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桜子伝  作者: いかすみ
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第5話 刺客

すべてのものが始まるきっかけの事件

巻き込まれ形主人公、桜子の一歩です。


刺客


桜子は、一人で森に来ていた。

心の乱れを正すためだ。

両親からいきなり告げられた。

『婚約するから覚悟をしておくように』とだ。

そして、『先方の家に住み込みで行くことになる』と教えられた。

狼家は古い家柄だ。

それだけに自由に育った桜子は相手の家の家風に馴染むのに時間が掛かる。

そのための手配だった。

家で教えることも可能だ。

しかし、他の家との兼ね合いもあった。

狼家の家風が常識として広まってしまう危険からだ。

桜子には、突然の話だった。

それだけに驚いた。

ここに来るのも『あとわずかで来れなくなる』ということだった。


この前、おじさんとも言うべき母親の兄が尋ねてきた。

母親と少し話をしたあと帰っていった。

そして、今日手紙が来たのだ。

そこに、書かれていたのが婚約の打ち合わせだ。

『そのことで近日中に伺う』とのことだった。

当事者ということで教えられる。

でもまだ子供の身で将来を決められるのは面白くなかった。

まだのんびり両親の許で暮らしたい。

話では『行儀見習いを兼ねて相手の家で暮らす』という。

はっきり言えばおもしろくない。

そんなことを考えながら森を散歩していた。



森の奥というより街道から胸騒ぎがする。

いつもなら近づいてくる動物達が姿を見せない。

森全体が騒がしく感じるからだ。

人が大勢入っている。

騒ぎの中心が街道だ。

しかし、なにか壁のような空白を感じさせる。

そのため、状況がよくわからない。

森のことなら隅々まで把握できる。

それだけに妨害を受けていらだつ。

何があるのかとそちらへ向かった。

そして、遠目に自動車が見えた。


結構金をかけた屋根付き自動車。

それが襲われていた。

もう少し近くでようすを見ようと近づいていく。

やはり自動車が襲われていた。

そして、中の人と襲撃者が交戦している。

自動車の前に倒れた木があった。

足を止められ襲撃されたようだ。

自動車そのものは対魔法仕様らしい。


男が、自動車から出て襲撃者に向かって炎の球を打ち出している。

玉というのは4センチ以上の魔法の塊だ。

目の前の戦いは30センチほどだ。

対して襲撃者はいろいろな魔法玉を打ち込んでいる。

でも一番多いのは炎だ。

結界を張っているのか炎は広がる気配がない。

その点はやはり安全を考えているのか。

あるいは、気配を外に漏らさないためなのか。

おそらく後者だろう。


そこまで見たとき背後から気配が感じられた。

いつもならそんな気配はすぐにわかる。

それなのに、気付くのが遅れた。

森全体がざわついていたので気配を見過ごしたようだ。

桜子は、とっさにかわすように動いた。

妹達の襲撃に比べれば甘い。

でも相手は大人だ。

相手を甘く見て、油断はしてはいけない。

空に向けて火の魔法弾を撃った。

これで、両親が応援に来てくれる。

それまで身を守っていればいい。

母親に言われていたように気を研ぎ澄ます。


いつのまにかもう一人が背後に迫っている。

信号に気が付いた応援のようだ。

味方を呼ぶ信号で敵も呼んでしまった。

振り向くとナイフをかざした男がゆっくりと飛びかかってくる。

とっさにいつも持っているお手玉を全力で投げた。

こんなときでも母親の言葉を思い出す。

母親にはいつもいわれているからだ。

『物を全力で投げてはいけない』と教えられていた。

でも武器をかざしてくるものには遠慮しなくていい。

そうも言われている。

今回は遠慮しなくてもいいようだ。


八歳の子供にぶつけられたお手玉。

それは2人の男を吹き飛ばしていた。

お手玉なので、破壊力はボクシングのグローブ程度だ。

もし石だったら貫通していただろう。


桜子は迷わず自動車に向かう。

その頃にはもう見分けはついた。

この前、遊びにきたおじさんだ。

五人ほどに襲われていた。

魔法の気配による判断だ。

姿を見たわけではない。


魔法の炎が飛び交っている。

妹達と遊ぶ時の炎の矢とは桁違いの大きさだ。

30センチぐらいの玉が飛び交っているのは壮観だ。

でも速度が問題にならないぐらい遅い。

妹達の矢の方がはるかに早い。

炎の矢の方が小さいかわりに空気抵抗が少ない。

そのため、速く飛ぶ。

妹の魔法だからと油断すれば火傷してしまう。

それに比べればゆっくり迫る炎なんて怖くない。

それに、直線的に飛んでいるから誘導弾ではなさそう。


おじさんがこちらを見た。

なにか、おじさんが叫んでいる。

「に・げ・ろ」

間延びした声が聞こえる。

