飲み屋騒動
藍色の制服を着た者達数人が辺りに目を光らせていた。
なかでもリーダーと思われる男の目付きは更に鋭く、通りを横行する人々の群れを逐一刺し射ぬいている様であった。
腰の帯革ベルトには全員が同じ型の剣を携えており、彼らがこの国の警備隊員であることは一目瞭然である。
暮れ泥む祭りの風景。
寺院の境内には国中の祈祷師が陣取り、祝詞のような経典のような何かを必死に読み上げている。
祈祷師達の声が太鼓の抑揚の無いリズムと相まって、真正・浄土への導きの歌にも聞こえる。
その様子を取り囲むように配置された踊り手達のダンスもまた、生命力に溢れた逞しい物だった。
指の先までピンッと伸ばし、目は一点を見つめ、髪を振り乱し、服は激しくはだけ、一縷のズレや乱れも無い、神々しい程に美しい踊りであった。
夕暮れの寺院は神聖と神秘に息吹かれ、数多の見物客達は感慨深げにその様を見つめていた。
「・・・・・はぁ。全然いねぇ。犯人っぽい奴ぁ全然いねーよ。疲れただけだったな。はぁ。」
制服警備隊員達のリーダーであるイサミちゃんが独り言みたいに零した。
人垣の向こう側から太鼓の音色に乗せて祈祷師達の詠唱が聞こえてくる。
燃えるように赤い夕陽が沈み出していた。
「イサミちゃんどうします?この大観衆の中にも犯人らしき風体の輩は見つかりませんし・・・このまま本日は解散ですか?」
「ん、あぁ、そうねぇ。解散するか、な。疲れたしさぁ。大体まだ捜査始めて一日目だし、んな簡単に見つかる訳ねぇんだよ。明日から本格的にやればいい。あーもう解散解散!解散決定。」
「解散ですか。みんなー解散だってさー。」
「あー、そーなんすか?じゃー帰りますわ。お疲れっす。」
「私も失礼します。イサミちゃん、お疲れさまでした失礼します。」
「はいはいお疲れさん。また明日ね。」
「僕も帰りますよ。それじゃあ。」
「はいよー、お疲れさんお疲れさん。」
「私も帰宅しますよ。それではイサミちゃんまた明日捜査本部で。」
「はいはいお疲れさま。また明日ー。」
結局イサミちゃんを除く警備隊員達はみんなわらわらと帰途に至った。
一人取り残されたイサミちゃんは、しばらく祭りの様子を見ていたが、大きな欠伸を一つして、その場を後にした。
通りに面した酒場の奥まった端のテーブルで、甚兵衛を着た若い男がビールを飲んでいた。
カラスだ。
元来、人込みとか都会とかゴミゴミした場所が嫌いな彼。
そんな彼の性分が長時間の祭り見物を許さなかったのだろう。
カラスは疲弊した面持ちでビールを傾けている。
夕方から一人寂しく酒を呷る若者。
漂う空気は哀愁よりも悲愴感そのものである。
しかも店内はガラガラで物凄く雰囲気が重い。
BGMの一つも掛かっていない為、通りの雑踏の音が寂しさを極限にまで上昇させている。
人生を斜めに構える偏屈な人はこういう空気を好みそうではあるが、内装などから察するにそういう店ではない様であるから、ただこの飲み屋が流行っていないだけなんだろう。
なんとも寂しい限りである。
カラスが目を閉じ、この空気の重苦しさは何とかならないものか、と、考察していると、入り口のドアが開く音がした。
入ってきたのは二人組のヤクザであった。
店主が引きつった笑顔を振りまきながらヤクザ達に近づいていく。
店主がいらっしゃいませの、いらまでしか言わぬ内にヤクザ達に押し退けられた。
よく見ればヤクザ達はカラスのテーブルに一直線に向かっている。
カラスは、誰だろ知り合いかな?って顔でポカンとしていた。
「よぉ、兄ちゃんよー、てめー何飲んでんだよ。あー?こら」
