表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜子伝  作者: いかすみ
28/48

外伝 杏(最終話)

桜子と出会い新たなる道を歩む杏。

果たして過去は?

そして、その道の途中に過去を知るものが現れる。


杏3


そして、リーダーから言われたことは引退だ。

『忠志様と結婚して幸せになれ』という。

でもこんな汚れた身ではいまさらだ。

正直に言うことが出来ない。

そのまま、結婚式当日を迎える。

そして、結婚できた。

これでもう思い残すことはない。

今晩、抱かれて正直に言おう。

そう決断していた。


なに、この痛みまさか。

『奇蹟?』

でも、これで今夜だけでも誤魔化せる。

今夜だけ幸せでいさせて。

祈るような思いだった。


朝、そっと抜け出して出て行こうとした。

しっかり、手を握られる。

「忠志様、ゆるして私はあなたに抱かれるほどの女じゃありません」

「何故だ」

「昨夜は奇蹟が起きたけど数え切れないほど・・・忠志様が最初じゃないの」

「僕も今なら正直に言う。今日が二回目だ」

杏は忠志を見る。

「どういう意味です?」

「君が子供を助ける為、体を張っていたのは知っている」

「だれが、それを」

「それは言えない、約束でね。でも君がいたから今日僕はいるんだ」

「?」

「君が13歳の時、会っているんだ」

「いつ」

「暗闇の中だったけど君は震えていた」

「まさか」

「そのまさかだよ」

「でも」

「ある人が教えてくれたんだ。彼女は崇高な目的のため体を投げ出す。だから

 最初だけでも彼女の好きな人に抱かせてあげたい」

といってた。

「それじゃ、あれはあなたなの?」

「その言葉で判ったよ。君だということが、だから君に会うため執念で生き続

 けたんだ。何度も死のうと思った。でも君の苦しみに比べたらと考えたらど

 んなことも我慢できた」

「・・・・」

「もう、離したくない。君のすべてを受け入れるからいかないでくれ」

「忠志さん」

二人泣きながらお互いをいたわりあった。


黒国は「杏の里」の活躍で早々に誘拐団が壊滅した。

そのため子供の教育というものに集団教育というシステムが組み込まれた。

その、先生になった者。

その多くは桜子の教育プログラム出身のものが多かった。

そして世界で一番早く大学が復活する。


杏は桜子の下で学んだことが評価された。

そして、黒国国立大学初代校長に推薦される。

推薦者は悟朗だった。

杏は悟朗にとって、学校システム設立の立役者だ。

そして、大学設立の裏方の者が集まる理事会。

集まったものはそれなりのものばかりだった。

悟朗が最初に説明して杏が紹介される。


杏には『みんな立派な人だ』とばかり思っていた。

五十人の理事メンバー。

いろいろな席で会ったものもいた。

だが、十人ほどは別の意味で見覚えがあった。

相手も杏の顔を見て驚いている。

すぐに顔を伏せる者。

あからさまに軽蔑する者。

顔を赤らめて怒りを発している者。

いろいろだ。

そして、悟朗が賛成を促した。


「私は反対だ」

例の怒り顔の男が席を立つ。

杏も覚えがある。

最初に声を掛けた男だ。

クレームを言ったが、無視された男。

理事の中でも重鎮の男だった。

悟朗は冷静に対応する。

「理由は」

「彼女は娼婦だ」

会場がざわつく。

杏にとって事実だ。

いたたまれない。

だが悟朗が冷静に会場を鎮める。

「彼女が娼婦と言いますが、するとそれを買った人がいますね」

会場は何がおこるかと興味深々だ。

「それでは、彼女を買ったという人を連れてきてください」

怒り顔の男は仲間の数人を指名する。

しぶしぶと立つ男達。

「それみろ、事実だろう」

怒り顔の男は自慢げに言う。

しかし、悟朗は冷静なものだ。

「それではいくらで買われたのですか」

その質問を受けた男達は驚く。

そして言ったせりふは。

「すまん、よく似た娘だった。改めて見たら違う娘だ誤解を与えてすまない」

「私も、同じで勘違いだった」

そういって、最初の男以外全員座ってしまう。

その男も突然動揺したような態度だ。

悟朗にはみんなの変心など手に取るようにわかる。

『対価が子供だ』とわかったらこの場にはいられない。

悟朗はさらに続ける。

「さて、証人をここに」

驚く杏だ。

娼婦だったことを証明する。

そんな、証人が呼ばれるのかと思った。

そして、出てきたのが二人。

忠志とメイドの二人だった。

「本来、来てもらう必要はないと思いましたが、万が一と思いまして用意して

 置きました。一人は彼女の夫です。私の部下の狼忠志です」

紹介された忠志は礼だけする。

「それでは忠志、恥ずかしい話だと思うけど彼女初夜の時、初めてだったかい」

打ち合わせが済んでいるようにすらすらと質問がでる。

「はい、間違いなく初めてでした」

真っ赤な顔で答える忠志。

「恥ずかしい回答をありがとう、よく答えてくれました。つぎは当日ベッドメ

 イクをしたメイドさんです」

やはり、礼だけしてなにも言わない。

「それでは、部屋を片付ける時、気が付いたことはありますか」

「はい、印が残っていました」

もう杏には恥ずかしいことばかりだ。

「ありがとうございます。倫理上秘密にすることですが特別の事情で話しても

 らったのでいまの発言は聞かなかったことにしてください。みなさん、お願

 いしますね」

そう言ってから二人を下がらせた。

「さて、二人の発言から彼女があなたの言うようなことをしたはずがないと思

 うのですが間違っていますか」

男は黙るしかなかった。

「だから、彼の発言は他の人と同様勘違いだとわかっていただけましたか」

男は黙って座った。

これ以上言えば『真相をばらすぞ』という気迫を悟朗から感じたからだ。

「もし、まだ問題があるようでしたら私が受けます」

そこには、かつての英雄の迫力を出し切った悟朗がいた。

会場は完全に飲まれていた。

こうして杏の国立大学初代学長の就任は決まった。


大学は順調に運営されていく。

そして、多くの学生を輩出した。

その中には、杏が体を張って助けたものがたくさんいた。

生徒の多くは杏の入学歓迎挨拶のとき気づく。

そして、恩を返すため多くのものは杏のもとに集まる。

それは教師として新たな人の輪を作った。

他国への教師として派遣される教え子達。

一介の孤児が世界最大の派閥の長に納まっていく。



一方、杏が疾風を引退したあと各国を転々と「杏の里」の情報を流されていく。

本人はいなくても巧妙に流された情報は買い手のものを震撼させる。

そして、誘拐団は買い手が消える。

そのことにより経営が困難になった。

目的を営利誘拐に変えたところで一斉摘発を受け全滅においこまれる。

その影に旋風の活躍があった。

そして、差し押さえられた資料から顧客が割れた。

助けられた子供の数は数千人に登る。

「杏の里」は子供を守るシンボルとして、各国の子育て部門の名前となった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