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軌跡を描き


 一人よりも二人。

 協力する事の、助け合う事の、代名詞だと言える様な言葉なのだが、状況によっては意味が変わると思い知らされる。

 ダンジョンやモンスターよりも妻達の方が手強いなんて思う日が来ようとは。人生判らないものだ。ああ、はい、ちゃんと平等にだな。判っている。


 朝から肉食系の二人と貪り合って、仕度と食事を済ませたら朝練の為に島に転移する。

 瑞穂の反応を見て、鞠花が「そうなるわよね」と自分の事を思い出しながら頷いている。

 だが、その後まで似ていなくてもいいんだが?



「……この身体強化というのは凄い技術だな」

「そうでしょう? もっと自慢して偉そうにしても誰も文句を言えないと思うのよ」

「鞠花達が知っていてくれれば俺は十分だ」

「私が自慢して惚気たいのよ!」

「理不尽な要求だな」

「……晶、昨日は使っていたのか?」

「手合わせの時なら使ってはいない。魔法は無しの純粋な技術と身体能力だけだ」

「…………」

「ね? ムラムラするわよね?」

「──っ!?」

「私も知れば知る程、我慢が出来無くなるもの」

「……その、淫らな女でも良いのだろうか?」

「それこそ今更だと思うが……魅力的だからこそ、俺も求めるんだ。だから、それで良いんだよ」



 そう言えば嬉しそうに笑う瑞穂。

 だが、今は自重してくれ。朝練が捗らないから。せめて、終わった後の風呂でにしような。


 鞠花とは体術中心、瑞穂とは実戦的な総合武術。魔法関係は言うまでも無い。

 俺とだけでなく、鞠花と瑞穂の手合わせを見て、色々と気付く事も有る。


 改めて鞠花の万能さには感心する。だが、瑞穂の様な一点特化タイプが相手だと初見だと苦戦する。しかし、数を重ねれば学習し、対応し、その勝率を確実に上げていく。

 仕留め切れなければ敗北を糧に必ず成長し、次は差を縮め、勝機を見出だす。生存すればこそだが、それが出来るから活かされる。末恐ろしいな。


 瑞穂は逆で、鞠花みたいな万能タイプが相手だと実力差が大きくないと勝率が下がってしまう。

 仕方が無いが、まだ一点特化だけで貫けるだけの実力にまでは届いてはいない。

 しかし、俺達との出逢いで可能性が拡がり、更に高みへと至れる道が本人にも見えている筈だ。

 伸び代という点では、鞠花よりも瑞穂だな。



「……瑞穂、動き自体は左右差は小さいみたいだが基本的に構え方が常に右主体なのは誘い(・・)の為か?」

「……言われてみれば、確かにそうね」

「……気付かなかったな」



 どうやら、無意識だったみたいだな。

 動き始めれば、戦いに集中すれば、左右を問わず使えているのは積み重ねた鍛練の賜物だが、それを構えや始動時には活かせてはいないから勿体無い。それが出来る様になるだけで大きな違いになる。



「所謂、逆構えの者を相手にするのは、それだけで違和感を感じ易いし、慣れていなければ尚更にだ。些細な事だが、地味に利を生んでくれる。だから、覚えて損する事は無い」



 そう言って、左主体に構えて対峙して見せれば、瑞穂は構えてみて、直ぐに納得する。

 実際に動かなくても想像(イメージ)でも十分。それだけ高い実力が有ればこそだがな。



「誰かに、そう指導されていたの?」

「いや、そんな事は無い……筈だが……」

「瑞穂に限って言えば、最初の構えや始動よりも、動き始めてしまえば臨機応変に戦える。それ故に、瑞穂自身も周囲も其処に意識が行かなかっただけで他意や意図が有った訳ではないだろう」

「成る程ね、強いという事は、それだけ結果を出し続けている訳だが、余計な事も言わないし、安易に言えなくなるの訳ね」

「……確かに、昔とは違って指導される事は無いし教えを請う事も無くなったな……」

「強者が故の孤独ね」

「孤高と言って欲しいがな」



 そう言って笑う二人に「いや、ボッチだろ」とは言えなかった。俺は空気を読めるからな。


 試しに作ってみた装備品[鉄の剣]を取り出し、瑞穂に手渡す。

 手にする事は勿論、初めて目にする本物の装備品という事で瑞穂が感動と緊張で震えている。

 それを見て羨ましそうにする鞠花。

 ……ああ、そうか。鞠花も使用可能な状態の物は見た事も無いし、触れた事も無いか。鞠花、これ。そう、[魔法の杖]という装備品。その名前通りに魔法強化効果を備えている。杖型の装備品としては基本的な物になる。