シャーリーズ・セロン似の美形ヤクザが、あまりドスの効いていない甲高い声で何事かをほざいてきた。
カラスは、可愛い顔だな、と思いながら答えた。
「ビールだよ。」
シャーリーズ・セロン似のヤクザは通称ナイフのセロと呼ばれる、それはそれは可愛い顔立ちの男であった。
セロは何か女性的な雰囲気を醸し、声は甲高く、笑うと胸が締め付けられる位にキュートなので、親分衆達からは人気があったが、ナイフを持たせたら危険なナイフ使いであった。
「そーゆー事聞いてんじゃねーや。てめービール飲む金あんのかって事だよ!場所代払えや。てめーの仲間は逃げたから、場所代はてめーに肩代わりしてもらうぞ。」
「は?」
カラスは意味が分からなかった。
場所代?なにそれ?え、俺が払うってなんで?本格的に状況が掴めない。
「は?じゃねーや、このすっとこどっこい!てめー、水晶屋の仲間なんだろーが!一緒にいたとこ見てんだよ、なめんじゃねー!」
「水晶屋?何それ?」
カラスはすっかり、通りで出会った水晶屋の事を忘れていて、まるで知っているがとぼけている人の様な口振りになってしまった。
「何それ?じゃねーや、とぼけたフリすんな!水晶の出店を無断で出してたじゃねーかよ!つーかよー、てめー場所代払えよ!金魚すくいもフランクフルト屋もみんな払ってんだぞ!」
カラスはシャーリーズ・セロン似の可愛い顔を見上げて考えていた。
で、思い出したのか、素っ頓狂な声で、あ!と言った。
が、別に水晶屋が金を払わないのは自分に関係無いじゃん、と思い、反論する事にした。
「あのさー勘違いしてるよ君達は。俺は水晶屋の仲間じゃないよ?そら確かに水晶屋とは少しばかり喋ったけど、ただの世間話っていうか、他愛もない戯言を交わしたに過ぎないんだよ。そんな名前も知らない水晶屋の為に、俺が金を払わされるっておかしいよ。超おかしいよ。搾取だよ、明らかに。堅気に対する強奪だよ、俺はそういう事に屈しない。断固反対!遺憾の意を表明する。」
カラスの猛然とした態度に、セロは声を押し殺して笑った。
「てめー何も分かっちゃいねーな。くくく。断固反対?大いに結構。ならば俺達は力ずくで金を払ってもらうまでだ。なぁ?カーライル。」
二人組ヤクザの片割れ、カーライルと呼ばれた男がセロの呼び掛けに応じる形で手にグローブをはめた。
カーライルは口髭を生やしたノッポであった。
カーライルは物騒な性癖を持っている。
喧嘩中毒なのだ。
何よりも喧嘩が大好きなんである。
実際に喧嘩も強かった。
ただ問題があって、このカーライルは少し要領が悪かった。
というか非常に間が悪い男だった。
友人宅へ遊びに行けば食事中だし、散髪屋に行けば休みだし、得意の喧嘩も彼が乗り出す頃には問題は片付いており、大抵は丸く納まっているのだ。
そんな彼からすれば、今回みたいに割りとスムーズに喧嘩まで運べた事はうれしい事なのだ。
喧嘩中毒を日頃から公言しているカーライルにとって、間が悪くて喧嘩に参加できない事は、非常にフラストレーションが溜まる事である。
他組との抗争も最近はすっかり沈静化していて、やるせなくなっていたところへ嬉しい誤算が舞い込んだ。
カーライルは嬉しさの余り、歓喜の涙が溢れそうであった。
「覚悟しろよてめー。このカーライルは喧嘩の鬼だからなー。ふふふっふわっはっはっ。」
セロの高笑いを尻目に、カラスはゆっくりと立ち上がり、咳き込んだ様に屈んだ。
そして地の底でマグマが燻る様に、くっくっく、と笑い始めた。
徐々に笑い声の大きさや間隔が短くなり、最後にカラスは天を仰いで、だーっはっはっはっはっ!と笑った。
