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70話:武神―終わり
黒い霧は、霧散していく。俺は、手の中にある《琥珀白狐》に声をかけた。
「サンキュー、琥珀」
すると、咲耶が、厭きれた様子でこちらに来る。
「アンタ、ねえ。何剣に向かって話しかけてんのよ。馬鹿みたいなことやってないで、ここの処理を手伝いなさい」
「五月蝿いぞ。小娘が、儂の安眠を妨害しおって」
琥珀が声を発し、咲耶が驚いている。その時、通路から匡子先輩が出てきた。どうやら無事勝ったらしい。これで、一応、終わったようだ。俺が解決した様々な事件の全てが。取り合えず、終わったのだ。これで、俺が、《PP》に来る切欠となり、《PP》でしたかった当初の目的は果たした。だが、俺には、まだ、やりたいことがある。
「信也ぁ~!」
「信也君!」
「信也!」
「佳美弥くん」
「信也さん!」
「信也」
「東雲」
皆に呼ばれる。ここにいる皆。いや、それだけじゃない。加奈穂、周、生徒会長、ヘッドホンの少女、丙。皆といる、この居場所を守る、そのために、俺はまだ、《PP》で戦って行きたい。全てを守る、そのために。俺は、力を持ち続ける。




