46話:飾り
ダンボールの山を崩しながら、姉さんに聞く。
「で、《死の結晶》の目的は何なんだ?」
「いきなり口調変えるのは止めようよぉ。まあいいけど。目的は、襲撃。それだけよ」
襲撃だけ。その言葉が引っかかる。
「襲撃以外は、しないわよ。ここに襲撃するという事実が大事なんだから。多分、あたしは、貴方と戦うことになると思うわ。信也。ううん。」
そして、俺の昔の名を呟く。そうか、俺は、姉さんと。
「《群青》ちゃん…藍ちゃんは参加しないと思うわ。《影》ともう一人、計三人での襲撃になるはず。でも、」
少数精鋭ってか。三人でも十分に強いから、注意しろって言う意味だろう。だとして、俺が引く理由にもならない。完全武装して、迎え撃つまでだ。
「さて、無駄話は終わりにして、片付けるか」
片付けが一段落して、俺は、自室に戻った。一通りの片付けをすると、姉さんは、「もう遅いから帰りなさい」といった。なら、最初から自分でやってくれよ。
「ったく、あの姉は、相変わらず」
そう、愚痴をぼやいているにも拘らず、俺の頬は緩んでいて、気がついたらにやけていた。
休日の朝、俺は、《PP》に戻ってきていた。久々に、剣を振っていたのだ。姉さんは、昔から、無駄に運動神経が高い。木にも簡単に登り、家族で行った山登りでも、一人だけ、息一つ切らせず、あの桁外れの人外じみた力は、今も健在だろう。だとしたら、銃だけでは足りない。剣も格闘も、全てを上限まで高めなくては。そう、匡子先輩に提案したところ、いい剣術がある。そう言われ、そのまま匡子先輩に指導を頼んだ。しかし、この先輩、何で《指揮官》クラスなんだろうか。とりあえず、言われたとおりに素振りをする。
「ああ、やっぱり、アンタは筋がいいわね。すぐにでもマスターできるわよ」
「そう、です、か」
素振りに合わせながら、言葉を紡ぎ出す。
「さて、こっからは、型に入るわよ。いい、絶対に、不要に使わないこと。それだけが、この流派の注意点だから」
不要に使わないこと?どういう意味だ。
「この流派は、殺人剣よ。無駄に殺さない、それが絶対なの。じゃあ、教えるわ、《藍那流》剣術を」
そして、俺は手にする。人を殺すための剣術を。
鋭い切っ先が、的を切り裂く。これが、《剣術》というものか。しかし、俺にとって、剣術は、あくまで、銃にくっつく飾りに過ぎない。あくまでベレッタで戦うと決めているのだから。そう、俺が、《PP》には行ったあの日から。だから、想いを乗せて、全てを断ち切り、撃ちぬく。全てを狙い撃つ。それが、俺が、勝つ方法だ。




