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確かな力と成る


 3月28日、月曜日の朝。出勤する美咲さんを見送る。

 隠す必要が無くなったので昨日の朝の鍛練にも参加したが、美咲さんに鞠花達は勝てなかった。強い。

 研究者側に行っているが、流石は単独攻略者。鞠花もだが。恐ろしい母娘だ。俺の前では可愛いがな。


 そんな美咲さんだが、妊娠するまでは毎週土日は来る事に。島の家の風呂が目当てだろうな。今朝も入っていたから。その気持ちは判るが、油断はしないで欲しいと思う。



「晶、今日はどうするの?」

「それなんだけどな、Eランクの数は変わらず、残りは四基。俺が単独で動けば今日中に全ての位置を把握出来る筈だから、一気に見付けて、明日から連続で攻略しようと思う」

「……そうね。その方が効率的ね」

「だから、今日は鞠花達には買い出しを頼みたい」

「人数が増えて一気に消費したものね……判ったわ」



 そう話し、俺のカードを渡す──事は出来無いから、鞠花に支払いは頼む。低ランクの魔石の一部を渡し、現金化した分で買い物はして貰う。

 「その位なら私が出すわよ?」と言う鞠花だが、其処は俺の男として、夫としてのプライド。家庭用品(・・・・)だからな。




 これと言った問題も無く、四基のダンジョンを発見し、翌日から攻略を始めた。今回は四連続で、ぶっ通しで挑む。

 考え難いが、無いとは言えない為、不眠不休での攻略という状況を体験しておく為に。

 まあ、これは主に瑞穂と澄乃の為で、俺と鞠花は再確認で。単独攻略者だと近い経験はしているからな。


 そんな訳で3月30日の明け方。島の家に戻って来た途端、瑞穂と澄乃は落ちた。初めての事だったから無理も無い事だ。二人を綺麗して着替えさせたらベッドに寝かせた。

 その後は鞠花と振り返りながらイチャイチャした。俺の事を堂々と独占出来るから鞠花が甘えてきたし、貪欲だった。


 一休みしたら、Dランクのダンジョンを探して世界を巡る。明日からは此方等も残り四基のDランクを攻略予定だ。




 4月2日。土曜日の今日は美咲さんが来る──というか既に来ている。まだ正午を回った所ですよ? いえ、文句ではなく仕事の方が大丈夫か気になっただけです。問題無しと。了解。それなら何も言いません。


 それも有って、四基のDランクの攻略を二日半で行うという強行軍を実行したのだが……流石に鞠花も堪えたらしい。

 結果、土曜日は美咲さんが俺を独占。イチャイチャする。

 しかし、歳上は歳上だが、美咲さんが歳上の女性から歳上の御姉さん位にまで近付いた様に感じる。

 …………俺、生気を吸われたりしてないよな?




 4月4日。美咲さんを見送ってから、島の家に移動し、入手していた勲章を全て使用した。


 鞠花はダンジョン関連限定の鑑定スキル【品定】に、制限が一対象一点ではあるが強力な【封印】。アビリティは無属性は対象外だが有用な【属性強化】、同時多撃や連撃に強化補正が入り、継続でも効果が上昇する【多弾連撃】、自身の魔力量が100%に近い程に、魔法の威力を増加させる【魔充快天】。そして、ジョブは【魔砲士】。


 瑞穂は使用すれば必ず防御出来るスキル【守護】に、自身の理性を飛ばして強くなる【狂化】、使用すると一定時間不動になるが魔力と心身を回復出来る【瞑想】。アビリティは誰かを守る程に守備能力を上昇する【献身堅護】、格上の存在と戦う際には強化補正が生じる【下剋上士】、如何なる状況でも己を見失わなくなる【唯我己在】。そして、ジョブは【魔剣士】。


 澄乃は鞠花達の【探知】とは似て非なる性質の魔力を捉えるスキル【感知】に、文字通りの効果である【狙撃】【必中】。アビリティは距離が有る程に強化補正が生じる【遠撃強化】、一撃・一点に収束される程に強化補正が生じる【一集収束】、時間制限は有るが一撃死が続く程に強化される【一撃連倒】。そして、ジョブは【魔弓士】。