「何がそんなにおかしいんだよ!?気でも狂ったのか?こいつ。余裕かましてる場合じゃねーんだよ!バーカ。」
カラスの意味不明な笑いに、セロは文句を言いながらも不気味さを感じていた。
カーライルは別に笑った事に関して何とも思わなかったが、早く喧嘩したいなぁ、とは思っていた。
カラスが笑いを噛み締めながら口を開いた。
「残念だが・・・君達は俺に勝てん。」
「なぜだ!」
「なぜなら俺が超強い剣客だからだ。成敗してくれるわ!」
カラスは言いながら右腕を左腰に回した。
セロもカーライルも店主も何が出てくるのかドキドキして見つめた。
「ふふふ・・・ふふふふふふ・・・ふふふ・・・ってあれ??」
カラスは左腰の辺りを何度もまさぐり、そして急に顔を青ざめさせて狼狽した。
やべぇ。無いよ!刀が無いよ!宿の部屋に放り投げたまんまだった・・・どうしよ・・・ 冷や汗をだらだら流すカラス。ゴクッと唾を飲み込み、カラスに注目するヤクザ二人と店主。カラスは途端に心臓をバクバクさせて、目が泳ぎ始めていた。
「と、思ったんだけどもさ・・・」
カラスはテンパり気味にそわそわしながら、弱気な感じで喋りだした。
「・・・あのですね、あなた方を成敗しようと思ったんですが、えー、あの、俺はですね、考えたんですよ。め、メリットについてです。双方のメリットです。何かっつーと、ま、俺もあんまり金持ってない訳で、やっつけられたところで財布の中に場所代に見合う額はないんですよ。はい。ですけどね、まあ、あの、代わりに出来る事ってありますよねぇ?例えば労働を提供したりだとか、あなた方の商売のサポートをしたり、もしかしたら金よりも大事な何かを得られるんじゃないかな?って思うんですよね。ははは。そういった方面で考えていく、もしくは交渉をしていった方が、みんな丸く治まる気がするんですよね。俺も怪我は嫌いですから、金があればいくらでも払いますよ?でも無いんすよね、ははは。どうすかね?」
カラスはまたもやいつかみたいに口から出任せをペラペラと並べて、深呼吸をした。
セロはカラスの話を聞いて、自分なりに噛み砕いて理解してみた。
「うーん・・・てめーは場所代払う意志があるのか?さっきは全く逆の事を言ってた気がするんだが・・・うーん・・・。場所代を他に見合う事で埋め合わせたい、か。うーん、うーん。そーゆーのは親分に聞いてみなきゃ何ともなぁ。うーん、うーん・・・。じゃあよ、てめー一緒に事務所まで来てくんねーかい?そこで親分と直接交渉してくれよ。俺らじゃ勝手には決めらんねーからよ。」
カラスはとりあえず胸を撫で下ろした。
刀があればこんな奴らを斬るのは容易い。
しかし刀が無いんじゃ無理である。
そもそもカラスは剣客であり、その上で超強いのである。
だが刀が無ければ、ただの人である。
カラスは急に態度を改めたが、これは凄く格好悪いことだ。
しかし、しょうがない。だって刀が無いんだもの。
「事務所っすかぁ。なんか恐いっすねぇ事務所ってのも・・・。」
「いやいや、全然大丈夫だから心配すんなって!親分も根は優しい良い人だしよ。」
刀が無く、勝てる見込みが無いと分かれば卑屈な程媚びるカラス。
相手が金を払う気があると分かれば突然に人が良くなったセロ。
そしてカーライルは喧嘩話が立ち消えになった事に酷く落胆していた。
「そーゆー事だからカーライル。行こうか。」
視線を落としグローブを外すカーライル。
カラスは飲み代をテーブルに置いた。
三人がいそいそと酒場を出ようとした時、カラスの目に棒切れが飛び込んできた。
