66話:武神―奇襲
俺達は、階段を半ばまで降りていた。しかし、そこで、琥珀が反応を示す。
「くっ?!これ以上は、姿を保っていられん。小童、本来の儂を頼む」
そういって、急に、琥珀が、刀に形を変える。いや、戻る、か。
「こ、琥珀?」
「大丈夫です。今は、一時的に刀に戻っただけみたいです」
晴香先輩を落ち着かせる。そして、《琥珀白狐》を持つ。異様にしっくりくる。まあ、こいつも、俺が本来の持ち主とか言っていたし。そう言いつつ、《緋王朱雀》を晴香先輩に預け、《琥珀白狐》を持つ。
「お、重い」
重そうにしているが、きちんと、俺についてきている。そして、階段を降りきった。すると、扉の向こうに気配。気を引き締め、扉を開ける。
私達は、階段を降りていた。五人と言う多い人数での行動だ。慎重にならないといけない。緊張しながら進む。すると、階段が終わる。分かれ道だ。前には扉。右手に通路。不意に、扉の向こうから気配が現れる。私達に緊張が走った。そして、扉が開く。
『誰だ!』
二つの声が重なり合った。そこには、見知った顔。匡子先輩、咲耶、藍、姉さん、お嬢様。
「信也、アンタ、どうやって」
匡子先輩の問いは、どうやってここに入ったのかと言うこと。
「俺は、まだ、登録されたデータが消えてなかったから」
「なるほど。護衛のときのね」
匡子先輩は、納得したと言うような表情で頷く。
「しかし、お嬢様まで一緒に来るとは……」
「信也君。もう、お嬢様って呼ばないでって」
そうだった。先輩と呼ばないと怒られるのだ。
「それよりもアンタのその刀、は……。……佐野までいるの?」
「晴香先輩はオマケだ」
そういってから、笑いかけたところで、殺気に気がつく。急に、緊張が走る。気づいたのは、俺と匡子先輩。何かが来る。
「《散椛》!」
俺は、即座に、空気を飛ばして、来た何かを叩き落す。それは、銃弾。おそらく敵が撃って来たのだろう。
「さすが《琥珀白狐》。手に馴染む」
俺は、《琥珀白狐》を鞘に戻す。
「今のって、銃弾……」
藍は驚いている。何に対して驚いているのか。殺気を感じなかったこと、いきなり弾が飛んできたこと、俺が刀で叩き落したこと。いくつか考えられる。しかし、それを考える時間はない。また、来る。しかし、方向が分からない。通路のほうではない。何処から来るんだ。
「小童、右前じゃ」
琥珀の声で、敵に気づく。来たのは、刀。俺は、《琥珀白狐》で逸らす。そして、敵の顔を見て、驚愕。この男は、俺に、ベレッタを与えた男。仁藤。
「《死の結晶》の《神道》だ」
そう名乗りながら、攻撃をしてくる。だが、ある程度の攻撃で、それがとまる。いや、止めたのだ。それは、匡子先輩。
「久しぶりね、仁藤」
「お前は、篠宮匡子……?!」
篠宮?どういうことだ。
「仁藤、あなたに気づかれないように苗字を変え、《指揮官》として生きてきた甲斐があったわ。アンタをぶっ殺す。それが私のけじめよ」
「いいだろう」
二人が、戦いを始める。
「アンタらは、先に進みなさい!」
匡子先輩の言葉を受け、前に進む。




