16話:窃盗事件
生徒会へ顔を出した次の日のことだ。朝の校舎内で、俺は、不審な影を見た気がして、一限目をすっぽかして、校内を教員に見つからぬよう探索していた。
そして、一限目も半ばに差し掛かった頃に、部室塔で怪しい男を発見した。その男の目的は大体分かる。学園には幾多の部活動がある。学園では、放課後の活動を円滑に行うために、部室に荷物を置くことを許可されている。そして、部活動を行っている多くの生徒が私物を置いている。金持ちの多いこの学園の生徒の私物を狙うのは、効率の良い稼ぎ方だろう。
男は、ある部室。あれは、《響乃歴史研究会》の部室か。《響乃歴史研究会》は、《私立響乃学園》の歴史を調べる部活動である。賢斗も確か会員だったはずだ。ちなみに何故賢斗が入会(入部)したかというと、会員(部員)がほぼ女だからだそうだ。
男の後をつけ、ドアに耳を当て、中の様子を探る。
「これか、いや、こっちか。あれはどこにある」
ボソボソ呟きながら、紙類を漁る音がする。どうやら、金目当てではなく、研究会が調べた何かが目的だったらしい。
探りを入れているそのときに、後ろで、足音と気配を消した何かを感じた。振り向くと、そこにいたのは、咲耶だった。どうやら、授業に俺が出ていないから探しに来たようだ。
「何をやってるの」
「何か紙を漁っているらしい」
何をしているのかという疑問は、俺に向けられたのではなく、中の男が何をしているのかということだ。
「紙?資料の中に何かあるってこと?だとしたら、背後に何かいるかもね」
背後にいるというのは、無論背後霊的な意味ではなく、彼を後ろから操っている組織があるのではないかということだ。
「どこ?」
「分からないな。何を探しているのかが分かれば、因果関係が出てくるかもしれないが」
「そうね」
とりあえず、俺と咲耶は、奇襲をかけて捕らえることにした。
「んじゃ、私が突っ込むから、援護よろしく」
「オーケー」
そこは、女が先に行くのはダメだとか言うべきなのだろうが、こいつは俺よりも格闘が得意だ。相手の武器が分からない以上、奇襲で、相手を倒す必要がある。適当に撃ち込んだら、相手に警戒させてしまうだけだ。それなら、相手が何かをする前に格闘で仕留める。
「そこまでよ!」
咲耶が飛び込み、相手を押さえる。腹にひざで蹴りを入れてから首に手刀を振り下ろし意識を刈り取る。はずだった。しかし、咲耶は、膝を押さえる。
「ふ、ふは、誰だか知らねぇが残念だったな。ここには、資料がごっそり入っている」
どうやら、資料に阻まれて、攻撃が決まらなかった用だ。今の位置関係はこうなる。窓側に犯人。ドア近くに咲耶。そして、半開きのドアから除く形で、俺がいる。犯人が窓側にいるのは、脱出のためだろう。俺から見えるのは、半身の犯人のみ。咲耶は、角度的に見えない。しかし、どうしたらいいのか。
俺は咄嗟に考え付いたアイデアを、どうにかして咲耶に伝えようと思った。咲耶はドア近くにいる。それは分かっている。だから、軽くドアを二回ノックした。ドアを二回ノック、それはドア越しに聞けの合図。
「咲耶、奴とはまったく別の方向に、一発撃て」
それだけ、小声で伝え。俺は、準備に入る。
ドアが小さく二回ノックされたのを私は聞き逃さなかった。ドア越しに聞こえる声に集中する。
「咲耶、奴とはまったく別の方向に、一発撃て」
まったく別?どういうことだろうか。まあ良いや。責任は全部アイツに押し付けて、ぶっ放そう。
「ア?何動いてんだァ!」
男がこちらを振り向く。男は笑っている。まったく別の方向に撃とうとしているからだろう。それにしても、まったく別の方向に打った時点で、銃を警戒させてしまう。奇襲において、発砲は一度のみで決めないと危険度が上がる。どうするつもりなのか。
男は、別の方向に銃が向いたのを認識したらしく、笑っている。俺は、それを無視し照準を合わせた。男にではない。半身しか見えない状態の男に照準を合わせても一発では決められない。しかし、今、この状況。咲耶のほうを向いている。これなら、相手に攻撃を与える方法がある。
咲耶の発砲音がなる前のほんの数刻。引鉄を引くカチという音を聴いた瞬間一発。発砲音がなった瞬間にもう一発。計二発の弾丸が俺のベレッタから放たれる。一発目が、咲耶の放った弾丸の軌道上で跳ね返し、さらにもう二発目がその跳ね返った弾に弾かれ、咲耶のいる向きとは逆の方向から犯人に向かう。そして、犯人の右肩を後ろから貫く。撃たれた犯人は、慌てて逃走しようとするも、資料が重くて動きの邪魔をする。そして、資料が散乱して、それと同時に、俺が、敵を引き付けるように叫ぶ。
「行くぜ、相棒。綺麗に花、飾ろうじゃねぇか!」
俺のほうに気を取られ、犯人は咲耶から目をそらした。その瞬間。
「鮮血は、あまり綺麗とは思えないけどねッ!」
隙を突いた咲耶のとび膝蹴りがモロに首に当たる。ゴキという音とともに犯人は、吹っ飛び転がる。そして、犯人が意識を失うと同時にチャイムが鳴り響いた。




