユルダが、心底疲労しているようだった。

「お、珍しいじゃんか。いつもだったら延延としゃべり続けてんのに」

「だってさ、あんな状況になったんだよ?で、実は試験でしたーとか言われてさ。まぁ確かに死んでなかったんだから良かったんだけどよぉ...」

リルに聞こえない程度に抑えた声で言った。

「そうだな。結局、ログナさんにボロ負けしたし」

「どんくらい強かった?」

「手も足も出なかったよ。両腕両脚の骨へし折るつもりでいたけど、動きが速すぎて攻撃できなかった」

「レイズが防戦すらままならないのかぁ...。強ぇな〜」

テーブルに顎をのせてだらけた状態でユルダが顔だけ真剣になった。

「今までの依頼64回全て成功させたけどさ、俺たちはまだまだ弱いんだよ。もっと強くならないとな」

「そうだな。強くなって、DIESに入って、...。てかさ、お前...。DIES入るのか?」

レイズは静かに首を振った。

「ユルダさ、グランドキャニオンって知ってるか?」

「あ?いや、知らねぇけど...」

ユルダは突然の話題に戸惑った。

「【オルテミア】の造られた場所にあったアメリカって国の名所だよ。信じられないくらい大きな岩の柱が無数に立ってるらしいんだ」

第1連合都市【オルテミア】。

世界最強と言われたアメリカを中心に造られた都市であり、今でも12ある都市の頂点に君臨している。

「なんで突然そんな話するんだよ?」

訳がわからないユルダが眉間にしわを寄せた。

「見てみたいんだよ。外の世界を」

ユルダは反論しなかった。

それは誰もが持つ夢だったから。

ユルダ自身も思いを馳せ、夢にまで見た世界だったから。

「リルにも見せてあげたいんだよ。物心ついた時から都市の中にいたリルに外の世界を見せてあげたい」

「それはレイズ自身にとってはDIESに入るに値する理由になるのか?」

レイズは頷いた。

「一秒でも早く世界を取り戻したいんだ。俺が入隊したからって何かが変わるわけじゃないけど、人任せでただ待ってるなんて嫌なんだよ。でも...それは俺の独り善がりでしかない。リルが嫌なら、俺は諦めようと思ってる」

テーブルに顎をのせたまま、ユルダは微笑んだ。

「だったら悩んでないですぐに訊きゃあいいのによ。そう思わない?リルちゃん」

ユルダがレイズの顔の右上を見上げるように視線を移動した。

レイズが弾かれるように振り返ると、料理していたはずのリルがすぐ後ろにいた。

表情はいつになく堅い。

「...なんとなく、そんな気がしてた」

「...え?」

意外な一言に思考が停止する。

「お母さんが死んじゃってから、レイ兄が傷だらけで帰ってくることが何回もあって、危ない仕事してるんだってわかってた」

「ちょ、ちょっと待てよ、リル...」

レイズが止めようとしても、リルは従わない。

「私も働いて、少しでもレイ兄の負担を減らさなきゃって思ってて...でも、まだ中学生だから働けなくて...。このままじゃ、レイ兄は私のためにもっと危ない仕事するって思ってた」

「リル、一旦俺の話を聞「レイ兄は!レイ兄は...私のことばっか優先で、嫌な顔一つしないで私のためにって行動してくれてるけど...それはお父さんを死なせちゃったっていう風に思ってるからじゃないの?私に償おうとしてるってことじゃないの?」

その言葉に、過去の出来事がフラッシュバックした。

同時に激しい頭痛を感じる。


まだスルファスが完成する前、レイズは父親を死なせた。

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