ノッキンウィル22
本来考えてたものとしては、ターン制で互いにスピードや身体の敏捷性を競いつつ、タッチされたら肩パンで次第に疲労とあいまった根性試し…って感じで軽くケンカしながら友情が育めればいいかな~なんて思ってたんだけど…。
…………………。
初めてからかれこれ20分位経っただろうか。
もう制服は汗でべたべた。体操服に着替えればよかったと思うくらい、体育でもそうそうやらないハードワークになってきてた。
シュウ、二つ目の彼に関する項目は『執念深い』と記しとこう。
もうね…はぁ…、ずっと走りっぱなし。
僕と体力そんな変わんない。むしろ鬼のアドバンテージから追いかけなきゃ休めるのに一向に休まないから延々走り続けてる。たまにこっちが休みたいからかわしてターンかけたりするけどそれであっちも休めてるようだから全く意味がない。
こいつなんなの?!
殺気も衰えないし。
「…ねぇ……」
「……………」
「…………………やめない?」
「…………………」
……………。続行ね。わかったわかった。
けれど…。
「あのさ…別に自分の為でもないんだけど…」
鬼ごっこを始めて現在、ここに至るまで未だに鬼の交代は一度もない。一回も肩パンなし。
けれど……この状況はなんだろう…。
僕は確かに汗まみれだ。だが、シュウの方は…
「ゼィ…ゼィ…ゼィ……ゲフッ…ゼィ…」
汗まみれどころか泥まみれだった…。
なんでかはよく知ってる。ずっと見てたし。
シュウに関する項目で三つ目…二つ目のよりもこっちをあるいは先に記した方が良かったかもしれない…。
こいつ、『運が悪い』……。
なんて不幸な奴なんだろう…。こんなのがいるのか…。
さっきからずっと走る先で僕は避けても何かに引っ掛かったりするし、ドアとか曲がり角も自分の体格がいまいち掴めてないのか肩とかぶつけたりして、酷いと転ぶ。
校舎外に出ればボールが飛んできてクリティカルヒット…。こっちが「大丈夫か?」と近づいてもまた無言で攻撃を繰り出し、そのまま勢い余って柱を殴り付けた…(超痛そうだった)。最初こそギャグかと思ったりもしたけどこっちも疲れてきたし、あんま笑えない。
そもそも、ケンカしてないのに一方的に相手がどんどん勝手にくらって弱っていく…。この状況、一体何?
仮にも鬼ごっこだったはずだよね?
なんでこっち一回も殴ったりもしてないノータッチなのに僕、いじめてる感じになってんだろ…。逃げるとどんどんシュウが傷ついてくこの現状、罪悪感までもう出てきてる。
手とか膝とか血がにじんだり赤く腫れたりしてるし。止血しないとこんな動きしてたらどんどん血が流れたり悪化しないだろうか。
いい加減わかったけどシュウ、鬼ごっこもケンカも素人以下だ。
それでも一心に僕に1発みまいたい為だけに全神経を注いでくる。その集中力はすごいけどさ!
諦めろよ!フィジカルあるのもわかったからさ!
………なんで相手気遣ってんだ僕…!。
「ねぇ…やっぱ…ほんとそろそろやめない?とりあえず…ほら、見学しない?保健室とか」
そうだそうそう、学校をくまなく探索が主目的だったはずだ。そろそろじっくり見たいよ。
「…………やだ!!」
強情な…。
「でもさ、もう今回はちょっとこう…引き分け、ってことにしてさ、だってその…ほら、こっち鬼やってないわけだし…」
「だが断る!!」
ダメだわ、どうオブラートに包んだってこっちが優位で譲歩してる感じにしかならない。実際そうだし…。
「この(ゼェ…)、藍影愁が最も好きなことのひとつは、(ゼィ…)自分で強いと思ってる奴に、(ゼィ…)NOとつきつけてや(ズベシャァァァァアアアアア!!!)」
「おめぇは一体何がしたいんだ!!?」
とうとう盛大にスッ転びおった…。こいつ、真性のアホだ。救いようがねぇ…。
流石に今のはかなりダメージが来たのかいい加減ガタがきたか、動きが最初より目に見えて落ちてきた。
よし、これなら…。
そろそろお開きにしよう。ってか飽きた。
鬼やってみたかったけどまた今度にしよう。
思えば即行動。ぼくはシュウを見据えながらも1つ深呼吸。リラックス。
彼が向かってくる。
けど、ぼくはほぼ次にどう動くかがもう見えてきている。
頭の中で1つつぶやく余裕もあったので……。
つぶやく。
「『モード・ティンクルスター』」
あ、言っちゃった。




