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第二話 マチコちゃん、生きるためなら仕方ない

「犯人がいたぞぉおおおおお! 至急応援を頼むっ」


 わたしが犯人だと確信した騎士さんは即座に仲間を呼びました。

 卑怯者です。大勢でこんなにか弱い幼女を捕らえようとするなんて、根性なしにも程があります。


「はわわっ」


 わたしは慌てていました。逃げようとしていたのに、仲間を呼ばれてはそれも難しいです。

 わたしは幼女なので、残念ながら身体能力が高いわけではありません。走ったところですぐに追いつかれてしまうのです……いったいどうすればいいのでしょうか。


「放火魔を見つけたのか!?」


 わたしがあわあわと可愛く焦っていると、いつの間にか騎士さんの仲間がうじゃうじゃ湧き出てきました。恐らく10人以上はいるように見えます。


「ああ、犯人だ」


「……子供にしか見えないのだが」


「見た目に騙されるな! あの子が持っているバスケットを見てみろ……あれは全て【火炎ファイヤ】が込められた巻物スクロールだ。油断したら火だるまにされてしまうかもしれないぞ」


「そんなことしませんけど!? わたしは悪魔か何かですかっ」


 あまりの言われように、さすがのわたしも耐え切れませんでした。

 火だるまにするだなんて、そんな……ありえませんよ!


「まぁまぁ、落ち着いてくれ。お嬢さんも、大人しくしてくれないか? 我々も君のような子供を傷つけたいわけではないんだ」


 やってきた騎士さんのうちの一人がわたしにゆっくりと歩み寄ってきます。


「誤解ならそれをしっかりと説明してくれればいい。ただ、今は消火活動も忙しいし、ひとまずついてきてくれないか? 落ち着くまで、少しの間身柄を拘束させてほしいんだ」


 優しく語り掛けてくれるあたり、この人もきっといい人なのでしょう。

 しかしながら、放火魔だということは誤解じゃないので、拘束されたらそのまま牢獄入り間違いなしです。


 わたしはなんとしてでもここから逃げ出さなければなりませんでした。


「ほら、まずはそのバスケットをこっちに渡してくれないか?」


 騎士さんがわたしのバスケットを押収しようと手を伸ばしてきます。

 万事休す。ファイヤがなくなれば、わたしは本当にただ可愛いだけの幼女……逃げ伸びる確率はゼロパーセントになってしまうでしょう。


 だから、わたしは――


「ファイヤァアアアアアアア!!」


 ――抵抗することにしました。


「来ないでくださいっ。わたしは確かに放火しましたけど、あれは事故です! だから捕まりたくなんてないのですっ。わたしはお腹いっぱいごはんを食べて、温かいお布団で寝て、幸せになる権利がある可憐な幼女……むさくるしいおっさんに捕まってたまるか!!」


 巻物スクロールの火炎魔法を発動して、騎士さんたちを威嚇します。

 予想外の反撃に、騎士さんたちは慌てふためいていました。


「ぬぁっ!? ちょっと待ってくれ、落ち着くんだ! 君は今、何をしているのか分かってるのかっ」


「分かりません。ちょっと手が滑ってファイヤーしただけですっ」


「白々しいにもほどがあるっ……ええい、抵抗されては仕方ない! 子供相手に胸が痛いが、武器を構えろ! なるべく怪我はさせないように捕らえるぞっ」


 騎士さんたちも本気になったようです。炎を払いのけながら、壁際にいるわたしに歩み寄ってきます。

 このままでは捕まってしまいます……一応、騎士さんたちを燃やし尽くせば、余裕で逃げられると思いますが、わたしは悪魔じゃないのでそんなことはできません。威嚇目的で炎を放つのがやっとです。


 この状況で、逃げられるのは……上!


「【火炎ファイヤ】!」


 今度は下に噴射するようにファイヤを発動。巻物スクロールから発言した炎を、わたしの小さな体を浮かします。その推進力を利用して、わたしは空を飛びました。


 ただ、噴射する炎は調整が難しく、飛ぶ方向を決定できませんでした。

 わたしが飛んだのは、王城の方向……本当は街の方に飛びたかったのに、不運でした。


「はにゃ~! 止まらないんですけど~!?」


 叫びながら宙を舞う12歳の幼女。

 そんなわたしを見上げながら、騎士さんたちは大声を上げています。


「に、逃げたぞ! しかも城の方に向かってるぞ!!」


「緊急事態だ! 放火魔が城の内部に侵入……すべての騎士に通達せよ! 一刻も早く捕らえるんだっ」


 どうやら、事態は更に悪化しているようです――


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