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桜子伝  作者: いかすみ
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第1話 魔王の記憶

行方不明の妹からの手紙

それは古い記憶を呼び起こすものだった。


魔王の記憶



黒国の英雄として活躍する狼悟朗おおかみ ごろう

彼の許に、妹の桜から手紙が届いた。

桜は、十年前から音信普通だった妹だ。

世間的には有名な論文を発表している。

けれども、消息は不明だった。

悟朗は、懐かしい文字を見て昔を思い出す。

そして、記憶は10年前に飛んだ。


狼悟朗にとって桜は分身に近い。

いつも、悟朗にくっついて動き回っていた双子の妹だ。

なにをやるのにもくっついて回るパートナーだった。

頭の良い策謀家だ。

いたずらをやるのでも作戦は桜がたてた。

そして実行は悟朗が行う。

そういう関係だった。

先読みに優れ、探索魔術に抜きん出た妹だ。

2人は狼家の次男と長女の生まれだ。

お互い、そこそこの才能に恵まれていた。

共に17歳の双子だった。


長兄が家を守り平和な日々だった。

二人は家の事も考えずのんびり過ごしていた。

桜の方は『ぼち嫁入り』という話が持ち上がっていたぐらいだ。

しかし、本人は気にもしていない。

悟朗と楽しんでいる方が面白いからだ。

そのため、結婚など考えてもいなかった。


悟朗の友人の中には桜に惚れているものもたくさんいた。

しかし、桜の目からみれば悟朗の友人はいずれも子供だった。

悟朗もそんな桜を苦笑いで遊びに連れ歩いていた。

現実に探索魔術に優れた桜。

その分析力は友人達の服につく些細な残り香まで見抜いた。

そして、行動をすべて見抜けるほどだった。

考えていることも手に取るようにわかる。

だから、面白くなかったと思う。

恐れをなした友人の中には桜を『魔女』と読んでいた。

そして、恐れている者もいたぐらいだ。

そんな状態だ。

悟朗も桜の結婚はきびしいと感じていた。

二人の家は狼家代々の家だ。

気の強い甥とやさしい姪。

二人のお守りをしながらのんびりしていた。

平和な時代だった。

そんなある日、あの事件が始まった。

魔王出現事件だ。


最初のきっかけは一般報道から初まる。

『政府が黄国の辺境で実験をして事故が起こった』という発表だ。

今まで噴出していた魔力の風が止まったというものだった。

そのこと自体は悟朗は『良かった』と思ったぐらいだ

兄の手伝いで各地の事故などの記事の整理を手伝っている。

本来見せてもらえない資料を見た。

『魔法の素が飽和状態に近い物』という報告だ。

それを読むと魔法大戦前の混乱と現在が一致する。

魔法発電という物で魔法を消費する対策。

しかし、それは循環系らしく『意味がない』という。

『消費した電力はまた魔法の素に戻る』という結論だ。

だから、魔法の噴出しが止まったのは『良かった』と思っていた。


その後、民間放送局が別の発表を行った。

世界の不思議という番組でとんでもないことを発表した。

その番組は、ゴシップ番組をするところだ。

結構センセーショナルな事も発表することで有名。

そのため、結構視聴率が高い番組だった。

そして、『政府発表の裏側』というタイトルで報道された。

その内容はまさしくセンセーショナルなものだった。


魔力を噴出していたところ。

それは、結構有名な場所だ。

生物も居ない不毛な砂漠にある。

なぜか、植物を植えても育たない。

建物を建ててもすぐに風化してしまう場所だった。

それが、今度は『魔力を吸い出している』という。

『政府の発表は間違っている』という内容だった。


さらに番組スタッフは望遠カメラで被害者を映し出した。

画面はカメラ映像に変わって、ピントを合わせていく。

単に写すより臨場感があった。

そして、そこに二人の死体を映し出す。

初めは単なる老人二人だ。

なぜそんなところに放置しているのか。

その方が疑問だった。

『放送するぐらいなら引き取って埋葬すればいい』と思う。

おそらく視聴者の大半のいやほとんどのものがそう考えただろう。

そこまで、障害物らしいものはないからだ。

死体の先にはなにか装置らしきものがあるだけだ。

手前には何もなかった。


しかし、番組は続く。

そしてその死体の正体を教えられる。

『政府の魔王対策研究班のメンバー』という。

そして、一月前の顔写真を見せられた。

妖しげな番組で『ついにここまでやるのか』と思ったぐらいだ。

