55話:黒猫―黒猫の行動
いったいなんだったのだろうか。深く考えないことにしよう。そんなことをぼんやり考えていると、賢斗が近寄ってきた。
「お、お、お前!さ、さ、佐野先輩まで知り合いだったのか!」
「え、まあ」
賢斗の驚きっぷりとあまりの剣幕に少し引きながらも、答える。
「これでコンプリートね」
咲耶も話しに入ってきた。まあ、その通り、コンプリート。藍とは、クラスメイト。生徒会長も、生徒会の一員なので知り合い。お嬢様も護衛をしていたことがあるから知り合い。そして、猫で知り合った晴香先輩。ちなみに、佐野先輩と呼ばない理由は、年上とは思えないから。
「コンプリートって、ああ、そういうことね」
何気ない雰囲気で、普通に会話に入ってきたのは周だ。まあ、お嬢様と知り合いなのは、こないだクラスメイトにばれている。だから、生徒会に入っていることを知っていれば、まあ、何となくの事情は皆、理解できるのだろう。
「え、なにが?」
賢斗は理解していないようだ。そんな様子に見かねて、咲耶が説明をする。
「そ、そういうことか…くっそ!なんてうらやましい奴」
驚愕の表情の後に恨みがましい視線を飛ばしてくる。しかし、知り合いというだけで、別段親しくはないのだが。何て事を呟くと、咲耶があきれたような顔で、目を半目にして、やれやれと肩を竦めて反論を告げる。
「あのねぇ。藍とそれなりに親しいのは周知の事実。生徒会長は、まあ、雑用係として、こき使われている様子を傍から見れば主人と奴隷みたいな風にも見える。それで、朱野宮は、お嬢様と慕う。佐野は、今の様子から、何かあったのは確定。それとメアド持ってたら十分親しい」
いろいろ言いたいことがあるので、細々と考えていくが、まず、主人と奴隷と言う表現は止めて欲しい。せめて召し使い。あと、人前で、「お嬢様と慕う」と言う不用意な発言は止めて欲しい。それから、年上を呼び捨てにするのはどうかと思う。などと考えているうちにチャイムが鳴った。
授業中、俺の携帯が振動した。このような時間にメールが来るのは珍しい。誰かと思ったら周だ。メールの内容は、『放課後、用事がある。部屋で待っていて』と言う短い文章だった。俺は『了解』と返し、寝た。
放課後になり、俺は、自室へ戻る。そして、部屋で周を待つ。一時間ほどして、ドアがノックされた。
「どうぞ」
そう一言告げる。そして、入ってきたのは、周だった。まあ、それは、分かる。だが、問題は、周の格好だ。何故。