入り口に立て掛けられた棒切れ。
よく見れば下に紐を数十本束ねた様な物が転がっている。
カラスはそれが壊れたモップだと分かった。
カラスはニヤッと笑うと、咄嗟に壊れたモップを掴んで、前を行くカーライルの後頭部に思い切り振り下ろした。
バシィィ! 何が何だか分からず、とにかく痛む頭を押さえるカーライル。
カラスは容赦無く背中や腹を叩きまくり、丸くなり、屈んだカーライルを踏み台にして今度はセロに向かって飛び掛かった。
セロは突然の事に戸惑っていたが、カラスが飛んできたので、背を向けて丸くなった。
ガッシャャーーッン! 勢いのつき過ぎたカラスは店の窓を突き破り、激しく通りにダイブしていった。
驚いたのは往来の人々である。
突如店の窓を突き破って男が吹っ飛んできたのだから。
往来の人達は何事かとカラスの周りに集まって、硝子の破片の中、蹲るカラスを心配そうに見つめた。
一方セロは起き上がり、カーライルを見た。
呻き声を漏らし、動かないカーライル。
セロはシャーリーズ・セロン似のプリティフェイスを紅潮させて怒り心頭、ナイフを取り出し、店の外に飛び出た。
騒めく人の群れの中、制服着のままのイサミちゃんがひょこっと顔を出した。
帰り道の最中、硝子の割れる音がしたので、興味津々で野次馬に混ざったのだ。
硝子を突き破った青年がフラつきながら立ち上がった。
右手に棒を持っている。
視線を飲み屋の入り口に移せば、地元ヤクザのセロがナイフを抜いて出て来るのが見えた。
あ、喧嘩ね。
イサミちゃんは直ぐに理解した。
本来ならすぐ止めるべきだが、イサミちゃんは疲れていたので、しばらく様子を見る事にした。
それにしてもあの甚平着の青年は随分と色が青白いねぇ、と、そればかりが気になった。
「てめー!俺らを信用させといて不意打ちとは汚ぇじゃねぇか!カーライルをボコボコにしやがって!ブッ殺す。」
セロが顔面を紅潮させて怒りを露にする。
カラスはフラフラしながら、シャーリーズ・セロン似の怒った顔も可愛いな、と思った。
「きぇぇぇぇぇ!」
セロが甲高い奇声を張り上げて、ナイフを振り上げて襲ってきた。
野次馬達からは悲鳴の声が上がる。
だがカラスは冷静に棒切れを握り返し、軽くナイフを弾くと、右肩を突いた。
カラスは改めて距離を置き、右足を引いて、棒を下段に構える。
セロはシャーリーズ・セロン似の顔で苦々しく歯を食い縛り、再度攻撃を仕掛けた。
だがカラスはしならせる様に棒を振り上げ、セロの小手を払った。
たまらずナイフを手放すセロ。
カラスはそのまま手首を捏ねり返す様にして、セロの首筋を袈裟切りに叩き伏せ、更にセロの左側に回り込み、腰をしたたか打ち殴り、終にはセロを倒したのだった。
シャーリーズ・セロン似のセロの可愛い顔が苦悶の表情を浮かべて、時折、うっ、あっ、と声を漏らす。
シャーリーズ・セロンに似てなきゃ、なんてこと無いが、なまじ似ているから、苦しみに喘ぐ表情や荒々しい吐息が妙に生々しく、悶える程にセクスィだった。
カラスは棒を大袈裟に一振りして、それを左手に持ちかえると、民衆に背を向けてこう言った。
「フッ・・・安心しな。峰打ちだ・・・。」
馬鹿である。
不意打ちしておきながら、その上、棒で相手をしこたま殴っておいて、峰打ちも何も無いではないか。
それを言うに事欠いて、峰打ち等とほざく根性。
素晴らしい馬鹿だ。
だがしかし。
野次馬達は予想以上に沸き返り、カラスに大きな拍手を贈った。
地元のヤクザに絡まれた青年が、身に降る火の粉を格好良く払った様に映ったからだ。
やるじゃないか若いの!スッキリしたぜ!
