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桜子伝  作者: いかすみ
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第11話 住み込み

住み込み


桜子が桜に連れられて狼家に顔を出した。

それは、お見合いから10日後のことだ。

そして、昔桜のすんでいたところに案内される。

桜の実家は大きな屋敷だ。

家を出たからといって片付けられるわけではない。

桜の部屋はそのまま残っていた。

ただ、暴徒に襲われたため中身は大半が無くなっている。

思い出の品が消えている。

そのことに一抹の淋しさを感じる桜だ。

しかし、桜子が来るという事で昔の服などが蔵から出されて用意されていた。

桜は出された服に見覚えがある。

その懐かしさに感激していた。

桜子は自分以上にはしゃぐ母親を見てあきれる。

桜は奔放に育っている。

しかし、一応『お嬢様だった』と認識した桜子だ。

部屋を出た瞬間、桜にこずかれた。

桜子の考えなど手に取るようにわかる桜だ。

そして理不尽なこずきに文句をいう桜子。

和やかな親子の一場だった。


桜子に専属のお手伝いが付くことになっている。

孤児院出身の姉妹だ。

別の屋敷から引き抜かれてきたものだった。

10年前の暴動のとき、両親を失い路頭に迷った姉妹だ。

上の姉は15歳で杏という名前。

下の妹は13歳で里美という。

これは本家の悪意だった。


桜の父親の弟が本家の後見人だ。

これは本家を継いだ悟朗の兄。

その兄が暴動で死んだことに端を発する。

兄の息子はまだ小さい。

それで、家を継ぐ資格を与えられなかった。

検討された時点、悟朗は未成年の独身だった。

それで、論外といわれてしまう。

悟朗は、急ぎ結婚した。

しかし、認められなかった。


さらに悟朗は、救世主と一緒に活動した。

そのため英雄として扱われる。

そして、街の復興に大きくかかわった。

知名度は高い。

けれども、実質的に家のことはなにもしなかった。


そんなとき傍流で外れていた叔父、はじめ

彼が乗り込んできた。

そして、兄の子供、忠志と香織の2人の後見人に納まる。

家のことを見ていない悟朗と桜。

二人はいつのまにか蚊帳の外に置かれていた。

しかし、最近の親族会議の場では変わってきた。

知名度の高い『悟朗を』という話が持ち上がっている。

悟朗は救国の英雄だ。

だから当然の話に思われた。


だが、実質すでに実権を握っていた啓。

彼は、それを不服と考えた。

会議の場では逆らう発言をするほど馬鹿ではない。

裏の組織に依頼して悟朗の抹殺にかかった。

そんなとき、悟朗が子供を連れて旅行に出かける。

組織は、機会到来とばかりに刺客を差し向けた。

啓は依頼達成の報告を受けるばかりのはずだった。


結果は刺客は全員盗賊扱いで処刑されてしまう。

結果的に、英雄を襲った。

そこに、情状酌量の余地を与えられない。

さすがに彼等は刺客を任されるだけある。

捕まっても口を割らなかった。

それだけが啓の救いだった。

刺客は当然死刑だ。

だから犯人達は黙っていた。

捕まれば死あるのみだ。

それが殺し屋の宿命だった。

まだ治安が安定していない。

その関係で盗賊に対しては死刑が適用された。

だから取調など存在しない。

それが啓には幸いだった。

組織の方は虎の子の暗殺団が処分されてしまう。

その責任を啓に求めた。

目標の能力の過少申告で『契約違反』と迫る。

啓は苦し紛れに暗殺団を手にかけたのは『妹の桜』と白状した。

苦し紛れの嘘が真実だった。

それは、皮肉の一言だ。

その結果、組織は刺客を募集して雇う。

そして、二人の殺し屋を差し向けた。


裏の世界で知れ渡る「杏の里」だ。

二人に狙われた対象は黒焦げの死体となる噂だ。

見たものはいない。

見ることがあるとすれば被害者になったときだ。

