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第十五話 マチコちゃん、喧嘩を買う



 わたしがファイヤを売ろうと声を上げた瞬間でした。


「おい、クソガキ。誰に断って商売してるんだ?」


 そう言って近づいてきたのは、モヒカン頭のいかにも『俺は闇だぜ!』主張している冒険者さんでした。


「営業権なんてものが存在するのですか? 闇なのに?」


 私は首を傾げます。無法しか取柄のない闇ギルドのくせに、ルールがあるなんてびっくりです。城門の近くで商売しても騎士さんたちは見逃してくれたのに……もしかして闇ギルドの冒険者さんは心が狭いのでしょうか。


「闇だからこそ、秩序が必要だろ? 俺たち『アリババ盗賊団』がわざわざ取り締まってやってんだよ。いいから、商売したいなら金を払えよ」


 そのモヒカンさんのお言葉に、周囲の冒険者さんたちが失笑していました。


「おいおい、勝手に取り締まってんじゃねぇよ」


「弱い者にだけ強気じゃねぇか」


「ほどほどにしろよ」


 などなど。どうやらモヒカンさんは勝手に取り締まっているだけらしいので、恐らくはわたしたちに難癖つけているだけみたいです。


「うるせーよ、外野は黙ってろ……こいつらは俺の獲物だ」


 モヒカンさんはニヤニヤとこちらを眺める周囲の冒険者さんを黙らせた後、再びわたしたちに意識を戻しました。


「文句があるなら金を払うか、力で解決してみせろ……ま、できるもんならな!」


 あ、この人、わたしたちが幼女だからって完璧に舐めてますね。

 まぁ、分からなくもありません。わたしとエラちゃんはどこからどう見ても可憐でか弱い幼女……搾取するにはもってこいの弱者に見えるのでしょう。


「ま、ままままマチコっ! 帰りましょう? 怖い人たちがいっぱいよ……帰って温かいお布団で寝ましょう!」


 エラちゃんはかなりびびっています。わたしの背中に隠れるようにしがみついていました。やれやれ、小心者ですね。


 こんないかにも小者臭い悪党なんて、まったく怖くありませんよ。


「エラちゃん、離してください。わたしが交渉術というものを教えてあげましょう」


「ふぇ?」


 私の言葉にきょとんとするエラちゃん。そんな彼女を優しく振りほどいてから、わたしはトコトコとモヒカンさんに歩み寄りました。


「ん? どうしたクソガキ? 金を払う気になったのか?」


 余裕そうにニヤニヤと笑うモヒカンさん。


「えへへ~」


 わたしはニコニコと明るい笑顔を浮かべた直後――


「オラァ!!」


 ――モヒカンさんの急所を、これでもかというくらい思いっきり蹴り上げてやりました。


「オゴォッ!?」


 不意打ちだったのでしょう。まさか、こんなにか弱い幼女が先制攻撃するとは思わなかったのだと思います。モヒカンさんはクリティカルヒットされて悶絶しました。


 前かがみになってうずくまるモヒカンさん。わたしは彼のモヒカンを掴みあげて、その口の中にまだ開かれていない状態の巻物スクロールを突っ込んでやりました。


 筒状の巻物スクロールを咥え込んだモヒカンさんは、涙目になってこちらを見ています。

 そんな彼に、わたしは再びニコニコと笑いかけてあげました。


「あなたは今、爆弾を咥えています。わたしが呪文を発動すると、爆発してあなたの体が粉々になるでしょう。発言には気を付けることです……それでは、交渉を始めましょうか。わたしは、この場所での営業権がほしいのですが」


 これこそ、マチコ流交渉術――『脅迫』です。

 可愛いことで有名なマチコちゃんは、実は負けず嫌いなので、勝つためには汚い手を当たり前のように使うのです。


 今回、モヒカンさんが明らかにこちらを舐めていたので、思わず苛立ってしまいました。

 まぁいいでしょう。ここは闇ギルド……力こそ全ての、無法な世界。弱肉強食のこの場において、力で物事を語ることが最も手っ取り早いのですから――



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