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運命とは気紛れで


 念の為、遠回りをしてから駐車場に到着。正直、其処まで遣る必要が有るのかは判らないが。手間が掛かるだけで遣って損をする事ではない。

 それよりも、万が一にも自分の事が露見する方が色々と不都合。現代(・・)に置いての自分の存在は特異点となる可能性が高いのだから。

 既に自分が知る歴史──未来とは確実に違うが、必要以上に歪めようとも思わない。

 特に、技術というのは人々の社会性や意識面での成長が伴わなければ危険なだけ。

 犯罪に利用する事が難しいとは言え、絶対という訳ではないのだから。


 ──といった様な事を考えながら、その一方では何を食べようかと考えてもいる。

 偶然だが【並列考動】を扱う切っ掛けを得た為、遠回りをしながら、並列して異なる思考を試して、何と無くではあるが、コツ(・・)を掴めた気がする。

 まあ、最初は歩く事も含めている為、思考の方に比重が傾き易く、色々と打付かり掛けた。決して、打付かってはいない。



「────さあ、追い付いたわよっ!」



 ──が、此処に来て気を抜いてしまっていたのか声を掛けられるまで、その存在に気付かなかった。それは【並列考動】の為ではない。自身の油断だ。


 正直、面倒臭い。無視したい。

 だが、駐車している場所は魔力持ち優先スペースである為、調べられれば直ぐにバレる。それ以前に車を見られた時点で魔力持ちだと判っただろう。

 近付いただけなら誤魔化せただろう。珍しいから見ようとした、といった感じで。

 しかし、ドアを開けて乗ろうとしている所だ。

 誰がどう見ても、俺が所有者で、魔力持ちなのは一目瞭然だと言える。

 だから、其処は諦める。誤魔化せないしな。


 問題は声の主──女性なのは確かだが、その声に聞き覚えはない。

 これが明璃さんだったら……と思ってしまう。


 「追い付いた」と言う事は、明確に俺を認識し、追い掛けてきた、という事だ。

 財布・携帯等の忘れ物・落とし物は無い。此処に向かう途中で収納している。

 魔法ドームや魔導学総合研究所(魔導研)から、というのも考え難い。何か有ったのなら、先ずは携帯に連絡が入る筈だからだ。

 そうなると……考えたくはないが、先程の事故の目撃者である可能性が高いか……厄介だな。


 ただ、無視や逃走は悪手だとしても、誤魔化せる可能性は無い訳ではない。

 先ずは相手を確認してからだ。


 落ち着いて、「……え?」という体を装いながら振り向き──素で驚いた。

 目の前に居るのは、今日出逢った美女二人以上の美少女。格が確実に一段は違う。

 見た目にも上品なデザインのレースで装飾された白いブラウスの上にデニム地の上着、若草色の落ち着いた膝が隠れる位の丈のスカート。すらりとした色白ながらも健康的な赤みを帯びる美脚。

 身長は160cm程か。大人びた雰囲気は歳上にも思える。自己主張する膨らみは成長途上だろうか。末恐ろしい可能性(ポテンシャル)だ。

 腰までも有る亜麻色の綺麗な長髪と青緑色の眼。元の世界では現実には存在しない色の髪や眼なのは魔力持ちに多く見られる特徴。俺は黒髪・黒眼だが魔力持ちとしては逆に珍しかったりする。

