20話:加奈穂とプール
みやくんはベンチで休憩しているし、わたしは皆さんと遊ぶことにしたのですが。
「あの、姫野さん、でしたっけ。初めて会うと思うのですけど」
「そう言えば。あたしは姫野咲耶よ」
姫野咲耶さん。みやくんと話していたから、それなりに親しいのだろう。
「わたしは境出加奈穂です」
「境出?ああ、なるほど。ふーん、そういうことか」
わたしを見ながら、一言二言呟いてから、元気よくわたしに言った。
「遊ぼう」
何故だか、不思議なくらいに楽しそうに遊んでいる姫野さん。まるでこういった施設に始めてきたかのような、そんな喜び方だ。
「うん」
だから、わたしは、最大限の頷きを彼女に返して遊ぶのだった。
しばらくして、高野さんがいないことに気がついた。どうやら、電話をしているようだった。雰囲気がいつもと違って、何故か怖い。でも、すぐにこちらに戻ってきた。その表情は、先ほどまでの怖さを捨て、曇りない笑顔。眩しいくらいの笑顔。何故か、如月さんと似ているなと思ってしまった。
ふと、みやくんの方に目をやったのだが、そのときみやくんは、隣の席にいた、綺麗な人を抱いていた。どこにも行かせようのない憤りが生まれるが、それを全て捨て去るように、みんなとの遊びに戻った。みやくんはいつも、どこでも、誰とでも仲良くなれる。そんな人なのだ。そういえば、彼の姉もそんな人だった。




