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桜子伝  作者: いかすみ
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第7話 模擬戦

模擬戦


桜子の目から見れば牽制程度の玉だ。

かわす必要もない。

真正面から水の矢で撃ちぬく。

訂正、打ち落とすつもりだった。

桜子の方が威力ありすぎて撃ち抜いてしまう。

水の矢は炎を蹴散らして志郎に迫った。


驚いたのは志郎の方だ。

そんなに力を込めていないとはいえ炎の玉だ。

水の矢と魔力の絶対量が違う・・はず。

普通、矢というのは魔力5ぐらいのものが出せる小さな魔力の玉だ。

魔法の玉というのは4センチ以上の破壊力を伴うものだ。

魔力が20程度ないと作れない。

いま、最低の力より大き目の力で炎の玉を撃ち込んだ。

それをかわしてから戦いが始まると思っていた。

それが、いきなり炎を打ち抜いて水の矢が迫ってくる。

警告を言うどころではなかった。

油断していたとはいえかわすのがやっとだ。

体の脇を抜けていくのを確認して桜子を見る。

そこに続けて炎の矢が迫る。

『炎の矢?』

その事実に判断が一歩遅れた。

魔力を込める時間もない。

それなのに、桜子から別系統の攻撃がきた。

確かに、志郎でも連射は出来る。

火の魔力を高めておいて小出しに使う場合だ。

だから、同じ系統の魔法になる。

なのに、別系統の魔法が撃ち込まれてきた。

というよりこんなでたらめな攻撃は初めてだった。


普通のものは一人につき1系統なのだ。

志郎の家系は珍しく2系統使えるエリートだった。

志郎自身、火と雷を使える。

でもこんなにすばやく切り替えられるものではない。

火の力を消して雷の魔力を貯めるのにわずかな時間がかかる。

目の前の女の子はこちらの攻撃にとっさに水を放った。

確かに志郎が火の一族だと知っていれば初発は火の可能性が高い。

だから、水の魔力を貯めておくことも出来る。


だが、彼女は間違いなく開始まで魔力を帯びてない。

志郎の攻撃に対応して水を放った。

そして、それを実証するかのように直後に火の攻撃がきた。

早撃ちは志郎の完全に負けだ。

その事実に驚いた。

そして、後で冷静に考えると7センチの球が2センチの矢に負けている。

水球は炎を消して迫ってきた。


頭の中はパニックになっていた。

それでも体は日頃の訓練がものをいう。

飛んできた炎の矢を本能的に避けた。

だが、いつもの練習と違う。

速い矢に避けるのがぎりぎりだ。

とても、反撃など出来ない。

桜子の攻撃をつぎつぎとかわしていく。

ようやく、手近の岩陰に飛び込んだ。

そして、飛び込めた事で安心して攻撃から目を離した。

目を離したといってもほんの僅かな時間だ。

反撃の為に魔力を貯める一瞬だった。


火の矢が追尾弾で迫っていた。

『追尾弾?』

相手の魔力を感知して追いかけるものだ。

志郎でも掛けられる魔法。

魔力500以上のものなら当然知っていた。

30センチ以上の球を撃つときなど外れると大きな被害が出る。

だから、目標に対して追尾性を持たせて確実に当てる。

その魔法を組み込む技術だ。


大きな力を持つものは、その力に責任を持たなくてはいけない。

30センチ以上の魔法弾を撃つときは確実に目標に当てる。

そのように教えられた。

それが追尾弾や誘導弾の技術だ。

もっとも、小さな玉でもかけられた。

しかし、誘導に魔力が注がれる。

そのため、攻撃力が大きく減殺された。

だから、当たっても意味が無くなってしまう。

それが、2センチほどの玉に仕掛けられていた。

その事実に驚く。


とっさに岩陰に隠れたので安心した。

そして、息を抜く間もなく火の玉が当たる。

完敗だった。

だが直後にもっと驚くことが起きた。

玉が当たったところが酷い火傷になった。

いままで、道場の者達から火の玉に当てられることはある。

しかし、火傷したことはなかった。


練習に際して魔法防御を施しているからだ。

道場での練習では20センチの玉で練習をしている。

それがまともに当たっても熱いと感じる程度だ。

それが火傷になっていた。

その威力に驚くばかりだ。

追尾魔法が掛けられていてなおこの威力だった。


志郎は最初に一発はなっただけだ。

後はかわしてばかりだった。

それに対して桜子のほうから全部で8発の矢が飛んできた。

速射性にも負けて、威力にも負けていた。

そして、最後の矢は岩陰に入るのを見越しての追尾弾だ。

戦いのやり方も負けていた。


「あんた、あんなのもかわせなかったの?」

「無理言うなよ、あんなのかわせるわけないだろう」

火傷の跡が痛むのでそこを抑えながら立ち上がった。

それを見た彼女。

「・・・ごめん」

いきなり謝ってきた。

最初に彼女は確認している。

『魔法防御は大丈夫か』と確認していた。

それでも火傷したのはこちらが全面的に悪い。

それなのに謝ってくれた。

桜子が『生意気だけの娘ではない』と感じた。



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