第6話 お見合い
将来を決めるイベント見合い。
そして、双方合意なら婚約成立だ。
しかし、子供には大人の思惑は通じない。
お見合い
伯父さんの親子を迎える。
桜子以外のみんなはしゃいでいた。
田舎では見られない絵本やオモチャを持ってきたからだ。
もっとも、出来具合は父親が作ったものの方がいい。
はるかに出来がいいからだ。
ただ色合いが綺麗だ。
そんなオモチャに下の子供達は喜んでいた。
父親はおじさんとあまり話はせずに奥に入ってしまった。
伯父さんは苦笑いをしている。
どうもこの辺は大人の事情らしい。
母親が伯父さんの相手をしていた。
連れていた子供は姉妹たちに本を読んでいた。
桜子も仲間に入ろうとする。
すると、母親に止められた。
そして、ここに居るのだ。
「桜子、おじさんの家ですむことになるのよ」
やはり確定のようだ。
父親は賛成も反対もしなかった。
この辺になにか事情のようなものがありそう。
話は母親とばかりで進められていく。
でも、『結婚は必ずしなくてもいい』と言われた。
最終意見は桜子の望に従う。
『将来、その気になったらしてくれればいい』ということらしい。
そこのところは『父親の絶対条件』と念を押された。
やはり、お父さんだ。
最後の一線だけは守ってくれたようでうれしい。
もっとも、母親の方は反対だったけど・・・
桜子は、他人の中でうまくやれるか心配だった。
次の日。
お父様もお母様も珍しく正装していた。
そしてその2人の間に座る桜子。
相手の伯父さんも森の時と違い正装していた。
その横にあの男の子だ。
親同士挨拶を交わしている。
正式のやりとりらしく決まった文句の言い合いだ。
傍から見れば馬鹿らしくなる。
しかし、村長もいる場なので神妙なものだ。
部屋の隅から妹達が覗き見している。
隠れているが気配は見え見えだ。
ようやく一連のやり取りが終わった。
婚約が成立したようだ。
「後は、若いもの同士で」という。
そこで、ようやく解放された。
男の子を連れて庭に出る。
やはり妹達が待っていた。
「姉さん、どなたなの」
わかっているのにからかっている。
冷やかし半分だ。
「志郎さんよ、あなた達の義兄になるのよ」
「ふーん、弱そう」
その一言は志郎の逆鱗に触れたよう。
「弱いとはなんだ、これでも魔力は800あるんだぞ」
「800ってなんのこと」
3番目の妹が声をかけた。
「魔力を数値化したもので参考にしかならないものよ」
桜子が説明する。
母親に聞いてもそんな程度の説明しかしてくれなかった。
だからそのまま教えたのだ。
「なんにも知らないのだな、500と言うのが一人前の魔術師の証なんだ」
志郎が少し自慢げに説明する。
首をかしげながら妹が聞く。
「お姉ちゃんはいくつなの」
「お母さんの説明では10とかいってた」
言われたように言うしかなかった。
「たったの10なのか?それで僕の嫁さんになるというのか?」
なにか腹のたつ言われ方に『かちん』とくる。
「10でもあなたに負ける気はしないわよ」
「魔法に関してはこの前見たけど小さな水の玉を撃てただけみたいだけど」
あの玉を見られたようだ。
その後、倒れていた木を母が燃やした。
桜子は、その間、まだ燃えている火を消火して回る。
相手の球に比較して小さな玉しか放てない。
だからその点は恥ずかしかった。
「炎の玉も撃てるから!」
「え、二種類の魔法?」
妹が口を添える。
志郎はその前の炎を空に撃ったのは見てなかったらしい。
「雷の玉だって撃てるのよ、お姉ちゃんは」
弟が口を出す。
「戦ってみればいい。弱いかどうかなんてやってみればわかる」
お互い売り言葉に買い言葉の応酬だ。
子供だから含みもなにもない。
ただ、実力勝負にこだわる。
姉妹の模擬戦を経験しているからだ。
魔法の打ち合いは日常でやっていた。
強いかどうかは戦えばわかること。
なりゆきから婚約者と戦うはめになってしまった。
場所は子供達が遊ぶために作られた広場だ。
あちこちに岩が置かれ身を隠すように作られている。
家に被害が行かないように囲いが設けられていた。
みんなは外の見学用の台で見ている。
志郎は道場でも見ない立派な設備に興味津々だ。
あちこちを見ていた。
「いい、怪我をしないため基本的にはかわすのよ。相手の魔法を
撃ち落してもいいけどね」
簡単なルールを説明する。
「ところで魔法の抵抗はある?」
念の為に聞いておく。
万が一当たったとき怪我したら問題になってしまう。
「大丈夫、10センチの魔法の玉までは抵抗があるから当たって
も平気だよ」
「そう、それなら安心ね」
「でも君達では玉は打てないだろう?僕の玉が当たって怪我して
も知らないよ」
双子の妹が代わりに答えた。
「お姉ちゃんに当てれるわけないでしょう。1メートルのところ
で撃っても当たらないんだから」
志郎はその妹を睨んだ。
言葉を信用しない。
基本的に術者の力によるが子供といえ1メートルは近い。
撃ってからかわせるものではない。
だから、撃つ姿勢やタイミングをみてかわした。
そう判断する。
現実に1メートル玉が動く間にかわしているとは知らなかった。
それも、通常の数倍の速度の攻撃だ。
人間の反射速度を超えていたけど知るわけがない。
説明が終わって試合開始だ。
妹達が見る前、庭で魔法の撃ちあいが始まる。
志郎の方から攻撃が最初だ。
開始の合図は志郎の魔法発動ということだった。
志郎としてはなにか馬鹿にされたような感じだ。
つい力を込める。
そして、7センチぐらいの炎の玉が放たれた。
志郎は撃ってからあせっていた。
いきなり取り決めた魔法より強い力を発してしまったからだ。
彼女に向かって「かわして」と言おう思った。