ノッキンウィル23
『モード・ティンクルスター』。
あくまでつぶやくのは気分の問題。ちょっと集中力を上げるための自己暗示や切り替えのスイッチに過ぎない。
けれど自分は少し凝ってて、これに決まりを作る。
そうして半分自動化する。
そうするともっと集中してより効果が出る、……気がする。
このモードの場合、思いついたのは小学生の頃で『キラキラ星』。必殺技が欲しくてつけてみた。
決まりは、あの曲のリズムに合わせてゆったりと動くこと。ティンクルティンクルリンゴスター♪そして、相手の動きに合わせて動く。
トントン、トントン…♪。
「フン・・・ッ!」「よっ…と!」
常に全力で走り回るのと違いリズムがあり、緩急がある。休みと動作、静と動。テニス等でスプリットステップと呼ばれてるものだ。今まで走り回ってた分小刻みながらも休みを入れられる。次の動作でより強く踏み出す、結果、相手には近くでぼくを見る分、走り回るよりも早く見えたりもするらしい。
迫ってきたシュウの腕をぼくは紙一重でかわす。
鬼ごっこは引き続き継続だが、もう完全に鬼になる気はない。
ひたすら相手の至近距離で回避行動を取り続ける。アドバンテージ見せつけて一気にシュウの体力とメンタルをゼロにするつもりだ。百戦錬磨の逃げ足なめんなよん。
これ以上走り回るとまたケガしそうだしね。
「フッ!!」「ほいっと♪」
「くっそ!なめやがって!!」
ちなみにこの動き、頭も軽くメトロノームみたいに振ったりして相手にはなめてるようにも見えるみたい。でも、冷静さ欠いたら余計当たらないよ?
さっきの転倒で少しは目的にブレが出てきたのか腕が横凪ぎにただ振られるのを、避ける部分だけ動かして他は身体を残して避ける。がおー。熊が襲いかかるような格好、だけど実際は逃げてるん♪
トントン、トントン…♪。
超余裕。動きももうだいぶ鈍いし、これならイケるかも?
すんででかわし、背中が見えたのでこけない程度にちょっと押す(鬼にこちらから触れるのはノーカンノーカン♪)。途端によろけて振り向き様に腕を振ってくるが全然距離が足りない。胸を軽く反らして避ける。
と、シュウのやつ、もうまたブレた目的を修整、爪を立てるようにして…今度はひっかくつもりか。
胴回りが当てれないと解るとふりだしに戻り視覚に迫って対応しにくい顔・頭を狙ってきた。
もう、ちょっとでも傷つけられれば何でもいいようだ。
…………よくないよ!?
でも、これも最初とおんなじで…
ガクッ
「あ…」
ちょっと膝からストンといきそうになった。ぶねぇ…。
緩急つけた分、足に負担が一気にかかったようだ。思ったよりも体力の消耗がここできてしまった。時間切れだ。
あー……。どしよ?
シュウはこちらの動きをしっかり見ていた。チャンスと見ただろう。つい今までのものより少し早く動いて迫ってきた。いよいよ体力を振り絞ってきた感じだ。
やば…。こういう時は…。
「あ、…このやろ…!」
咄嗟に後ろを向いて全力ダッシュ。
前言撤回。シュウ、体力ありすぎ。こっちがもたなかった。
もうこのままバックれよう。
ティンクルスターをやったかいもあったかシュウとの間は始めた頃の中で一番距離があいていた。フェイントを入れられるとロスが大きくなるのを避けてるのもあるのかな?(絶対自分がこけるリスクを考えてはないだろうなぁ…)
これなら身を隠して…いける。
頭の中でとりあえず走り回ってできたマップを早速思い起こしながら階段をかけ降りる。どの辺に人気がなくて(人いるとなんだかんだで騒いで気づかれちゃうしね)隠れるのにもってこいか探す。ってよりもうあんまり体力ないし近場の空き教室!
思った瞬間目の前が教室、さっき階段下って曲がったし、シュウはまだ踊り場の折り返しの向こうだったから見えてない、OK!
細心の注意で音がなるべくしないよう戸を開けて入って即閉める、OK!
たぶん、これで、大丈夫、な、はず…。……………ふぃ~…。
けれど…。
「誰ッ?!」
あ…。
全く大丈夫じゃない光景が広がっていた。




