心血を伴って
3月25日。昨日、桜島で見付けたEランクのダンジョンに朝の日課後に向かい、特に問題も無く攻略。
次を探すと北北東──北海道の方角を示した為、一旦、家に戻って確かめたが、北海道方面。俺が単独で向かい、択捉島の神威岳で発見。鞠花達を連れて行き、攻略した。
挑天の勲章が3つとなったので鞠花達が使ってアビリティを得る事にした。
鞠花が得たのは【多重魔奏】という俺の【並列考動】の魔法特化版。魔法に関しての強化補正も有るのも良い所だな。
瑞穂が得たのは【剣渾一擢】という刀剣類を用いた戦闘時に自身の能力に強化補正が生じるというもの。だが、その真価は副次効果の方で、使用する刀剣類の損耗を軽減してくれる事。瑞穂にとっては非常に価値が有る効果だ。
澄乃が得たのは【微侭薄明】という……まあ、簡単に言えば存在感を薄れさせる効果を更に高めるもの。普通なら微妙だが澄乃に関して言えば、鬼に金棒。
それは澄乃の固有魔法【歪曲偏光】に有る。
【歪曲偏光】は所謂、透明化・同化擬態の様な効果なのだが対象指定と範囲指定が出来る優秀さで、気配遮断や消音・消臭効果も備えている──が、完璧にではない。それを高める為、澄乃には最高のアビリティだと言える。
俺の時とは少し違うが、やはり、最初のアビリティも各々を反映している様に思う。
だからって、澄乃の魔法を使って外でシようとか考えない。それは実験ではなく、ただの性癖だからな?
翌日、26日。ある意味、今日は重要な一日だ。色々と。
取り敢えず、昨日調べていたEランクのダンジョンを探しに西──大陸方面に向かった。
見付けた場所はヒマラヤ山脈。しかも、雪に蓋をされた崖の途中という難所。見付けられる訳が無い。
鞠花達を連れて挑んだ。氷のダンジョン。大丈夫な筈なのに三人が寒さを理由に抱き付いてきた。仕方が無いか。
攻略後、序に登頂して記念撮影。この写真を見ながら思い出話をするのは、いつになるのか。
夜──ではなく、3時過ぎには御義母さんが家に来られた。正直、ちょっと焦った。別にナニかをしていた訳ではないが、本の少し前までヒマラヤに居たから多少は冷えたので島の家の方で風呂に入ってイチャついていたので。シてはしない。
「それじゃあ、晶くん、宜しく御願いね」
「え~と……一応、最終確認をさせて下さい。本当に本気で、俺で良いんですか?」
「勿論よ。以前、鞠花にも話した事けれど、貴男を見た瞬間、女としての本能が疼いたの。この男の子供が欲しいって」
そう言いながら近付き、俺を見詰める御義母さん。仕事から直接来たのでスーツ姿なのだが──とてもよく似合っている。古い──この時代な珍しくもない女性教師の様なイメージで、御義母さん自身の知的な印象と、一児の母親の母性もも有り、尚更に填まり役に見える。いや、役でも何でもないが。
鞠花達よりも豊かな双峰が俺の胸元で挟まれ、押し潰される感触は凶器でしかない。その上、御互いの吐息を感じ合う程の距離から潤んだ上目遣いをされたら──俺は一殺だ。
唇を重ねる瞬間には自分の両手は別の意思を持ったかの様に御義母さんの身体を這っていた。
「晶くんて、聞いていた以上に凄いわね」
「御義母さんこそ、凄く素敵ですよ」
「ふふっ、有難う」
俺の左腕を枕にしながら直ぐにでも唇が触れられる距離から見詰める御義母さんが嬉しそうに微笑む。
御世辞ではなく、本当に凄いと思う。鞠花達とは違い、正に子供を成そうとする女性の──雌の本能から来る妖艶さには、こうしている間も刺激されているのが判る。
