14話:平穏
翌朝、俺は、ある異変に気がついた。ドアの外が騒がしい。何か起きたのだろうか。騒然とするドアの向こうの様子を探ると、どうやら、賢斗が何かしているらしい。
「うおぉぉおお!」
やかましい声が、ドア越しにも聞こえる。この防音性の高いドア越しでも聞こえるなんて、ドンだけ大きな声を出しているんだろうか?いったいどうしたのだろうか。ドアを開け、確認すると、そこには。
「うおぉぉぉおおおおおお!」
半裸の賢斗がいた。むろん上半身だが。
「何やっているんだ?」
近くにいたクラスメイトに、事情を聞くと、笑いながら詳しく話してくれた。
「それがよぉ、罰ゲームなんだよ。くじで引いたやつを組み合わせて出来たものを実行するってやつなんだけど」
つまりは、「上半身裸で」、「廊下で」、「全力疾走で」、の三つのくじを引いたらしい。そして、それを組み合わせた「上半身裸で廊下を全力疾走」ということになったらしい。
しばらくの後、教師がやってきて、賢斗とその友人達は、連れて行かれた。当然のことなのだが……。
さて、その教師が現れた際、藍の姿を見かけた。その目の色は、黒かった。初めて会ったときもそうだったが、彼女の目の色が、違うように見えることがある。気のせいかと思っていたが、どうやら違うらしい。カラーコンタクトだろうか。いや、違う気がする。理由は分からないが、何か秘密があるらしい。
二時限目の半ば頃、ようやく解放されたらしい賢斗が、戻ってきた。奴は、戻った途端に、机に突っ伏して寝たようだ。
そして、放課後。生徒会に差し入れに行くという藍に連れられ、生徒会室に足を運んでいた。無論乗り気ではなかったが、藍の行動が気になったのだ。
「それで、漣君は、生徒会に入る気がないのに用もなく生徒会室に来たのかしら?」
生徒会長の棘棘しい言葉を突きつけられながらも、椅子に座っていた。
「今日は、あまねちゃんは?」
藍の疑問に、生徒会長が、答える。
「境出さんと如月さんで、見回りに行ってもらっているわ。もう戻ってくるんじゃないかしら。書記は、いつもの如く欠席」
加奈穂も、もう帰ってくるようだが、今は致し方ない。藍を監視するために生徒会室に居座ることにしよう。そんな風に考えていると、不意にドアが開いた。
「え、みやくん?」
遠目ながらも、加奈穂が呟いたのが分かった。




