第33話 桜の怒り
桜の怒り
里美の目から冷静に見えていた雅雄と桜。
内心はそれどころではなかった。
桜子の治療を済まして帰る途中。
桜の目の前から瞬く雅雄。
それで桜にはわかった。
雅雄が何かをやってきたのだ。
桜が声をかける。
「あなた、今日は怖いわよ」
何気なく振り返る雅雄。
「何が?」
「そんなに桜子を嫁に出すのが嫌だった?」
「べつに!もう慣れているよ」
「でも、殺気が漂っているわ」
「まさか」
「それで、どこで分かったの?」
「相変わらずするどいね。志郎の魔法残滓だ」
「やはり、こちらでも掴んでいたわ。相手は強大よ」
「娘を無条件で殺されかけたんだ潰すまでだ」
「あなたが言うと冗談ですまないわね。私に任せてくれない?」
「どうする?」
そのとき桜の持つ亜空間通信装置が振動を伝える。
桜は雅雄には秘密ではないので通話機を取る。
情報に驚く桜。
雅雄が通話機を横取りする。
そして、てきぱきと指示を出した。
それを横目に見る桜。
しばらく話を聞いていた。
そして、通話機を切った。
「大型魔法弾の誤爆で警察署そのものが消えたそうよ」
「判っている」
「証拠隠滅よ、やってくれるわね。それであなたはなにをやったの」
「警察署の一階の防御結界だ」
「まさか?」
「建物は全壊なので助かるものはいないと思わせておいた、仲間が救出してい
る頃だ」
「なにをする気なの」
「表向き警察署全滅で相手の油断を誘う、そして仕返しをする」
「あなたも、やるわね。どこで気づいたの」
「上空にあんな低速で飛んでいればいやでも気づくさ」
「私は気づかなかったわ」
「後はまかせたぞ」
「ええ、ここまでやってもらえれば後は私がやるわ」
「すごい気合だな」
「当たり前でしょう。桜子と可愛い甥よ。仇はとらせてもらうわ」
「それでは、任せようか」
「ええ、子供達の実戦訓練も兼ねて利用させてもらうわ」
「派手にやるなよ」
「あなたがそれを言うの?娘の命を狙われたのよ許せるわけないじゃない」
「やれやれ、私以上に過激だな」
「それでなければあなたの妻などやれないわよ」
「どこで、気づいたんだ」
「金の流れよ。誘拐事件であれだけ稼いだ金がどこかに消えているのよ。
物の流を追跡していくと軍と研究所に行き着いたの」
「誰を行かせる?」
「派手好きの双子なら喜んでやるわよ」
「いいだろう、遠慮なくやれ桜子の仇だ」
翌朝、黒国の人々は警察署の壊滅を知らされた。
一般には当直の警察官と犯人のボスは死亡と発表された。
そして、助けられたボスは事件の全容を教えていた。
その結果は赤国の猪家に連絡がいく。
もちろん国王にも連絡が行っているが猪家から待てがかかる。
子供誘拐団の真相が知らされた各家の長達。
緊急の打ち合わせを行う。
とりあえず蠍家の長男利也を長としてチームを組む。
補佐役として猪家の長女夏子が選ばれた。
その人選の陰に桜の息がかかっているのは当然だ。
そして、疾風のまとめ役として虎丸家の長男祐治が選ばれた。
表向き、黒国警察襲撃事件の対策チームとして動く。
こうして世界を震撼させた最悪の犯罪は閉幕に向けて動き出した。