第31話 覚醒
絶対絶命の危機
過去の記憶が救う。
覚醒
志郎は必死に抵抗していた。
しかし、桜子を追い詰めているのは自分だ。
桜子を瀕死に追い込んだ一撃を放ったところであきらめた。
あとは、自分の所業を心に刻み込んで生きることを放棄するつもりだった。
そんな志郎を見つめる桜子。
二人は最後の一瞬を確かめるように見つめ合う。
志郎の心の変化は判らない。
しかし、体を操る抵抗が小さくなった事に気づくボスだ。
『止め』と言わんばかりに火の玉を作り出す。
そして、撃ち出そうとした。
しかし、今度は発動しない。
『なにが起きたのか』とあわてるボス。
その直後、二人に向けて雷の魔法が着弾した。
気絶するボス。
そして、それに引きずられて倒れる志郎。
魔法を放ったのは里美と悟朗だった。
『操られている者も気絶させないと危ない』というのは知っていた。
炎の光の中、浮かび上がった犯人に向けて放った一撃だ。
その一瞬の連携は見事なもの。
悟朗が、志郎を狙った。
『自分の息子は自分の手で』という意味だ。
そして、それは見事に命中した。
駆け込む里美と悟朗。
そして、倒れている桜子を見つける。
あきらかに瀕死の桜子。
しかし、治療を出来るものはいない。
その時、志郎が起き上がる。
信じられない光景を目にする悟朗。
悟朗の直撃を受けて、平然としているからだ。
いくら、狼家の血筋で『耐性がある』といっても悟朗の本気の一撃だ。
気絶するはずだった。
『なにか、おかしい』と感じる。
桜子を凝視したまま動く志郎。
志郎は桜子の元に近づく。
『なにをするのか』と見ている悟朗と里美。
志郎は回復魔法を使う。
桜子の傷は徐々に治っていく。
しかし、少し治したところで意識を失った。
悟朗は信じられないものを見た。
志郎は治療を出来ない。
しかし、目の前で治療を行っていた。
その一瞬は、桜子並の力だった。
どうやら、力を使い果たして眠っているようだ。
桜子も危なかった。
けれども、どうやら危険は脱した。
志郎の治療が効果的だったからだ。
そのとき、警察が屋敷に踏み込んできた。
悟朗は合図して警察を呼ぶ。
こうして、長い間世間を苦しめた誘拐犯。
その最後の一人は捕まった。
桜子は急ぎ病院に運ばれる。
志郎も衰弱が激しい。
同様に、病院にはこばれた。
桜子の容態は思ったより悪く医者は今晩が峠と言う。
悟朗は桜から預かった娘。
それをこんな目に合わせてしまいどうしようと考えていた。
桜に連絡したくてもあの家に電話はなかった。
だから手紙で行っていた。
志郎の方は疲労だけだ。
なのでなんでもなかった。
そして、桜子の容態好転を祈って時の過ぎるのを待つ。
悟朗にはどうにも納得の出来ない謎が残っていた。
「兄さん!」
呼び声に顔を上げる。
そこには桜と雅雄がいた。
この感触は15年前の初めてと同じだ。
「桜、来たのか。桜子はこの部屋だ。すまない」
「あの子なら大丈夫よ。もう治したから」
そういう二人の後ろからひょっこり顔を出しているではないか。
いつの間に来て、治したのか。
そして、思い出す先ほどの感覚。
周りの時間を止めて活動する超高速移動だ。
平気の顔をしている。
けれども、雅雄が桜子のため全力でここまで来たのがわかった。
「お父さん、志郎さんも治してくれる。無理をさせちゃったから」
桜子が雅雄に頼んでいた。
無理をさせた?
桜子が?
悟朗は意味がわからなかった。
しかし、志郎も治してくれるならと案内をする。
雅雄が言う。
「よく土壇場で思いついたものだな、もっとも志郎君には感謝しないとな」
そういって、病室に向かう。
悟朗は、『なにを言っているのか』と思いながら歩いていた。
桜子の行為に怒る桜。
次回、桜の陰謀。