 因みに、御義父さんが発見した壊れた装備品とは実は鉄の剣だったりする。刀剣型の装備品としては基本的な物。名前通りに鉄が主な素材だが、其処に特殊な技術が用いられている事は言うまでも無い。その為、装備品は作れず、魔導器となっている。



「これ、貰っても良いのかしら?」

「構わないが、普段使いはするなよ? 入手手段や経緯の説明が出来無いからな」

「ええ、勿論よ」

「わ、私も良いのか?」

「勿論だ。装備品の方が耐えられるだろうしな」

「有難うっ、晶!」



 そう言って抱き付いてくる瑞穂を抱き締め返す。実力を発揮し切れない。そのもどかしさと苦しみは本当の意味では他者には理解し切れないだろう。

 だから安易な言葉は口にはしない。その代わりに抱き締めて伝える。これからは違うのだと。


 ──という所に鞠花も抱き付いてくる。嫉妬する気持ちは判らないでもないが、空気を読まないか?



「何と無く疎外感を感じたから」



 そう少し拗ねた様に言う鞠花を見て、目尻に涙を浮かべた瑞穂は可笑しそうに笑う。

 俺達も釣られて笑い、大丈夫だろうと感じる。



「それと、序にコレも渡しておく」

「これは?」

「[収納の腰袋]という魔道具(アイテム)だ」

「これも晶が造ったのか?」

「そうだ」

「名前からすると、収納の小袋や鞄と同類?」

「ああ、それを造っても良かったんだが、見た目を知られているから目立つからな。収納量は小袋より少ないが、普段から身に付けておけるのが利点だ」



 そう話ながら、二人は腰袋(ポシェット)を身に付ける。

 チャックを開け、その中に杖と剣を収納し、取り出して感動している。

 ……俺には無かった無邪気さ・素朴さだな。



「魔道具も発見されている数は僅かだから、実物を手にするのは私も初めてだけれど不思議な物ね」

「鞠花でも初めてなのか?」

「ええ、これまでに見付かっている魔道具は小袋が四つ、鞄が一つで、国内には各々一つずつだけで、入手者が研究には慎重だから」

「まあ、そうなるのも仕方が無いだろうな。発見数自体が少ないから、万が一の事を考えれば慎重にもなるだろう。再度入手出来る保証が無いしな」

「それもそうか」



 そう話しながら、ポーション類も幾つか渡す。

 日常的に使う事は先ず無いだろうけどな。用心と備えはしておいて損は無いだろう。


 一通りの説明を終えたら本題に戻る。

 瑞穂の固有魔法を実際に見せて貰う。

 鉄の剣を構えて深呼吸し、魔法を発現させる。


 剣全体が淡い光を纏い、次いで剣身が燃える様に火が生まれて、包み込む様にして安定する。

 使用者以外の触れた存在は容赦無く燃やすのだが内側の剣は熱を帯びる事も無い。

 俺が言うのも何だが、固有魔法は不思議な物だ。体系化された魔法とは根本的に違うのだから。



「……これが貴女の固有魔法……」



 鞠花が呟く様に声を出しながらも見詰める事しか出来ずにいる。その気持ちも思考も判る。

 身体強化は自身にのみ可能な魔術で、武器等には装備品であっても実用化が出来てはいない。

 固有魔法とは言え、それに類する効果を目の前で実現している瑞穂を興味深く思うのは当然だな。


 だが、不思議に思うのは二人が初対面である事。勿論、鞠花からすれば身体強化の方が第一研究対象だから興味は有るという程度なのは理解は出来る。しかし、鞠花の性格からすれば今まで接触しようと考えなかった方が不思議だな。


 ……いや、もしかしたら、あの日の一件が二人の未来を変えたのかもしれない。

 従妹を助けられなかった瑞穂が、自身の無力感と自責の念から、魔法からは離れてしまった可能性は十分に考えられる事。そうなると二人が出逢う筈の未来は無かったのかもしれない。