絶対に痕跡を残さない二人だった。

そして、桜を狙うため雇い入れた外部の殺し屋だ。

刺客集団を殺された組織の復讐だった。

桜が子供を送ってくる。

そういう話で待ち構えていた。

しかし、桜に仕掛けるにはあまりに力不足だと気づく。

おまけに知り合いのお姉さんだ。

二人の仕事をする気は一気に失せた。



桜と桜子は付いて早々二人から発せられる殺気には気づく。

桜は殺気に対して魔力計の数値を上げた。

その数1500だ。

殺し屋達があきらめた理由だった。

2人を足しても1400では戦いにならない。

二人は『これで仕事をしなくて良い』と思った。

契約違反の『対象者過小申告』だ。

二人に敵う相手ではないのだから当然だった。


意地になった刺客組織は目標を娘に変えた。

対象に絶望を味あわせる。

そういう目的に変えた。

理不尽な命令だ。

二人は逆らおうと考えた。

けれども、弱みを握られた二人は逃げられなかった。

自分達の使命を考えればここで死ぬわけにはいかない。

目を瞑って桜子を殺すため仕事の続行だ。


その変化に気づかない桜ではない。

すぐに目標が自分から娘に変わったことを察する。

しかし、二人の能力は知れていた。

知れていたというより知っている。

桜子の防御を破るだけの魔力があるわけじゃない。

そして、体術も二人では話にならなかった。

不意を襲っても桜子に敵う物ではない。

そこで無視した。

好意でつけてくれる使用人に文句を言えない。

文句を言えばそれだけで足元をみられてしまうからだ。

桜子にはすでに言い聞かせてある。

周りはすべて敵だと教えておいた。

そして、『日常すべて訓練だ』と申し渡してある。

普通の母親はそんなことは言わない。

いかにも、感覚がずれている桜らしかった。

そして桜子はそんな生活に不満もない。

遊びの延長のような感覚だ。

殺し屋といってもそんなに強く感じない。

だから、安心だ。

知らない世界に不安を感じていた桜子。

逆に、緊張を強いる環境はわくわくする世界だ。

かくして刺客対桜子の日常の戦いが始まった。


桜は桜子が無事に屋敷に納まったのを確認する。

すると主に断ることもなく引き上げた。

物騒な二人に狙われている。

さっさと引き上げるにかぎる。

おまけに狼家を探る別の組織の目も在った。

魔力を早々に収束しておかないと大騒ぎになってしまう。

そして、こんなものに気づかないことにあきれてもいた。

悟朗が館の主なら気付くのは当然だ。

いかに、この館の主が無能なのか証明していた。

こんな、阿呆に桜子をどうにかできるわけない。

そう安心した。

そして、そんな無能な主に挨拶する気もなかった。


残された桜子はいきなり一人にされてしまう。

そんな不安を察したのか里美が主の所に案内してくれる。

里美は殺し屋だ。

それでも、すぐに仕事に入る阿呆では無い。

まず信頼を得るため動く。

それは、使用人として完全な行動をとった。

桜子が、案内されて入った部屋は大きな書斎だ。

そこに太ったおじさんとも言うべき存在がいる。

いかにも好色そうな顔を桜子にむけた。

桜子は化粧をしない。

それで、『大丈夫かな』と心配していた。


化粧をしない桜子。

それは、啓の好みの『ど真ん中』といってよかった。

美少女好きの啓だ。

桜子の挨拶の口上をしっかり聞き終わる。

その頃には桜子が敵の一人という認識は消えていた。

敵というより『飛び込んできた獲物』という認識に変ったときだ。

つい最近、子飼いの奴隷に逃げられたところだった。

替わりにと考えた。

相手は八歳の娘だ。

いざとなれば『力ずくでなんとかなる』という考えだった。

しかし、その考えが甘いのは確かだ。

偶然とはいえ刺客八人のうち四人が桜子に倒されていた。

啓はそのことを知らない凡人だ。

それは桜の読みを証明する阿呆ぶりだった。



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