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桜子伝  作者: いかすみ
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第32話 桜の陰謀

桜子のやったことは人として許せることではない。

責任を取らせる桜。


桜の陰謀


病室に着くと雅雄は志郎に手を当てる。

たちまち回復する志郎。

「志郎、大丈夫か」

悟朗は志郎に呼びかける。

「大丈夫だよ、桜子!桜子は?」

桜子は顔を出して志郎に見せる。

「私は大丈夫だよ、ごめんね。無理させちゃって」

「でもなにが起きたんだ」

「あの時、志郎が私を真剣に見てたでしょう」

「うん、僕のせいで桜子がと思ったから」

「そのおかげで志郎君を乗っ取っれたの」

「乗っ取った?」

「そう、まえ家庭教師がやってた方法を思い出して、必死だったからね」

悟朗と里美と志郎の三人は信じられないことを聞いた。

桜子は続ける。

「私のほうが強かったから魔法の発動を止めたの、そうしたら直後に電撃でし

 ょう焦ったわ」

悟朗は桜子の言ってることが真実だとわかった。

志郎にその時点では意識はなかったことも先ほどの志郎の言葉でわかった。

桜子が続ける。

「体中の魔力を当たったところに回して中和させたの、慣れない体で苦労した

 わ」

「そんなことが出来るんだ」

驚く悟朗。

「そして、自分の体をサーチしたの、危ないと思ったわ。だから志郎の体で、

 ぎりぎりまで治療に使わせてもらったの、ごめんなさい」

志郎はあきれるばかりだ。

ただ、この体で治療も出来るということを知った。



あの一瞬、志郎は桜子を殺したくないので自分を放棄した。

その隙間にかろうじて潜り込んだ桜子だった。

そしてやったのは魔法を止めること。

その後は考えてなかった。

ボスがそのことに気を取られたため不意打ちは成功した。

ただ運が良かっただけだ。



桜が声を掛けた。

「桜子、土壇場で危なかったといえ、人の体を勝手に使ったのよ。責任はとる

 のよ」

その声に優しさのかけらも無い。

「桜、それは言いすぎではないのか」

「兄さんは黙って、これはけじめなの」

「はい、お母様、桜子は一生掛けて償います」

「そう、それでいいのよ」

桜はにっこりと笑い、今度は志郎を睨む。

「志郎ちゃん!、うちの娘をよくも危ない目に合わせてくれたわね。

 どう責任をとるの」

その顔は夜叉の顔だ。

「はい、一生かけて償います。済みませんでした」

女を怒らせると怖いと言うのを知った志郎だ。

「それじゃ、二ヵ月後、結婚ね。式場は手配しておくわ」

桜は先ほどまでの顔はどこへやら。


桜と雅雄が黒国に来ていたのは偶然だ。

進展のない桜子を促すのが目的だった。

そして、桜の所に入る緊急連絡。

桜子が狙われているという。

殺し屋に狙われても大丈夫と安心している桜。

その電話でついでに式場を確認する始末だ。

そして、一番早い日で2ヵ月後という返事。

丁度卒業シーズンに重なったため式場が混んでいた。

そして、再度入った連絡。

桜子が瀕死だという。

驚く雅雄と桜。

雅雄は入院場所を聞くと桜を抱えて加速した。


事情を聞いた桜、これを機会に二人をまとめてしまおうという陰謀だ。

「お母様!」

「なに、桜子、さっきの言葉は嘘なの」

顔を真っ赤にしている桜子。

「嘘じゃないけど」

「あなた達を見てるとじれったいのよ。こうなれば既成事実でいくしかないで

 しょう」

「そんな」

どうやら、桜子の年貢の納め時のようだった。

「私は早く孫の顔が見たいのよ」

もう二人は何も言わない。

恥ずかしそうにお互いの顔を見るだけだった。

桜子は部屋から出ると里美を呼ぶ。


里美は何か用事かと思い外に出る。

「里美さん、ご苦労様、あなたも疾風を抜けてもらうわ」

里美はなにを言われたの一瞬わからなかった。

しかし、

「えー」

目の前の桜子の母親が疾風のことを口にしたのだ。

雅雄が『疾風の関係者だ』というのは知っていた。

雅雄が笑いながら答えた。

「疾風のリーダー桜だ」

その時、悟朗が部屋から出てきた。

「私も杏の学長就任の時に教えられたんだ」

「それじゃ、大幹部というのは」

雅雄が答えた。

「私だよ。長い間、ご苦労さん」

「なぜ、ですか」

「魔王を倒したが魔王の爪あとはひどかったからね。売るものが無い人は死ぬ

 しかなかったから。情報と言うネットワークを作りながら救済していたんだ」

「・・・・」

「でも、思わぬ敵がいてね。杏と君が頑張ってくれたから倒せた。ありがとう」

「いえ、こちこそ。疾風のおかげで生きてこられました。それで、お姉ちゃん

 のことは?」

桜が答えた。

「私が覚えていたから、忠志を誘拐するようにして手配したのよ」

「そうだったんですか、おかげでお姉ちゃんは助かりました」

「いえ、助けてもらったのはこちらよ。杏さんがいなかったらあの子死んでた

 わ」

「そんな」

「だから、お互い様。二人は運命だったのよ」

「・・・・」

「それじゃ、兄さんのことよろしくね」

そう言うと二人は離れていった。

里美は桜の軽さに驚いていた。

すごく重要なことをまるで日常の一つのようにこなしていく。

桜子は死にかけたのだ。

『もっと大騒ぎをしてもいい』と思うのに。

世界を救うこともまるで道端の石をどける感覚だ。

そんな感覚に驚いていた。


「里美、君の知らない秘密がわかったかい」

「もう一つだけ教えて、雅雄様って・・・」

「想像通りだよ。救世主だ」

「やっぱり・・」

世界を救ったのもその一つということなのだ。

なんとなく物事を過大に意識するのが馬鹿らしく感じる。

「さあ帰ろう、結婚式の日取りを決めないと、いっそ息子達と一緒にやろうか」

そして、その感覚は悟朗にも伝染しているようだ。

でも、悪くないという思いだった。

二人は抱き合うように病室を後にする。

残った病室の中は夏の熱さだった。



明かされた疾風のボスの正体。

次回、外伝 情報屋


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