第9話 魔力
志郎との戦いでなんとなく違いが見えてきた桜子。
改めて、志郎がいう魔力というものに疑問を持つ。
魔力
不思議そうに周りを見回す伯父。
先ほど感じた魔力はどこにという感じだ。
その伯父に桜子は質問していた。
「伯父様、魔力というのはなんなのですか」
悟朗は懐から取だす魔力計。
「これで、印を向けた方向の人の魔力を測るもので、数値化して
表示する」
伯父の出した器械は小さなものだ。
ごく一般的に出回っている器具。
少しお金を出せば簡単に入手できるものだった。
他人の能力を簡単に測れる器具。
だから政府は独占したかった。
しかし、構造が簡単だ。
とても取り締まることが出来ない。
だから野放し状態だった。
そして、実際に使ってみる。
やはり桜子の数値は10しかない。
志郎の数値は800だ。
そのとき、子供を部屋に押し込んだ母親が帰って来た。
「桜子、魔力というのはいろいろな力の集大成なのよ」
どうやらこちらに来る途中話を聞いたようだ。
悟朗と志郎は桜の方を見る。
桜はそんな2人を見て説明を続ける。
「兄さんが持つ魔力計は単に魔力球の大きさを表わすものなのよ」
桜の説明に驚く悟朗と志郎。
二人の顔を無視するように説明を続ける。
2人にとって魔力というのは玉の大きさだ。
それ以外には考えられなかった。
「人の持つ魔力は一般には一定の圧力みたいなものがあるの」
「圧力?」
「そう、放出力みたいなものなの」
「それはどういうことなの」
「簡単に言えば水を思えばいいのよ」
「水?」
「そう、普通の人はただの水を放出するのよ。わかる?」
「はい、なんとなく」
「だから、その魔力計は放出する水の大きさを表わすのよ」
「?」
「簡単にいえばこういうことなの」
そういって目の前で水玉を作る。
5センチほどの玉だ。
桜の実力を知らない二人。
昨夜の火の玉から一転して水玉を作る桜を驚異の目で見る。
桜は2人に笑顔を向けるとその玉を大きくしていく。
軽く50センチぐらいまで大きくなる。
「これが世間で言う800ぐらいの力なの、桜子にはわかるわね。
力が込められてないのが」
桜子の目から見れば大きさはでかいが先ほどの玉と同じだった。
誘導魔法が魔力球を小さくしている。
そのため、見た目より小さな玉になった理由だ。
制限無しなら80センチ相当の玉になる。
二人は目を丸くしてみていた。
現実に軽々と物騒な水球を見せられたからだ。
「はい、密度が薄くなってます」
「そうよ、それじゃこんなのはどうかしら」
そう言って玉を1メートルぐらいにする。
驚いている二人。
魔力計は1600をさしている。
最初は20を指していたのが扱う球の大きさで変化していく。
その事実に驚いている。
魔力計の数値を変化させることが出来るのを初めて知ったからだ。
「大きいけどさっきよりさらに薄くなってる」
「そうね、魔力計はこの球の大きさを教えるものなの」
「はい、なんとなくわかりました」
「でね、普通の人はこの球の中身の濃さを変えられないの」
桜の言った意味を少し考える桜子。
「そうか、だから大きな球を作れる人は大きな力を持つのね」
「そうよ、だけどね、この球と最初の5センチの玉は同じ魔力しかないのよ」
「はい、わかります」
「それじゃ、この玉と最初の球がぶつかったらどうなるかしら」
「小さい玉が突き抜けてしまいます」
「そうね、そして大きい玉は機能を失い爆発してしまう」
桜子は昨夜の爆発の意味がようやくわかった。
大きな球に小さな水玉が当たり中心まで食い込んだ。
追尾弾の目的を果たしたのだ。
そこで爆発が始まった。
そのためさらに大きな爆発に発展した。
というより桜子の矢の威力が大きすぎた。
同じ密度のボール同士ならあそこまで爆発しなかった。
「桜子の魔力は10しかないように見えるけど込められている魔力総量が大き
いのよ」
「魔力総量?」
「魔力の密度に大きさを掛けたものよ。はっきり言えば志郎ちゃんの作ったも
のより桜子の作った玉の方がはるかに物騒なのよ」
「え、そんな危険なものなんて」
今まで気軽に放っていた玉が物騒といわれて恐ろしくなってきた。
桜は桜子のそんな心の変化を見抜いたように言葉を続ける。
「大丈夫よ。あなた、普段は力を入れてなかったでしょう?」
「はい」
言われたように力を込めるなどせずただ作って打ち出していた。
「でも、さっきは大きくしようと力を込めたでしょう」
「はい、たしかに」
桜子は赤くなる。
母親に図星を突かれたからだ。
言われたように志郎に少しいい格好をしようとした。
そして、玉に力を込める。
突然飛び出してきた伯父さんに驚いて収束させたぐらいだ。
「だから、物騒になったのよ。玉は小さくても持つ魔力総量は志
郎ちゃんの10倍以上よ」
「え、そんなに」
蚊帳の外の2人は固まっていた。
魔力球の中身を自在に変えられる。
そのことに『次元の違う魔術』と気づかされていた。
「そんなもの間違っても攻撃に使わないでね」
桜は簡単に言ってる。
しかし、内心は冷や汗をかいていた。
もしそんなものを攻撃に使っていたらどうなっていたか。
きつく言えばトラウマになるかもしれない。
それに、将来の婿さんの前で桜子に恥をかかせたくない。
そういう意識もある。
それが、なんでもないように振舞う言葉となってあらわれた。
「はい、お母様」
「素直でよろしい、どうかしらこんなじゃじゃ馬だけど貰ってくれる。志郎ち
ゃん」
その笑顔は毒蛇の頬笑みだ。
狙った獲物は逃がさない。
あきらかにびびっている二人。
桜の方も必死だ。
冷静に返事を待っていては逃げられるかもしれない。
秘密を知られたかぎりもう身内にするしかなかった。
「お母様!」
母親の雰囲気に危険な物を感じた桜子。
思わず、母親の注意をひきつける。
母親の思惑など知らない桜子だ。
彼女には、強引に婚約を迫るように見えた。
そんな親子のやり取りを見る悟朗親子。
二人はまるで宇宙人を見るような目で二人を見上げ頷いていた。
桜からの雰囲気を軽く流す桜子の傑物をみた。
それは、魔窟に入り込んだ獲物の心境かもしれない。
逃げることは許されないプレッシャーだった。
そんな雰囲気の中、婚約は成立した。
その後は和やかな雰囲気?で家族ぐるみの食事会となる。
桜の肩の荷が下りてほっとした心境だ。
二人はその日のうちに帰っていく。
温かな雰囲気ではある。
しかし、常人にはとてつもないプレッシャーだ。
一番下の四歳の琴美でさえ持っている魔力が半端ではない。
正確にはつかみきれない。
今まで信頼していた魔力計が信じられないからだ。
見た目は小さな可愛い子。
それなのにすでに圧縮技術をマスターしている。
悟朗は、そのことに気付いたからだ。
二人は、逃げるようにして帰った。
桜子は後日、桜が送ることになる。
いろいろ準備のためだ。