17話:不穏
「それで、あんた何したのよ」
犯人を《PP》に受け渡すために、匡子先輩を待っているときにそう聞かれた。今は、二限目の真っ只中。仕方ないので、暇つぶしに咲耶に、先ほど披露した技を説明することにした。
「ようは《銃弾弾き》の応用だ。お前が撃つ寸前に一発撃って、お前の弾の角度を変化させ、さらに、その弾で、俺の撃った二発目を弾いたんだ。《跳弾》と《銃弾弾き》の組み合わせだよ」
「へぇ、あんたは、そんなことまでできるようになったんだ」
背後で急にした声は匡子先輩のものだった。この人の気配は、いつになっても気がつけないな。何故これで《指揮官》クラスなのだろうか。
「んで、こいつが窃盗未遂及び銃刀法違反者?」
犯人の罪状は、資料の窃盗(盗ませなかったため未遂)と明らかに規定の長さを超えるナイフが二本あったため銃刀法違反。
「そういえば、窃盗って、何を盗もうとしていたの?」
「学園の見取り図と三学年の生徒詳細が書かれている資料。三年寮の配置と部屋割りですね」
ターゲットは三年生にいるということか。誰が狙いなのかは分からないが、今後も何かある可能性はあるな。気を引き締めなければ。
不意に、俺は、背後に殺気を感じ振り向く。微か遠くに、銀縁の眼鏡をかけた教員がいた。偶然だろうか。俺達には目もくれず、別の方向へ歩いていったように見える。殺気は気のせいだったのか。
その頃、端目で信也たちを捉えた教員は、電話をしていた。
「もしもし、《神道》様ですか。《影》です。例の資料の盗み出し、失敗した様子です。はい、引き続き、潜入を続けます。では」




