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桜子伝  作者: いかすみ
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第36話 思わぬ敵

思わぬ敵


祐治は切り札という者。

それが『いずれも自分より年下の子供』ということにあきれる。

だが、夏子が気に入っているようなので、夏子に任せることにした。

「君は?名前は」

「白野智志と言います。姉がお世話になっています」

その態度は礼儀正しく完璧だった。


姉の前でぼろをだせば、後でなにをされるかわからない。

そこで、智志もおとなしい。

「私は虎丸祐治というよろしく」

そう言って残ったメンバーに紹介した。

そして、祐治が双子を引き受ける。

利也が夏子と智志を引き受ける形だ。

こうして要塞に向けて動き出した。



祐治は研究所正門前で立ち尽くしていた。

いままで、三人でいくら攻撃しても破れなかった門。

その門を一撃で破壊していた。

智志の攻撃力は魔法障壁を軽々と撃ち抜く。

「智志君、すごいな」

利也が誉めていた。

「いえ、夏子さんより力は劣りますよ。ただ玉が小さかったから、障壁を打ち

 抜けただけです」

さりげなく『夏子の方が力が強い』と誉めていた。

智志は、ここに来るまでにすでに夏子の扱い方を心得ている。

その言葉にうれしくなる夏子だ。

そんな様子を見る双子は複雑だった。

見せ場を智志に取られてしまったからだ。


侵入者を感知した研究所の方。

こちらでは警戒態勢を固めつつある。

いざとなれば砲撃を加えるだけだ。

それで安心もしていた。



春美と秋奈は祐治の後ろについて進入していく。

智志は夏子に庇われるようにしてついていくだけだ。

夏子は弟のような智志を気に入って、お姉さん気分。

智志も三人の姉を持つ身だ。

姉の扱いはなれたものだった。


祐治は前方に陣取る警備兵に足止めを喰らう。

ようやく出番の姉妹は遠慮なく魔法を打ち込む。

ただ打ち込み方が半端ではない。

それを見た祐治、ようやく切り札の意味を知る。

普通は早くても5秒に1発だ。

二人の速度は一秒で2発。

それも誘導弾で誘導しながらだ。

制圧は一瞬で終わった。

戦いらしい戦いにもならず前進していく。


一方、利也の方も同じだった。

敵のいそうなところではない。

敵のいるところを的確に指示される。

そこに夏子が魔法を打ち込んでいくだけ。

こちらも戦いにならず進んでいく。



防衛陣を簡単に突破してくる敵。

それにボスの男は指示を出した。

『砲撃で蹴りをつけよう』とする。

そして、警察署を粉砕した一撃を侵入者に向けて放った。

一度上空に上がった2メートルの火の玉。

誘導を受けてそれぞれの目標に迫る。


すぐに気付く双子と智志。

春美は砲撃の誘導魔法術式を読み取る。

そして、改造して自分のものにしていた。

そして、そのまま発射場に戻す。

爆発炎上する発射場だ。

玉の速度が遅いので人的被害は無い。

しかし、十数年掛けてきた研究。

それと、莫大な費用を掛けて作られた魔法増幅装置は灰となる。

それも、自分で放った玉を受けて消え去った。


もう一つの玉は智志の5センチの水の玉を受けて四散していた。

あたかも花火のごとく散った。

智志の玉の方が威力があったからだ。

その音に驚く同行の二人。

二人には智志が放った水の玉は見えなかった。

動作無しで放たれる時速150キロメートルの水の玉だ。

それは近くにいるものにとっては見えない攻撃。

遠目にその玉を見ていた双子には綺麗な花火の鑑賞だった。

もちろん弟がやったのは承知だ。

探査能力に優れた弟に奇襲は通じない。


お互い障害らしい障害を受けないままボスの部屋にたどり着く。

似たような距離を動いている。

当然、到着時間も同じだった。

ボスの部屋の前で再会する六人。

そしてボスの部屋に侵入する。


お決まりの洗脳に遭う三人。

地雷よって能力を消されたボス。

だが、洗脳の効果は残ったままだ。

たまたま近くにいたものを相手にすることになる。

祐治には春美。

利也には秋奈。

夏子には智志だ。

倒すのは簡単だった。

けれども、三人とも治療は出来ない。

そのためどうしても攻撃が甘い。

『怪我させてはいけない』という思いだ。

三組は戦場を離れるように分かれていった。



春美は逆に追い詰められていた。

威力がありすぎる攻撃。

それは相手を無傷では押さえられない。

相手の攻撃はそれほどではない。

けれども、やはりダメージはさけられない。

雷の本格的な玉は苦手な春美だ。

誘導を使おうとしても祐治は春美の能力を見抜いていた。

そのため、誘導弾を使わない。

近づいて体術で仕留めようとしたが帯電していた。

そのため、触ることも出来なかった。

苦戦しながら『相手の洗脳をどうやって解除しようか』と考えていた。

昔、桜子が言っていた言葉を思い出す。

『絵本と同じようにキスすれば目覚める』と言っていた。

嘘かどうか判らない。

しかし、試す価値はありそう。

自分も同様に帯電して接近する。

冷静に動けば祐治の動きなど手に取るようにわかる。

そして、予定通り実行した。



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