ノッキンウィル16
「ひとつ言っとくと、この学校は進学校としても有名なのに、その帰宅部の人間の割合が一桁のパーセンテージってのはちょっと異常だ」
「俺もひとつ言っとくと、いきなりそんなちょっとマニアックなデータを引き合いにするシュウも異常だ」
「ぼくもひとつ言っとくと、トイレ行きたい」
「「どうぞどうぞ」」
我慢の限界です。
「帰って来なくてイイヨ~」
あ、言ったな~?
「マッハで出してくるぜっ!」
「やめろ!音速でそんなもん出してみろっ!また変なスレ立つから!」
なんか前に2ちゃんねるの掲示板で光速でアレ出したらどうなるかとかのスレが立ったことあるんだって。
はぁー、ちょっとトイレ休憩。
四月も今週で終わる。最初の頃のワクワクもなりを潜め、僕らは今や帰宅部兼ESP部となっている。とりあえず今日はESP部に顔を出し、みんなで統一してやる課題を一通りこなしてみていた。
しかし、今日はハズレなのか、もともとこういう感じなのか…。やっているのは暗算と暗記。
ちなみに暗算は100マス計算、月並みだね~。でもシュウがやってみて1分22秒。早いかな~とか思ってたら部員の人は1分切るとか言われてシュウ戦慄。ぼく驚愕。かっちゃんポカーン。
あのさ、シュウもそうだけどさ、なんで100問なのに100秒以内に終わんの?
暗記は英単語30コを15分で覚えて書き出し。片方読みと片方英字の書き出しで二回がセットで行われたりしてた。暗算にしても暗記中にしても受験の時と同じくらい水をうっちゃりみたいに静かでなんかちょっちビビった。
でもそれ以上に、
…………なんでぼく、勉強してんだろ??
おかしくない?
何の部に入ったんだっけ?
課題の合間のインターバルにトイレから行って戻り、シュウが話を再開する。
「もともと進学校の体がだから強いんだよね。特進クラスのノウハウを普通科にも…って形で、遊びでこのESP部ができた」
「なんの話だ?」
「そこのふてくされそうな奴に我慢しろって言ってんの。最初に部長も言ってたろ?学校自体の目標・目的は高学歴の生徒の輩出にある。ESP部も結局方針は生徒の勉強能力の促進・育成。この学校に入った時点で何か刺激を求めるのが間違ってる」
「えー」
「所詮フタを開けば勉強バカの集まりってことか~。ここに入るの大変だったのになぁ~」
「他の部活入ればいいんだよ。仮入部期間は終わっても随時募集してんだし」
「受験の燃え尽き症候群~。で、あとから入ったら…ほら…浮くじゃん」
「え~、まだこじらせてんの?仮入部期間から1週間も経ってないし変わんないでしょ~。兼部から転部する人もいる~。大事なことなので2度言いました~」
「でもさ、あとから入ってってさ~。それレギュラーとか無理じゃないの?」
「いや……そこが少しひっかかるが…」
シュウの気だるげな視線が細まった。
「ま、文化部入れば差も何もないでしょ。ここ(ESP部)にうまいこと言いくるめられてるのが悪い。僕は適度に暇潰しできれば何でもいいんだ」
シュウはのびのびとリラックス。なんかムカつく。
「シュウ、漫研とかは?」
「かったるい。文化部なんていつでもやりたい時に家でも一人でできる」
「「………………………」」
そんなもん…なのかなぁ…。
なんか…それだけって感じはなんとな~くしないんだけどなぁ…。