なぜなら、そこに写っていたのは若い研究者だ。

とても死体の老人と『同一人物』とは思えなかった。

その時点では『別人を掲載した』と思っていた。

胡散臭い番組で『またやらせでも使ったのか』と思っていた。

信じられない報道なのだからしかたがない。


次に紹介されたのは男だ。

『警備員をしていた』という。

中年のおじさんだった。

ナレーターは誕生日などを聞いていく。

まだ22歳だという。

信じられない内容だ。

しかし、その直後見せられた書類で真実とわかった。

顔写真と指紋証明付きの半年前の書類だった。

そこに写ってあるのは明らかに20歳ぐらいの若者といっていい。

そして、番組中で収録された指紋。

同じものだった。

同じ会社の警備員がもう一人紹介された。

こちらは5歳ほどの差だった。

そして、ポツポツと語られる真実。

それはあの空間が魔力だけではない。

『生気』を吸い取っている。

そういうことを言っていた。


そこまで聞いたとき、背中に悪寒が走った。

これはひょっとすると『大問題になるかもしれない』という予感だ。

別の学者が出てきて中世の歴史を説明していく。

参考に使われたのは二十年ほど前にベストセラーを記録した本だ。

桔梗の日記というものだった。

今ではどこの家でも類似の本が一冊はある。

魔法の起源が書かれているものだ。

伝説の英雄が魔王を倒した。

『その亡骸が分解して魔法の素になった』という神話だ。

いや神話に近い報告書だ。


当時の人の聞き伝えの内容の集大成だった。

だから真実とは限らない。

しかし、多くの人の言っていることが一致していた。

ナレーターはその内容を説明する。

それと、今回の現象をあわせて解説していく。

そして、魔王の起こした被害と今回の被害を照らし合わせる。

該当する項目が多い。

魔王の出した被害と今回の奇現象が『同じもの』と立証している。

見ているものは背筋が寒くなっていくだろう。


事実、反響がすごかった。

その番組後、放送局の電話はパンクする。

そして、近所のものは放送局に押しかけた。

放送局は、特別記者会見を行う。

そして、発表が『事実』と証明した。

『放送局の威信にかけて真実の報道だ』と主張したのだ。

その番組は次の日再放送になった。


そして、他の放送局も一斉に特別番組を開始した。

自走する車に動物を乗せて現場で走らせる実験をしたものもいた。

信じないものはそのまま乗り込んだ。

そして、意識を失う。

助けたくても誰もいけない。

入ろうとすると体からいやな感じがするという。

放送の時写した場所はすでに入ることは出来なくなっていた。

範囲が広がっている。

そしてそれが事実だと確認された。


他の番組ではべつの検証をおこなった。

中には顔を隠した特別スタッフなるものが出演していた。

そこで行われた実験の内容が音声を変えて披露される。

徐々に明かされる真実。

日記では英雄が魔王を倒している。


さらに、倉庫の管理人のようなものが出演していた。

その男から語られる真実。

『過去に魔方陣を形成したアイテムは存在していた』という。

しかもそれが『奪われた』というのだ。

過去の魔王と言う存在。

それは確実に存在していた証明だった。

そして、現代に英雄はいない。

奪ったものはそれをどう使うかわからない。

真相がわかるにつれて広がっていく不安。


そんなとき、黒国辺境の爆発事故のゲリラ報道。

そのことまで政府が隠していた。

そんなことが発覚する。

爆発そのものはたいしたことはない.

ただ中心に『魔方陣が書かれていた』という。

誰かがなにかを『召喚しようとして失敗した』と考えられる。

あるいは成功して魔王をすでに呼び出したのか?

すぐ近くなのになにも知らされていない不安。

政府の公式発表が信じられなくなったときだった。


そんな情報の無さ。

それが、憶測とデマに拍車をかけた。

『世界が滅ぶ』という結論に達するのに1日はいらなかった。

突然起こり始めた買占め。

職場では人が出てこなくて仕事の維持は不可能だった。


店は開かなくなり、流通も止まる。

残りのわずかなものをめぐって喧嘩が起こった。

それが、街中に広がるまで時間はかからない。

やがて、人の持つ物を奪うという行為に発展した。

そのとき、街は崩壊した。

そこにあるのは戦場だ。

そしてそれは世界同時に起こった事態だった。

大きな都市ほど被害は大きくなったのは当然だ。


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