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桜子伝  作者: いかすみ
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第17話 地下の攻防

杏の手引きで進入する地下。

思わぬ見張りを杏に任せる。

二人から離れた杏は桜子に牙を剥く。

隙を覗う杏。

獲物を前に集中していく。

そして、


地下の攻防


三人は、人気の無い廊下を歩く。

館の北側の通路だ。

来客宿泊用の客間が続く。

そして廊下の突き当たりの扉を開ける。

そこには階段があった。

桜子は館に地下があることを初めて知る。

そして、慎重に行動する。

使用人たちは今晩の歓迎会の準備に大忙しだ。

誰も普段無人の場所に近づくものはいない。

地下はお酒の保存庫と物置しかない。

その奥に隠し部屋がある。

その秘密は一般には知られていない。


そして、保存庫の前に『いかにも』という警備の男。

一応格好は執事の服装だ。

桜子は、杏になんとかするように頼んだ。

杏は『仕方が無い』と前に出る。

当然、見咎められる杏。

だが、不慣れな使用人が道を迷って入り込んでしまった風に装う。

退屈な男は可愛らしく装う杏を親切に地上へ案内する。


男にとってここは迷うようなところではない。

それを承知していた。

おそらく探検気分で『さぼるために来た』と推測する。

だから、『少し楽しんでも相手が露骨に騒がない』と踏んでいた。

そして、さりげなく腰に手を当てて感触を楽しむ。

杏は嫌がる振りをして挑発していた。

男は『うまくすればもっと楽しめるかも』と喜んだ。

けれども、杏のガードは固い。

『廊下では嫌だ』という態度だ。

そこで、普段使わない客間の一つに誘う。

そして、少し休んでいくことを勧めた。

迷う振りして流し目を使う杏。

もう男は夢中だ。

二人は階段を登っていく。

そして、桜子の視界から消えた。


桜子はそのやりとりを扉の隙間から感心して見ていた。

残った二人は階段脇の小物入れに隠れていた。

杏の行動はとても十五歳の娘の行動には思えなかった。

田舎暮らしの桜子に欠けている知識。

それは、男を手玉にとるテクニックだ。

十五歳とはいえあちこちの家で仕事をしてきた杏だから出来ること。

桜子は杏がそんな経験者とは知らなかった。

だが『あの後大丈夫なのかな』と少し心配になる。


見張りのいなくなった扉

こっそり近づく。

しかし、鍵が無くて開けられない。

物置の中の棚が動いて隠し部屋に入る。

立ち往生している桜子に微笑む里美。

しっかりしているようで抜けている。

というよりまだ子供の桜子。

里美は、ポケットから鍵を出して開ける。

こっそり、予備鍵のコピーを作っていた。

前回の進入の経験からだ。


扉を開けて進入する二人。

その頃、杏は誘い出した男を眠らせたところだ。

男の誘いに乗った振りをして雷の接触魔法で気絶させる。

杏の得意技だ。

だから被害者はみんな無抵抗で焼き殺せる。


これから不法侵入者を焼き殺すのだ。

向こうから飛び込んできたチャンスだった。

ここにいることは誰も知らない。

あとは、止めの魔法を撃つだけ。

得意技は里美との重ね掛けによる火の魔法だ。

しかし、忠志の前で殺せない。

里美に忠志を送らせて『その間に』と考える。

もし、忠志が動けないときは里美を残す。

人を呼びにいくように離れて殺す考えだ。

後味の悪い殺しだ。

里美を巻き込みたくなかった。



桜子の持って生まれた特質。

それは、ありあまる才能に加えてもう一つあった。

それは強運だ。

無警戒だったお茶を回避できたのも運だった。

別のところでお茶を飲んだ直後だったからだ。

あの襲撃の時も同じだった。

本来ミスしていた水の矢。

それが別の襲撃者に当たったのは偶然だ。

そして、今回も同様だった。


悟朗の帰宅に合わせて啓が仕掛けた罠だ。

襲撃者は悟朗と忠志の2人を抹殺するよう依頼されていた。

そして、今度こそ失敗しないよう念を押す。

そして啓に怪我をさせるまでの周到な打ち合わせ準備をしていた。

盗賊という名目の刺客。

それは、秘密の通路から屋敷に侵入する手はずだ。


最初の目標。

それは館の主、忠志だ。

裏庭に侵入した賊は窓を開けて屋敷内に入る。

あらかじめ鍵は開けてあった。

そして、地下に向かう三人。

それと、悟朗を襲撃する六人に分かれた。

前回の襲撃で半数を失った。

それでこれが残った全員だ。

三人は足音を殺して地下の目的地に向かう。

目の前に使用人の娘がいた。

扉を開けて倉庫の中の状態をうかがっている杏だ。


『話が違う』と考える。

そこには手引きの『男』がいるはずだった。

その予想外の事態に焦る侵入者。

『お酒の倉庫に酒を取りに来た娘』と勘違いしまう。

そうなれば、騒ぎになる可能性がある。

それならいっそ『片付けてしまおう』と考えた。

顔を見れば『仲間』とわかる。

けれども、後ろからしか見なかった。

結果は火を見るより明らかな同士討ちだ。

三人は一斉に火の球を放った。


魔法の炎の接近に気づいた杏。

そちらの方向に顔を向ける。

けれども、もうかわせない。

とっさに背中を向けるのがやっとだ。

初撃をいきなり背中に3発受けてしまう。

燃え上がる背中。

全身を覆う火の魔法。

焼け爛れる皮膚。

辛うじて、顔を手で覆ったから、頭部は無害だった。

そして、倒れた。

倒れた衝撃で意識ははっきりする。

物置きに入ろうとするが体が動かない。

激しい痛み。

背中の服はまだ燃えていた。

そして、会話の内容を聞く。

物騒な結論を聞いたところで動けない。

『これで終わりだ』とおもい目を閉じる。

因果応報という考えが浮かぶ。

殺し屋の人生の終わりはこんなものだ。


侵入者たちは魔法が当たる直前に杏の顔を確認した。

驚愕の侵入者たち。

杏に近づきながら会話をする。

邪魔者と思って攻撃した。

その相手は、味方の杏だった。

打ち合わせでは『男』と聞いていた。

杏が『打ち合わせのものだった』と勘違い。

この不始末がばれれば粛清されてしまう。

簡単な相談をしてまとまった意見。

それは、杏の粛清だった。

仕方が無いと、止めを刺そうと構えたところに水の玉が飛んできた。

大きさは1メートル。

信じられない大きさの攻撃だ。

刺客たちはあわてて通路を戻る。

そんな攻撃魔法を仕掛ける相手に敵う訳ない。


水玉は倒れている杏の上で止まりゆっくりと杏を包む。

燃えていた服はたちまち鎮火だ。

そして、鎮火すると玉は消えた。

その直後を走る雷の矢が3つ。

逃げた刺客を追う。

高速の追尾弾だ。

障害物も少ない廊下ではかわしようも無い。

三人に当たる。

三人は一瞬で無力化されてしまった。



杏は敵だと教えられていた桜子。

いつの間にか味方と勘違いしていた。

その誤解ははたしてどうなる。


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