第十四話 マチコちゃん、闇ギルド冒険者に目をつけられる
物乞いのおっちゃんに案内してもらって、わたしたちは闇ギルドに辿り着くことができました。
(ここが闇ギルドなのでしょうか……)
見た目は、大きな酒場のような場所に見えます。ところどころ破損している場所がありますが、通りすがる人々はまったく気にしていないようでした。破壊が日常茶飯事ということなのでしょうか。
見た目、とても柄が悪い人ばかりですし、ここは間違いなく闇ギルドなのでしょう。
「ほら、案内したからもういいか?」
「はい。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げると、物乞いのおっちゃんは卑しい笑顔を浮かべます。
「礼は要らない。それよりも、金をくれよ。おっちゃん、しっかり案内したんだから、報酬が欲しいねぇ」
「……こんな小さな子供からお金をとるとか正気ですか? あなたの人生はそんなに落ちぶれたのですか?」
悪い顔をする大人ですね。わたしはあえて子供らしくキョトンとしながら言い返してやりました。
「働きもしない。子供からお金をたかる……わたしがあなたなら、プライドが邪魔してそんなことできませんよ。物乞いのおっちゃんは、心まで物乞いになっちゃってるんですね」
「わ、分かったよ! そんなにおっちゃんの心を抉らないでくれよ……」
「だいたい、こんなに可愛い幼女と会話できたこと自体が報酬みたいなものじゃないですか。本来ならこっちがお金をもらいたいくらいです」
「嬢ちゃん、自分に自信を持ちすぎてるぞ……ふてぶてしいねぇ」
物乞いのおっちゃんは観念したように苦笑していました。
「くそっ。やっぱり働かないとダメかねぇ。でも、おっちゃんはもう手遅れなような……」
「何事も、物事を始めるのに『遅い』ということはありませんよ――と、子供に言われて悔しいのなら、立派に生きてくださいね」
「嬢ちゃんは厳しいねぇ」
「わたしは優しいですけど?」
首を傾げると、おっちゃんは呆れたように肩をすくめながら歩き去って行きました。
もう二度と会わないことを願います。仮に出会うとしても、今度はスラムではない場所がいいですね。
さて、と。
わたしたちは闇ギルドに到着したわけけですが。
「エラちゃん。いつまで後ろにくっついてるんですか? 物乞いのおっちゃんはもういませんよ」
商売の前に、さっきから物乞いのおっちゃんを怖がっているエラちゃんに声をかけます。彼女は未だにびくびくしていました。
「だ、だって……みんながあたしたちを見てるものっ」
物乞いのおっちゃんの次は、闇ギルドの冒険者たちを怖がっているみたいです。
「そりゃあ、こんなに可愛い女の子がいたら、見るに決まってるじゃないですか」
視線を集めるのは美女のたしなみ。わたしはとても可愛いので、注目を浴びるのには慣れています。
「マチコはどうしてそんなに自分に自信を持てるの……?」
「事実だからに決まってるじゃないですか」
「で、でも、あんたは子供じゃない? どんなに可愛くても、視線を集めるのは無理と思わないの?」
「思いませんよ。どうせ男なんてみんなロリコンですから」
「そんなわけないと思うけど!?」
エラちゃんがびっくりしていますが、いつまでも会話しているわけにもいきません。
ここらで話を打ち切って、わたしは商売を始めることにしました。
「さて、と……ファイヤ、ファイヤは要りませんかー?」
と、一言声を上げた瞬間のことです。
「おい、クソガキ。誰に断って商売してるんだ?」
速攻で、わたしは闇ギルドの冒険者さんに目をつけられてしまうのでした――