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第四話 マチコちゃん、王女様をきょーはくする



「エラ様!? 今悲鳴が聞こえましたが、どうかされましたか!?」


 騎士さんがドンドンと扉を叩いています。

 今こちらに入られたらわたしの存在がバレてしまうので、それは防がなくてはなりません。


「エラちゃん。騎士さんに『大丈夫』と言ってください」


「で、ででででもっ」


「言ってください。ね? じゃないと……おっと、手が滑ってファイヤを発動しちゃいそうです」


 バスケットから巻物スクロールを取り出して、それでエラちゃんのほっぺたをペチペチと叩いてやります。

 すると、彼女は面白いくらいにガタガタと震えながら、何度もうなずきました。


「うんっ。わかった、わかったから……ころさないでっ」


 いや、殺しませんけどね? わたしは別に殺人鬼でも悪魔でもないので、これは単なる脅迫にすぎません。エラちゃんはちょっとかわいそうですけど、わたしが生きるためなので仕方ないのです。だからわたしは悪くない、悪いのはわたしにこんなことをさせている運命なのですから。


「だ、だいじょーぶよ! ちょっと裸で奇声をあげたくなっただけなのっ」


 とはいえ、もうちょっとマシな言い訳は思いつかなかったのでしょうか。意味不明なのですが。


「さ、左様ですか。エラ様もお年頃なのですね……これはお邪魔しましたっ。無事が確認できれば問題ありません。それでは、失礼致します」


 そして騎士さんも『年頃だから』という理由で納得して大丈夫なのでしょうか。自国の王女様なんですから、もうちょっと心配してあげても良いと思いますが。


「ほ、ほらっ。これでいいでしょ? だから、どうかあたしを殺さないで……殺すならおねーちゃんたちにして! あたしは単なる第三王女よ? 第一王女と第二王女のおねーちゃんたちの方が殺す価値があると思うのっ」


「自分の身内を売るとは、なかなかあなたもゴミ人間ですね……わたしが言えたことではありませんが」


 まぁ、自分の人格が腐敗している自覚はあるので、エラちゃんに対して偉そうなことを言えませんね。


「だって……おねーちゃんたち、あたしのことを『妾の子供』ってイジメるし。何よ、あたしが悪いことしたわけじゃないのに、コキ使いやがって……むかつくわ」


 どうやらエラちゃんは城で悲しい生活をしているようです。

 言われてみて、ふと気付きます。そういえばこの部屋がボロ小屋のようにみすぼらしいのは、もしかしたらエラちゃんが姉や義母に虐げられているからかもしれない――ということです。来ている衣服も王族とは思えないようなボロ布ですからね……きっと、作為的にこのような生活を強いられているのでしょう。


「はぁ。王女様も大変なのですね」


 まぁ、同情はしますが、わたしに何かできるわけでもありません。

 いつの間にか愚痴をこぼしていたエラちゃんに肩をすくめながら、わたしはファイヤの込められた巻物スクロールを引っ込めました。


「とりあえず、助かりました。別にわたしはあなたを殺したいわけではありません。少しトラブルがあったので、逃げているだけです。わたしは単なる可愛い幼女……悪い人ではありませんよ」


「良い人なら自分のことを『可愛い』って自称しない気がするわ」


 わたしが世界で一番可愛いのは当然の事実なので、そこは譲れないですね。


「ふーん。あんた……マチコだっけ? マチコは殺人鬼なんかじゃないのねっ。良かったわ……目がヤバくて怖かったけど、悪人じゃなくて安心したわ」


「目がヤバいってなんですか」


 そういえば、孤児院のせんせーにも「お前は目が怖い」と言われたことがあります。

 どこかおかしいのでしょうか……気になったので、エラちゃんの部屋にある鏡を覗き込んでみてみました。


 血を連想させる深紅の赤髪と瞳。まっすぐに切りそろえられた可憐なおかっぱ頭。貧層ですが、逆に可能性に溢れている魅力的なボディ……うーん、悪いところは見当たりません。


 鏡には絶世の美女が映っていました。別に目もヤバくないと思うので、エラちゃんの気のせいですね。


「さて、そろそろ出て行きま……」


 わたしは一刻も早く逃げなければなりません。

 なので部屋から出て行こうかと思ったのですが……この時、わたしのお腹が切ない鳴き声をあげました。


 そういえばわたしはお腹が空いていましたね。


「……出ていく前に、エラちゃん、食べ物を持っていますか?」


「も、持ってるけど……ダメよ、あれはあたしのおやつだもんっ。夜にこっそり食べるお菓子なのっ」


「よこしやがれ、です! おらおら、燃えたいんですかぁ?」


「あ、卑怯よ! ちょっ、怖いから脅さないで! わかった、わかったから……あたしのほっぺたを巻物スクロールで叩かないでっ」


 とりあえずわたしは、出ていく前に腹ごしらえをするのでした――






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