 それに今の瑞穂は足りなかった魔力量が増えた事によって魔法を使い易くもなっている。

 それらが重なって、目の前の光景が有るのなら。俺には二人の人生への責任が有る。

 まあ、もう今更ではあるが。改めて、()の歩んだ人生とは違うのだと実感する。



「…………これは凄いな。全く不安に感じない」

「──と言う事は魔導器でも不安が有ったのか?」

「正直に言えば、一度も全力では使えなかったな。勿論、魔導器の御陰で私は自分の魔法を使える様に為ったのだから感謝はしている」

「別に気を遣わなくてもいいわよ。こうして実物を手にしてみれば違いが判るわ。魔導器は模造品で、本物の装備品を越えられはしないのだと」

「……意外と辛辣だな」

「そう? 私も研究者だから、はっきりと言うべき事は言う様にしているだけよ」

「まあ、両者を比較すれば優劣は明らかなんだが、御義父さんの魔導器の技術研究には発展性が有る。戦闘以外での分野での活用方法が、これから先では大きな意味を持ってくるだろうな」

「……戦闘以外で、か」

「人類の技術発展は主に戦闘や戦争で飛躍してきた歴史が有る。だが、その技術が他分野に活用・応用される様になってこそ、技術は社会を豊かにする。まあ、悪用し勝ちなのが人でもあるがな」

「確かにそうね。技術には善し悪しは無く、全ては技術を用いる人次第だもの」

「技術の発展と問題か……複雑な話だな」

「新技術を世に送り出す際には必ず付随する事だが恐れ過ぎたり、慎重になり過ぎても問題だからな。その辺りは難しい事だ」

「だから、研究者が危機感を忘れたら終わりよ」

「そうだな」



 この世界では、ダンジョンの出現により、以降の世界史が違う歩みを刻んできた。戦争という戦争は殆ど起きてはいない。

 ただ、飛行機を始め、航空技術の発展も遅れたが現在では大差が無い所にまで来ている。

 戦争が無くても、技術は発展する。

 寧ろ、その方が技術の悪用を警戒する意識が強いというのは皮肉な話であり、当然だとも思う。

 “人を殺す為の技術”として研究されてはいないのだから。それを忌避するのは必然なのだろう。




 今日は見せて貰うだけで朝練と諸々を終えたら、自宅に戻って仕度をして街に出る。

 先ずは魔導研に行き、モニターに採用されたので俺が使用する魔導器を受け取る。

 御義父さんから直にだったのだが、凜さんが一緒だった為、物凄く驚かれた。

 鞠花の婚約者で、瑞穂も婚約者だと紹介したから驚いたのだろう。俺が彼女の立場なら驚く。

 しかし、その後で鞠花が凜さんと話したら彼女が顔を真っ赤にしながら俺を見ていたから、恐らくはそういう(・・・・)話だったのだろう。

 鞠花は積極的だし、行動力が有るからな。


 俺が受け取った魔導器は槍型。御義父さんと先に話をしていたので選ぶ必要は無い。今、モニターを募集している物の中では一番無難であり、個人的に使い勝手が良さそうだと感じのが槍型だった。

 その場で取り回しの確認をしたのだが……何故か気付いたらギャラリーが出来ていた。貴方達、一体何処から出て来られたのですか?

 皆さん、白衣だから職員なんでしょうけど。

 ……女性陣の目が異様で怖いんですが?


 さっさと用を済ませたら退散。瑞穂の叔母夫婦の家に向かう事にします。


 因みに、魔導器は魔道具に収納は出来無い。

 俺の場合は固有魔法による収納なので制限が無く魔導器でも収納する事が出来る。だから二人が俺に預けてくるのは当然だと言える。魔導器を日常的に携帯するのは難しい。邪魔になるからな。



「やはり、晶の人気は凄いな」

「晶と婚約を解消するなんて見る目が無いわね」

「何? そんな馬鹿な女が居るのか?」

「居るのよ。まあ、魔力持ちではないのだけれど」

「関係無い気もするが……そういうものか」



 盛り上がる二人には触れない。面倒臭いから。




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