カラスの痛快な姿は、大いに反響を呼び、彼に向けて大きな声援が飛び交うなど、場は一時騒然となっていた。
カラスの姿・行動を見ていたイサミちゃんは、全く別の事を考えていた。
極度に色が青白い。
黒髪、歳が若い、身長は175位、痩せ形、棒を使ってはいたものの明らかに剣術と思われる動き。
このキーワードがイサミちゃんの頭の中でグルグル回りながら、やがて一つの確信に変わった。イサミちゃんの結論はなるほどしかし、まだ不完全であった。
白い東洋風の着物。
二本の刀。
此等二つの重要過ぎる要素が、彼の場合と合致していない。
だがしかし、この二つの要素は身体的特徴と違い、容易にその形体を変化させる事が出来る。
もともと情報というものは錯綜しやすいものであり、また人は情報により翻弄される事が多々あるものだ。
犯人は必ず白い東洋風の着物を着用している訳では無く、常時刀を二本帯刀している筈も無い。
案外、思いも拠らない様な―
例えば、そう
甚平衛を着て、棒切れを振り回しているかもしれないのだ・・・。
イサミちゃんは懐から扇子を取り出すとパチッと開いて激しく扇いだ。
バタバタバタバタバタバタバタバタ・・・
落ち着きたかったのだ。
要するにイサミちゃんはカラスが犯人な気がしているのである。
とにかく話だけでも聞いてみようかと思った。
もしかしたら違うかもしんないし、只の早とちりによる誤認逮捕なんかして、後から訴えられたら大変だ。
犯人っぽいんだが確証も無いのが事実だし、もし話をしてみて、明らかに犯人だなぁって思った時は、名前と宿泊先を丁寧に聞いて、明日改めて踏み込んで逮捕すればいいのである。
今は何も逮捕すればいい時じゃないのだ。
物事にはタイミングってのがあるから。
云々考えて、不必要な程に何度も深呼吸を繰り返し、一度気合いを入れ直して、イサミちゃんが運命の一歩を踏み出したのだ。
ところが。
カラスは、沸き返る群衆の中じっとこちらを睨みながら近付きつつある男に気付いた。
何か他の者とは様子が違う。
何かこう・・・憑かれているというか、余裕が無いというか・・・。
カラスはしばらく男の一挙手一投足をチェックしてみた。
すると男が制服を着ている事が分かった。
ヤバいよヤバいよ!
カラスはそう思った。
制服を着ているって事は制服を着る様な、大変に統制された組織に属している事に間違いなく、暴力沙汰が起きた場合、徹底的にこれを鎮圧し、当事者を捕縛、責任や罪を追求し、脅迫をも折り込みながら無理矢理に謝罪させられる。
そういう世界的共通了解事項が身に染みて分かっているカラスは、捕まりたくない一心で、棒切れを放り投げるとダッシュで逃げ出した。
ドキドキしながら近付いていたイサミちゃんは、カラスがこっちに気付いて血相を変えて逃げたので、しまった!と思い、人の波を掻き分けて、追い掛けた。
警備隊員だと理解した上で逃げるのだから、やはり奴が犯人なのか?
どちらにしても、奴は武器らしき物を所持していない。
今の内に身柄を確保しなければ後々大変な事になる。
イサミちゃんは脱兎の如く逃げるカラスをこれまた脱兎の如くに追跡していく。
その頃水晶屋(26)は、水晶屋に見切りをつけて、皿洗いのバイトをはじめていたのだった。