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36話:S事件―奏でられる前奏曲
学園のどこか、ある男が電話をしていた。
「《影》だ。《銀狼》、ターゲットは、もうじき学園を出る。確実に仕留めろ。次はないからな」
『承知いたしておりますよ、隊長殿』
多少ふざけた口調で《銀狼》と呼ばれた男は、答える。いかにも軽薄そうな人間の声だ。いや、人をそれだけで判断するのはよくないが、この男は、実際軽薄だ。
「では、任せたぞ。特に《真海》のアレと朱野宮の《力》には気をつけろよ」
それだけ言うと男は通話を終了させた。男は小さな溜息をつくと、その場を去っていく。
学園から少し離れた場所にある、人気のない道路。そこには、髪を中途半端に銀色に染めた男とその部下と思われる男が数人居た。
「さて、それじゃあ、始めっか。お前ら位置につけ」
男達は、道路を囲むように分かれた。事前に逆車線は封鎖済み。RPG-7を構えて、車が来るのを待っている。
「さあ、得物が網にかかったようだぜ。お前らぁ、得物をぶち殺せぇ!」
そう言うと、男のRPG-7から弾が発射された。




