50話:戦い―終わり
ワタシは眼前にいる標的をロックオンする。狙いは、正確。ワタシの狙撃に狂いはない。風もない。絶好の狙撃日和というに相応しい。
引き金を引く。弾が向かう。相手は気づかない。そして、銃弾が相手を貫き、鮮血が吹き上がる様子を確認した。
「始末完了」
ワタシは《PP》に連絡をして、男の死体の回収を頼み、その場を去る。
俺は、姉さんを部屋に寝かせて咲耶の元へ向かう。咲耶も無事に戦いを乗り切ったらしい。藍と一緒に校門に向かったようだ。校門にはすでに《PP》が迎えに来ている。どうやら、この戦いで死人は一人。おそらく《影》と呼ばれる男だ。まあ、正々堂々勝負してきた敵二人と違って、狙撃で生徒を狙っていたから、一番危険人物だったといえる。この決着は、予想が出来ていた。《PP》が血の後も残さず掃除をしただろう。
校門前に、俺と咲耶、丙、藍が揃っていた。
「匡子先輩、以上が事の発端と結末です。詳しい戦いについては、個人に聞いてください」
迎えに来た匡子先輩に事のあらましを説明した。
「戦うって事は予想できてたけど、《死の結晶》相手だったとね。よく生き残れたわね」
やはり、匡子先輩は何かを知っていたようだ。
「はい、まあ、俺は、実の姉である紀乃、いえ、《真海》との戦いでした。《真海》については、戦意がないので、当人の部屋に寝かせてきました」
俺は、自身の戦いを説明(戦いの内容は省いたが)した。
「ワタシのほうは、楽に終わりました。撃ち抜いて終わりです」
丙の簡潔な説明も終わり、咲耶の番になる。
「私の方は、結構やばかったけど、どうにかなったわ。相手のジンドウとか言うのが化け物じみていたけど」
ジンドウ?その名前は、俺にベレッタを渡した男の名前じゃないのか。匡子先輩も同様に悟ったらしく、咲耶に聞く。
「そいつ、はどんなやつだった?」
「え、別に。傭兵じみた体と、化け物じみた力と、後は、短髪の普通のおっさんって感じだったけど」
間違いない。仁藤だ。彼が、敵に。何故。匡子先輩の目も鋭くなっている。
「そう、あいつが。咲耶、アンタ、よくあいつと殺り合って生きていたわね」
その言葉は、仁藤が、強いことを示している。
「まあ、報告は後にして、全員休憩しなさい。しばらくは《PP》に顔を出さなくてもいいから」
「了解です」
匡子先輩は、端のほうで聞いていた藍を一瞥しながら、去って行った。
車の中、一人の女性が溜息をついている。
「アイツが、《死の結晶》にいるって噂は、本当だったんだ…」
女性は、そう呟くと、窓の外を見る。
「同期は、皆死んで、初期の人員は私とアンタだけだったんだけど。まったく、何やってんだか」
そういって、女性は、一枚の写真を取り出す。そこには、まだ、十歳程度の頃と思われる女性と、それよりも四、五歳上と思われる男女達。そう、このメンバーこそ、《PP》戦略武装軍隊の初代入隊メンバー。最強のメンバーだ。しかし、もう、生きているのは二人だけ。
「仁藤、私は、アンタを止める」