 鞠花は完全に砲台役だ。しかも、殲滅型の。怖いな。

 瑞穂は【狂化】のデメリットを【唯我己在】が打ち消す為、剣鬼修羅に。此方等も怖い。

 澄乃は完全に不吉な殺し屋だな。当然、怖い。

 うん、俺の妻達だけで世界が獲れるわ。



「ねえ、この【封印】って貴男にも効くの?」

「どうだろうな……試せば判るだろうけど、遣るのなら、指定対象は【不穢清常】か天刻の星紋になるからな?」

「あー……成る程ね。それを先ずは無効化しないといけないのだから実質的には貴男には大した効果は無いわね」

「そういう事だな。それよりも瑞穂の【唯我己在】を封印した状態で【狂化】を試してみたい所だ」

「個人的には遣りたくはないが……何故だ?」

「万が一の時、どういう感じが知っておいた方が対応し易い。似た様な効果の攻撃や罠が無いとも限らないからな」

「そうね。備えて置く方が確実だわ」

「判った。だが、どうなるか判らないからな?」

「心配するな。いざとなれば隔離して効果切れを待つから」

「……狂化中に返り討ち?」

「ちょっとヤってみたいかもな」



 澄乃の一言に危険な妄想が膨らんだ。

 尚、それがフラグだとは、その時には気付かないものだ。




 4月5日。明璃さんと凜さんが目の前に居る。俺の部屋の、ベッドの上で。顔を赤くしながらも瞳を潤ませて。


 何故、こんな状況になっているのか。

 昨日、スキルやアビリティ、ジョブの検証の後、確認の為に示数の答晶を使ってみたのだが、Eランク以上のダンジョンは新たに出現はしていなかった。

 その時、澄乃が「……増加した枠が未使用だからとか?」と言った事で鞠花が動いた。即座に。

 明璃さんに電話して予定を確認し、同様に凜さんにも。

 ──とまあ、こうして現状に至った訳だ。笑うしかない。

 まだ朝の8時前なんですけどね。早過ぎです。


 因みに、これまでと違って二人が一緒に居るのは、凜さんが鞠花に話を持ち掛けられた時点で「私達の場合、その時も二人一緒なのかもしれないわね」と思っていたから。

 はい、こっそり明璃さんが気不味そうに視線を逸らしましたけど触れません。俺も共犯なので。未遂ですが。


 そんな訳でスイッチの入った明璃さんがキスしてきたので、抱き寄せながら服の中に手を滑り込ませる。服越しでも判る程火照った身体。息継ぎをする様に一瞬だけ離れた際の眼差しで言葉にしなくても伝わる。「もう準備(・・)出来てるから」と。

 それでも念の為にと指先を潜り込ませてみれば、しっかりと濡れている。

 ベッドに押し倒せば自ら服を脱ぎ、「ねぇ、早くぅ……」と両手を広げて迎え入れる様に誘う。

 普段は三つ編みにしている赤茶色の髪が白いシーツに広がり花が咲いた様に見える。潤んだ深紅の瞳は妖しく、映り込んだ俺は宛ら魅入られた獲物だろうか。

 この状況で冷静な男は異常だと個人的には思う。




 明璃さんとの初めてを終えて我に返る(一息吐く)

 思い出した様に顔を向けると凜さんが自分でシていた。

 ばっちり、目が合う。

 汗ばんだ額や頬に張り付き、唇に挟まれた黒に近い緑の髪が妙に色っぽいが、藍色の瞳が俺を映している。

 見られて恥ずかしい、という感情は其処には無い。そうなら良かったのに。

 「私の事を忘れて二人で楽しんでいたわよね?」と御怒り。はい、すっかり忘れていました。はい、勿論、二連戦だろうが頑張らせて頂きます。






「うわぁぁぁ…………この御風呂ヤバぁぁ…………」

「悔しいけど、表現出来る言葉が思い付かないわ……」



 島の家の風呂に入り、そう感想を言う二人。その様子を見て鞠花達が「そうよね!」とテンション高く話し掛ける。

 鞠花は俺よりも二人とは付き合いが長い為、その距離感でも不思議ではないが、瑞穂と澄乃も昔馴染みの先輩後輩みたいな気安い関係の様に見える。

 ……まあ、あれだけ一緒になって淫らに乱れていれば、仲が良くならない訳は無いか。


 凜さんは凄かった。普段はクールで委員長的な感じなのに、貪欲だし、エロいし、ドSだった。俺に対してはMの方が強く出ていたけど、明璃さんに対しては……うん、普段の力関係が完全に逆転していた。