熱と勢いに任せた第一ラウンドが終わり、小休止。
御義母さんを気遣っての事だが、同時に俺が取り戻した理性でもある。我ながら獣だったと思う。
それはそれとして、鞠花達の事だが。
まだ予定時間ではない為、鞠花達も不参加。いきなり三人が参戦するのではなく、先ずは鞠花が。その後、瑞穂達が参戦。可笑しい気もするが「平等にね?」と言われたら仕方が無い。よく判らないが、頷く事にした。
──で、御義母さんだが……本当に高校生にもなる娘が居る女性とは思えない。思えないから、途中からは彼是考えるのを止めた自分が居る。面倒になった訳ではなく、夢中になって。人妻という事を忘れてしまう程にだ。
「でも──まだ御義母さんなのね?」
「それは…………」
「それはそれで義理の母子としての背徳感が有っていいけど、私では貴男の女には成れないのかしら?」
「……それは狡い一言です」
「御免なさい。でもね、私も本気なのよ?」
そう言いながら苦笑する御義母さん。しかし、その眼差しは真剣そのもので、瞳の奥に宿る感情は──切望。
口先だけなら簡単だ。だが、そうではない。それが判るから俺としても本当に難しい。難しい一線だ。
……いや、こうして手を出し、子作りをしているのだから、一線も何も無いのだが。
それは、ある意味では俺の身勝手な線引きだろうな。だから御義母さんも俺が拒めば直ぐに割り切る筈だ。その辺りは歳上という事になるのだが……甘えてはいけないな。
「………………それはそれ、これはこれ、という事で?」
「ええ。あの人の妻である事には変わりはないし、鞠花の母親という事も同じよ。だけど、貴男の女に成りたいの」
「……判った。でも、覚悟はしろよ?」
「──っ! ええ、勿論」
「魔力持ちなんだ。五人は産んで貰うからな、美咲」
「──晶くんっ!!」
御義母さん──美咲さんの気持ちに本気で応える。
それを喜び、唇を重ねてくる美咲さん。休憩は終わりの様で自ら俺の上に跨がる。目がマジだ……え~と……御手柔らかに御願いし……無理? そうですか。頑張ります!
「嗚呼ぁぁぁ~~~~……なぁにぃ……この御湯ぅぅ…………凄過ぎぃぃぃ……」
そう言って蕩けているのは美咲さん。鞠花が言っていた通り既に虜になっている様だ。ちょっとドヤりたくなる。
予定時間を過ぎ、それでも真っ最中だった所に鞠花が参戦。そのまま鞠花が戻って来ないから様子を見に来た瑞穂達も連れ込む形で夕食も忘れて励んだ。我ながら呆れる絶倫さだ。
一寝入りした後、一周し、夕食前に御風呂に、という事で、島の家の方に転移して来た。
勿論、準備して有った夕食は収納して運んで来ているから、此方等で食べる予定だ。
明日は日曜日という事で丸一日を当てる予定だからな。
「ブクブクブクブクゥゥ……」
それはそれとして。
湯に鼻から下を沈め泡を立てているでいるのが、気落ちする鞠花。珍しい姿だ。普段は纏めている髪が御湯に広がっている事も有って悪霊の様だ。可愛い悪霊だな。
だが、そうなるのも無理も無い事だろう。
別に張り合っている訳ではないのだが、正妻としての自負と自信が少なからず有った様で、美咲さん──母親の手練手管の前に敗れた事がショックだったらしい。
その原因でもある俺が言うのも何だが、仕方が無い事だぞ? 経験値が違うし、場数も違うからな。
男を悦ばせる──扱う術というのは経験則に伴う部分が多いだろうからな。焦る必要は無い。鞠花は十分に魅力的だ。
……証拠? コレでも判らないか?
…………判らないから実証して欲しい? 風呂場で遣るのは避けたいが……一回だけだからな?
