35話:S事件―近づく真実
俺は、護衛部屋で一息ついていた。今日、学園に行ったが、お嬢様の人気は予想以上だ。これは、護衛一人だとかなりきつい。二人でもきついだろう。しかし、護衛を降りるわけにはいかない。俺は、お嬢様を守る。それが今与えられた使命。
俺は、《PP》から送られてきた、前の護衛の携帯電話の解析結果に目を通すことにした。
「こ、これは」
流石の俺でも驚愕の結果。電話の相手の《影》は、《私立響乃学園》の基地局を経由している。つまり、《影》は、《私立響乃学園》にいる。他の解析結果を見て、驚愕は続く。
「こいつ、襲撃犯と繋がっていたのか」
前の護衛が、襲撃犯と繋がっていたことは、消されたメールから確認できたらしい。そのメール相手登録名は《銀狼》。これ以上の調査は、《PP》だけでは難しいとのことで、これ以上の解析は期待できない。とりあえず、《銀狼》という人物が襲撃犯であることは確定だ。《影》という人物が《私立響乃学園》にいるならば、学園帰りに狙われる可能性は格段に増える。気を引き締めなくてはならない。
俺は、警戒のために、ベレッタを整備して、さらに、ナイフを忍ばせ、防弾チョッキを中に着る。これで、学園帰りの奇襲に対しても、何とか対応できるだろう。奇襲戦に対する対応も一応《PP》で教わっている。なんとしてでも、俺は、お嬢様を守らなくてはならない。
学園に登校した。相変わらず人気なお嬢様を、見守りながら、俺は、周りを、集まってくる人々を警戒した。そして、不意に肩を後ろから叩かれる。まったく気がつかなかった。これだけ、周囲を警戒していたのに気がつかないなんて。そう思い、振り向くと、そこにいたのは、咲耶だった。
「なんだ、脅かすなよ」
「はあ?何言ってんの。私は脅かしてなんかないわよ。普通に声をかけただけだし」
それはそうだろう。俺は、こいつの気配は、まったく察知しないように意識的にしているだけであって、こいつは、いたって普通に俺に声をかけただけ。
「アンタ、学園にいるなら…ってアンタそれ?!」
どうやら、俺が防弾チョッキを装備していることに気がついたようだ。勘の鋭い咲耶なら、俺が護衛任務について、誰の護衛かぐらいは、すぐに分かるだろう。
「何?美人の色香に負けて護衛することにしたの?」
それは、俺が今の任務を放置して、護衛任務に就いたからだろうか。
「ちげぇよ。ホラ、帰りやがれ」
咲耶は、しぶしぶ、帰っていく。