そんなおじさんに火の玉が迫る。

こちらに気をとられた分反応が遅れたようだ。

駆け寄っても間に合わない。

とっさに水の矢を3発放つ。

目標は30センチの大きな玉だ。

だから力不足を心配した。


いつも妹達の炎の矢を打ち落とす要領で放った。

もちろん外さないように自動追尾を掛けておく。

目標の大きさに力を間違えたのは後から知った。

最初の矢が当たったところで目標の炎は消失していた。

爆発のようなものが起こっておじさんは吹き飛ばされてしまった。

なにがおきたのかわからないまま一瞬、戦場が静かになる。

敵も味方も爆発の大きさに気をとられたようだ。

そして伯父さんは無防備に体をさらしている。


桜子の放った2発の矢は目標を喪失する。

そして、迷走してしまった。

結果、近くで続けて放とうとしていた賊に当たった。

自動追尾をかけていたからだ。

この結果は幸運以外何者でもない。

『ひょっとして、この賊たちは妹達より弱い』

桜子がそう感じた時だった。


桜子は、吹き飛ばされたおじさんを見る。

すると10歳ぐらいの男の子が車から飛び出した。

そして駆け寄るところだ。

桜子はそこまで確認した。


直後に桜子の放つ矢より早い炎の玉が桜子を追い抜いていく。

「桜子、伏せて」

母親の桜の声だ。

聞こえると同時に桜子は伏せた。

いつも言われていることだ。

『伏せて』といったら何も考えずに伏せる。

『右へ』と言われたらすぐに右へ跳ぶ。

条件反射だ。

妹や弟の攻撃は迷っていたら当たってしまう。

仲間の警告は、『即』で動かないといけない

桜子の頭上をゆっくりと炎の玉が通り過ぎていく。

桜子の死角から放たれた炎の玉だった。

「桜子、油断しすぎよ」

とても、八歳の娘に言う言葉ではない。

しかし、戦場では子供とて関係ない。

顔を上げると追い抜いていった炎の玉が目標に当たっていた。

ゆっくりと抱き上げてくれる母親。

「桜子、お手柄ね」

誉めてくれた。

「でも、三発は打ちすぎよ。一発で十分だったから」

あの水の矢のことを言われる。

修羅場とは思えないような会話が続く。

そして言われた。

「落ち着いて、通常に戻るわよ」

なにをいわれたのかよく判らない。

しかし、母親に抱かれた時点から落ち着いた。


おじさんはゆっくり近づく桜を見た。

「桜、助けに来てくれたのか」

「ええ、お兄様。緊急信号が上がったので来たの」

「緊急信号?」

「ええ、桜子が放ったのよ。身の危険を感じたらすぐにあげなさいと教えてい

 たから」

そして、桜子の方を見て微笑んだ。

「でも、お母様すごく早かったけど」

「ちょうどあなたを探していたところよ」

そう言って頭を撫ぜてくれた。

やさしい手つきだ。

誉めてくれるときのしぐさだった。

桜子は母親に抱きつくように甘えた。

桜子が親に甘えられる機会は少ない。

こういう機会に甘えないと。

そう想い思いっきり抱きつく。


「え、桜子?、この前の娘?」

伯父さんは意外な声で答えた。

前回あったときは朝から化粧を施されていた。

近所に遊びに行っていいようにわざと平凡に見せる。

そのように化粧するのだ。

父親の方針で里では必要以上目立たないように工夫をしていた。

服装から髪型までだ。

里の子に混じっても目立たない格好をさせられていた。

顔まで化粧してわざと平凡に見せるようにしていたのだ。

簡単に言えば少し醜いぐらいにまでしていた。

綺麗な子は誘拐される危険がある。

それほど誘拐が多いからだ。

だから、どこの家でもやっている田舎の防衛手段だ。

今の桜子は素肌のままだ。

だから、悟朗おじさんが初めて見る桜子の素顔だった。

その脇で九歳の男の子が桜子を凝視していた。


桜子が素顔だったのは、家に帰って化粧を落とした後だった。

そこで話を聞いたからだ。

『もう村には遊びに行かないから』と素顔で飛び出した。

桜子が出かけてから森の気配に気づいた母親が心配する。

そして、母親が探しに出てきたところで信号を見た。

森の気配と信号に最悪の事態を考えた桜だ。

母親は全力で桜子の気配を追った。

『桜子を誘拐されるのか』と心配したからだ。

結果は別の事件でほっとしたところだった。


二十人位なら桜の力で簡単にねじ伏せられる。

一番怖いのは子供を人質に取られることだ。

だから油断せず臨戦状態で向かう。

目標はゆっくり動いて見える。

だから、簡単に処理した。

でも賊の半分は桜子が倒した後だった。

これなら『援軍に来る必要はなかったかな』と考える桜だった。

道路を塞いでいた木は桜があっさり燃やしてしまう。

あちこちの消火は桜子が水の矢を撃ち込んでいった。


おじさんは犯人を後部席に放り込む。

そして、『村に寄ってから伺う』と言っていた。



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