まあ、鞠花と一回するだけで終わる訳が無い。頑張った。
鞠花の機嫌が直ったから良しとしよう。
夕食も食べ終え、リビングでまったり。美咲さんも料理上手だった事には少し驚いたが、ダンジョン関連の仕事をしている一族だから可笑しな事ではないと納得。寧ろ、必須技能の一つだろうからな。出来て当然の様だ。
「晶くん、私、此処に住みたいわ」
「駄目です」
「おーねーがーいーっ!」
「駄目な物は駄目です。美咲さんを俺の妻の一人として信じて此処に連れて来たんですから」
「そう言われちゃうと流石に我が儘は言えないわねぇ……」
思わず「我が儘という自覚が有るなら言わないで下さい」と言いたくはなるが飲み込む。それも彼女の俺への甘えと思えば赦せてしまうから。
鞠花、妬かない。鞠花は鞠花。愛しているから。
「まあ、もっと凄い秘密を抱えちゃった訳だけれど……」
そう言いながら自分の下腹部を撫でる美咲さん。それが示す事は子作りの件ではない。俺との行為で魔力が増加したという驚愕の事実の方だ。
気付いたのは寝て起きてからだが。
美咲さんがチラッと鞠花を見る。鞠花は俺に抱き付いてくるけれど、それは今遣るリアクションじゃない。
「通りで鞠花の魔力が増えていた訳だわ」と言う様な視線。まあ、御邪魔した時には気付いてはいたのだろう。俺の魔力を探らない理由は無いから、その流れで。
勿論、気付いただけ。俺が関わっているとは仮説でも出来る要素は無かった筈。気にはなっていても何の確証も無いのなら仮説すら思い浮かばないだろうからな。
「まだ魔力の測定技術は確立されてはいませんから」
「そうよね~、私達しか判ってはいないでしょうから……」
そう言いながら瑞穂達を見て──思案顔。
あー……やっぱり、母娘だな。似ているから察しが付く。
「ねえ、晶くん」
「種付けは御断りします」
「むぅ……まあ、鞠花が既に話しているでしょうけどね」
「瑞穂達の同意は貰っています」
「──となると、一番の問題が一番の強敵な訳ね」
「もっと自分の価値を理解して欲しいわ」
「理解させられたから嫌なんだよ」とは言わない。言ったら其処から切り込まれる。この母娘は強かで巧みだ。油断したら一気に押し込まれる。応じない事が一番の安全策だ。
──という俺の考えを察し、早々に切り替える。そういった所もそっくりだな。
「だって、母娘だもの」
そう言いながら美咲さんが近付いてきてキスをしたら、俺の前に屈み込み、ズボンに手を掛け、脱がしてゆく。一方で唇を鞠花が塞ぎ、貪ってくる。左手を瑞穂が取ると自分の胸へと、右手は澄乃が自分の下腹部へと導く。
どうやら、ベッドまでは待てないらしい。
深夜、目が覚めたので少し夜風に辺りに外へ出る。
自宅の方も周囲に人が居ないから静かで夜空も綺麗なのだが海と孤島という環境は更に際立たせる様に思う。
「起こしましたか?」
「ううん、私も目が覚めたの」
そう言って傍に来た美咲さんの腰に手を回し、抱き寄せる。御互いに何も言わなくても自然とキスをする。ずっと、二人がこうしているかの様に。
子作りだけの関係──だった筈が、そうではなくなった。
御互いに男女、夫婦、恋人として認識している。鞠花達も。
「……ふふっ、ちょっと恥ずかしくなるわね」
「あれだけ乱れていたのに?」
「アレは男を誘う為だもの。見られてこそよ」
「確かに……思い出しただけでも滾りますから」
「……本当、絶倫ね」
夜風が心地好い火照りの中、夜空を背景に従えた美咲さんが俺の上で踊る。
でも、それは先程までの姿とは違い、何処か儚気にも見え、気付いた時には抱き締めていた。
ただ、それはそれ、求める昂りは一層激しくなっていた。
夜風の所為か、火照りは次第に落ち着いてゆく。
同時に、非現実的な思考が、反動の様に現実的になる。
我に返る、というべきなのか。
今の自分達の姿を客観的に見て、後悔ではないが逡巡が俺を映す瞳に浮かんでいる。
「……晶くんは迷惑じゃない?」
「迷惑な訳有るか。俺が美咲を愛しているんだ」
「──っ! …………私、本当の本当に本気になるわよ?」
「そのつもりで応えたんだけどな?」
「鞠花が相手でも譲らないかもよ?」
「それは鞠花もだろうけどな」
「うん、譲れないわ。本気だから。だから……ね?」
吹っ切れ、素直になり、美咲は月と星の光の中で美しく舞う。