 まあ、ある意味では、アレが二人の根幹的な関係だろうな。明璃さん、かなりの甘えん坊だったから。瑞穂もだけど、普段好戦的な方が、そういった傾向が強いのか? まあ、二人の事だけしか知らないから何とも言えないが。


 それにしても…………眼福──な筈だが、何故か欲情しない辺りは……これが賢者タイムか……いや、違ったな。凜さんに触れられただけで臨戦態勢に入った。だが、此処では……え? ああ、洗ってくれる……あの、何故、胸に泡を?






「────は?」



 風呂上がり、全員で遅めの昼食を準備している時、何と無く二人の刻印を確認しようとして驚いた。



「どうしたの?」

「あー……明璃さんと凜さん、固有魔法が発現してるな」

「──え? ──熱っ!?」

「こんな事、有るものな……初めての事なのね」



 味見中だった明璃さんが一瞬、意識が逸れて熱さに驚くが、凜さんは冷静に鞠花達を見て──驚いている様子で察した。

 鞠花達は元々固有魔法の発現者だからな。変化は無い。

 急に発現した理由は一つしかない。刻印だ。

 俺との関係だけなら美咲さんも発現している筈だからだ。

 尚、二人も美咲さんとの事は知っている。だから直ぐに事の要因にも気付く。



「それで、私達の固有魔法って?」

「明璃さんが雷属性の【迅雷閃紅(ローゼンボルト)】で、凜さんが特殊系の爆発魔法【裂華繚乱(バーストロンド)】」

「雷属性!? 嘘っ!? 本気で嬉しいっ!」

「爆発魔法……前例は有ったかしら?」

「私の知る限りは無かったとは思いますけど……」

「けど?」

「晶が似た様な事を遣っているので」

「…………貴男って本当に規格外ね」

「ははは……」



 俺の固有魔法も大概だからなぁ……そういう風に使ってるし考えているからだが。改めて悪目立ちしたくないと思う。

 まあ、【魔素操作】が有って出来る事だけど。



「特殊系なのは判るけれど、火属性なのかしら?」

「ああいえ、無属性です。火属性や風属性に起因する類いとは違って、純粋な爆発──爆裂の魔法みたいですから」

「無属性……実際に使ってみないと判らないわね」

「はいはい! 賛成っ!!」

「でも、その前に御飯にしましょうか」



 新しい玩具を得た子供みたいな明璃さんの勢いを軽く往なし本線に復帰する凜さん。慣れてるな~。

 「文字通りに慣れた(・・・)のよ」と視線が物語る。

 まあ、大変でしょうね。退屈はしないでしょうけど。


 鞠花達も興味津々だからなのか、あっと言う間に完成して、頂きます。うん、美味しい。



「鞠花さんと瑞穂さんは発現者という事は知っているけれど、澄乃さんも元々?」

「……はい、私もです」

「晶が二人を選んだ理由が固有魔法の発現者だから、こういう事が起きるとは思わなかったわ」

「刻印の影響なら、あと二人は発現する可能性が有るのか」

「誰か良さそうな人居たかな?」

「……難しいわね。自分で言うのも何だけれど、私達の代から上の十年間程は固有魔法の発現者が少ない世代だから。居ても刻印の対象外だと思うし、実力的にも平均か平均以下よ」

「そうなると探すのであれば下ね」

「同世代じゃないの?」

()に拘っての二人ですから」

「そういう事ね」

「それで、何歳までが対象だ?」

「十二歳以上だったら魔力持ちは結婚出来るわ」

「それなら一人、思い当たる者が居るな」

「あ、もしかして、彼女(・・)?」

「明璃さんも御存知ですか?」

此方(・・)の界隈じゃ有名な娘だからね」

「先ずは情報収集をして────」



 …………気付けば既に次の面子探しが始まっている件。

 いやまあ、理由は判る。鞠花達も三人揃ってから魔力上げを兼ねてダンジョン攻略をしたから。

 しかし、今朝二人が加わったばかりなのに……しかも年下。一応、バランスとしては良いのか。

 合法とは言え、中学生……一番下で小学生か。

 止められる気はしないから覚悟だけはしておくか。



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