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桜子伝  作者: いかすみ
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第24話 桜子プログラム

ようやくみんなが揃った。

そして始まる桜子の授業。

桜子プログラム


使用人全員が集まったことに感激する桜子。

気合を入れて授業を開始する。

といっても堅苦しいものではない。

父親に教えられた話の長文のものを張り出すだけ。

雅雄の教育プログラムの延長だ。

それは、桜子の歩んだ道でもあった。


生徒達は時間一杯をかけて読む。

そして涙をさそい、最後に笑うものがたくさんいた。

過去の短編名作だ。

そして、時間になった。

そこで、読めた者と読めなかった者を調べる。

半数は読みきれなかった。

『次からは二組に分けないといけない』と感じる桜子だ。


杏はその書き込まれた紙を見てそれどころではない。

『魔法でそんなことが出来るのか』と感心していた。

授業が終わったので、紙を回収しようとする。

すると、桜子は魔法を使う。

紙に書かれていた文字は消えて固まりにかわる。

土の魔法の応用だった。

聞いたことはある。

土に魔法を掛けて整形する魔法だ。

大きいものは、椅子とか机などを作る。

力の強い人ならもう少し大きな物も出来た。

けれども、文字を書くなど細かいことが出来る。

それは、初めて知ったことだ。

それを、あまりに自然に使いこなしていることに驚く。


杏は桜子に確認した。

『勉強には魔法も入れるのか』ということ。

桜子は『もちろん』と答えた。

その答えに驚く杏だ。

使用人が魔法を使える様になれば危険なのは常識だ。


桜子はそんな杏に質問した。

「あなたは武器をもてないの?」

『なにを言ってるのか』と思う。

「持てます」

「それに特殊な力がいるの?」

「いりません」

「だったら、武器を持って主を襲うのと魔法で主を襲うのと一緒でしょう」

「・・・はい」

「主が危ないとき、武器を持つのと魔法で支援するのとどっちがいいの?」

「魔法です」

「それが答えでしょう」

杏は簡単に言いくるめられていた。

主を襲うのではなく守るための手段としての魔法。

人の悪意を疑わない桜子の態度に感化される。


こうして、使用人達の教育は進んでいく。

最初は一つのクラスも進んでいくうちに三つに分かれた。

そして、その一つを任された杏。

桜子から渡されたプログラムの通りに教えていく。

それは、効率からいえば悪い教え方に見えた。

しかし、確実に覚えていく不思議な教え方だ。

そして、杏はそのプログラムをマスターしていく。

1年後、『狼家の使用人は凄い』という評判になっていた。


そして、引き抜きではなく正式な話が持ちあがる。

『指導員として来てくれないか』という引き合いだ。

驚く、悟朗。

その指導員と言うのは学校の前身に当たる塾だ。

つまり、『教師として採用したい』というものだった。

一年前、文字さえ読めなかったもの。

その彼等に教師としての引き合いが来た。

反対するものではない。

それで了解した。


桜子はそれらのものにプログラム概要を渡して送り出す。

概要を書いたのは杏だ。

画期的な指導システムは瞬く間にその塾を大きくしていった。

そして、それは黒国に学校システムを作る原動力となる。

それと、使用人たちがマスターしていったのは簡単な土の魔法だ。

たちまち全国に広がっていく初歩の魔法。

その魔法と共に塾の名前も広がっていった。


いままで、家庭教師と、塾で勉強したものでは差があった。

家庭教師の方が圧倒的に良かったからだ。

しかし、狼家の使用人が教えるようになってそれが逆転する。

人々は争って塾に入れようとした。

しかし、収容数に限りがある。

あぶれる生徒達。

それは、黒国を動かして『学校に』という話が起きた。

塾は学校として変更を余儀なくされようとする。

反対した塾経営者は狼家から脅しをかけられた。

そして、講師の方からも。

背後に桜子がいた。

講師の者は桜子を崇拝している。

その桜子が『みんなのために学校に協力しろ』というのだ。

反対するわけがなかった。


こうして、塾の経営者は折れた。

替わりに塾は『全部黒国が買い上げ』ということになる。

だから、金銭的損失はない。

ただ大きな独占権益が消えただけだ。

黒国の学校は瞬く間に黒国全体に広がっていった。


その頃には、いままで家庭教師をしていたものが反撃する。

職にあぶれていたからだ。

優秀なものは学校に組み込まれていた。

けれども、絶対数が余った。

そして、より上位の学校が作られる。

中学だ。

小学三年の後、中学を勉強する。

中学三年を経て一人前になった。

さすがに初期のプログラムでそこまでは無理だ。

狼家の場合、中学分は桜子が直接教えていた。

そして、桜子のプログラムが補えない中学を引き受けた。

けれども、杏はプログラムをベースに発展させる。

発展させた結果、中学でも通用する内容にした。

それが、杏の真価だった。


選ばれた生徒。

その中には、『より上の学校を』という話が持ち上がる。

今度は生徒の親からの願いだ。

『より高度な知識や魔法を教えて欲しい』という願いだった。

大学の構想が持ち上がったときだ。



杏は桜子の教え方をうまくまとめて悟朗に協力していた。

杏の結婚を境目として大きく変わる黒国の教育システム。

悟朗は黒国の教育現場に汚れた大人を入れたくなかった。

悟朗は大学の学長に杏を推薦した。

背景もなにもない杏に反対する理事。

その背景の無さを重視した悟朗。

英雄の推薦と杏の実力に納得する現場の教育者たち。

こうして、舞台は理事会へ移った。



結果的には杏は学長になる。

大学設立に当たり講師の選抜が行われる。

選ばれた講師は一流と言われていたものだ。


桜子の教育は硬直した教えではなかった。

常識という枠にとらわれない教え方だ。

その教え方によって黒国のトップまで駆け上がった杏。


その教育法に順応していた講師は少ない。

古い教育法と常識が足かせで伸びていかないからだ。

残ったのは元狼家使用人のものばかりだった。

いち早く高度な知識を詰め込んで、そして練り上げていく。

そして、杏の大学の水準は世界最高を維持していく。

講師の多くが別の国で大学の学長を務めることになる。

各人はそれぞれ努力してその地位を得た。


それは桜子が八歳の時に言った言葉。

「使用人たちの教育レベルを上げてみんなが幸せになるようにしたい」

を実践し背中を押した結果だ。

背中を押されたものは生涯桜子の恩を忘れることは無かった。



桜子の授業はみんなの背中をおしただけ。

それは桜子の知らないところで大きな力となっていった。


次回、外伝 杏を書きます。


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