 一説には、魔力の波長や魔法の適性が反映されるという話も有るが、立証されてはいない。


 兎に角、見惚れても咎められない美少女だ。

 だが、それよりも驚いた理由が有る。

 俺は彼女を知っている。

 ()の幼馴染みや友人等の類いではない。

 それ以上の存在。

 ()にとっても、俺にとっても特別な存在。


 彼女は後に[革命の魔女][始まりの魔術士]と呼ばれる様になる人物で身体強化の魔術の創始者。同い年で屈指の才媛、“清乃宮(しのみや) 鞠花(まりあ)”。


 この頃(・・・)の姿は後の特集記事でしか見た事は無い。それ位に接点は皆無。

 ──だった筈なんだが…………ああ、そうか。


 自分の迂闊過ぎる失敗に気付いた。

 彼女は魔力を用いた身体強化を一つの技術として確立しているが、それは長い時間を費やしてだ。

 その恩恵を俺は受けているのだが、今の彼女からしてみれば俺は自分の理論──まだ未完成の技術を実用化している存在になる。

 そんな者を見付けたら──追い掛けるよな。



「初めてまして。私は清乃宮 鞠花。会って直ぐで悪いのだれど、率直に訊くわ。貴男、さっきの事故現場で女の子を助けていたわよね?」

「人違いじゃないですか?」



 しれっと、笑顔で惚けてみる。

 勿論、これが良い選択ではない事は判っている。あの姉妹を探され、目撃証言を取られてしまえば、逃げ切る事は不可能だろう。

 だが、それでも遣る意味は有る。

 飽く迄も彼女自身が目撃しただけなら、この場は(・・・・)一旦誤魔化せる。

 少しでも時間が作れれば対応策も考えられるし、証拠隠滅等の手も打てる。


 ──とは言え、決して楽な事ではない。

 実は彼女の父親は長峯博士。姓が違うのは、彼が婿入りしている為。戸籍では清乃宮となる。ただ、色々と面倒なので研究者としては旧姓のままで仕事をしているというだけ。

 その為、今の彼女自身は血縁的に有名ではあるが将来有望な一人に過ぎないが、コネは強い。

 手段を選ばなければ俺が関与していたという事を容易く掴み、立証する事も不可能ではない。


 しかし、だからこそ、其処に可能性は有る。

 如何に彼女でも証拠が無くなれば追及は出来無くなるだろうからな。その為には時間が必要だ。

 此処で一時的にでも誤魔化せれば、その為の時を稼ぐ事は出来るが……どうだ?


 態とチャラく軽薄そうな印象作りをして誘う。

 そんな俺を見て彼女は予想とは違っていたのか、笑顔から一転。難しい顔に変わった。


 狙い通り──と言いたいが、楽観視は出来無い。その辺の少し出来の良い御嬢様とは訳が違う。

 油断すれば容易く足元を掬われる事になる。



「……貴男、高槻 弥生を知っている?」

「知らない方が可笑しいと思いますよ」

「私は彼女の直系の血縁者の一人なの」

「それは凄いですね」



 「血筋自慢ですか?」等と余計な事は言わない。そう簡単に諦める相手ではないだろうから、無駄に敵意や執着心を煽る真似は避ける。

 ──が、そういう自慢をするタイプではない為、その発言には引っ掛かりを覚える。

 勿論、それに気付かれる様な事は無いが。



「親類縁者を含めれば、それなりの数が居る大きな一族なのよ。その中でも、限られた者しか知らない事が有るのよ」

「それは興味深い話ですが……初対面の相手に話す様な事ではないのでは?」

「話す必要が有る。そう判断したからよ」



 ……不味い流れだ──と言うか、これは詰んだ。多分、彼女が話そうとする内容はスキルの事。

 どんなスキルなのかは判らないが、その話をする事により、俺は逃げ道を塞がれる。

 しかし、もう適当に誤魔化す事も難しい。此処で下手な時間稼ぎは彼女を刺激するだけだろう。

 可能性が有るとすれば、そのスキル次第だ。

 どうにか、屁理屈で誤魔化せる可能性が有る様なスキルであれば良いのだが……



「弥生様はスキルという特別な力をダンジョン攻略によって授かったらしいわ。だけど、他には誰一人スキルを得られた者は居ないの」

「……成る程、立証・実証の出来無い事であれば、その信憑性は噂の域を出ませんね。だから、外部に話は出てはいない、という訳ですか」

「ええ。だから、私も両親と限られた血縁者以外に話すのは貴男が初めてになるわ」

「光栄ですが……荷が重い話ですね」

「そう? それなら、素直に貴男が女の子を助けた事を認めてくれる?」



 駆け引き・交渉とも呼べない御粗末な遣り取り。しかし、今の俺には知らぬ存ぜぬを貫き通す事しか出来無いのも確か。

 此処で降参するなら話は変わるのだが。スキルがどんな物なのかを聞いてからでも遅くはない。

 どの道、知られれば、知る事になるのだから。



「ドラマの犯人の定番のセリフみたいで嫌ですが、証拠は有りますか?」

「勿論よ。その為の話だもの。弥生様が得た力とは魔力を感じ取る【探知】のスキル。魔力持ちなら、人各々の魔力──魔素の波長が異なるという事は、説明しなくても判るわよね?」

「ええ、その事は(・・・・)判ります」

「【探知】のスキルは使用すると範囲内に存在する全ての魔力を知覚する事が出来るわ。例えるなら、レーダー機器みたいな感じね」

「へぇ~、それは凄いですね」

「最初は単純な魔力の反応が判るなのだけだけれど使い熟し、上達していくと魔力の波長も識別出来る様になるわ。モンスターの種類は勿論、個人(・・)もね」



 そう言って彼女は得意気に笑顔を浮かべる。

 こんな時、美人・美形というのは得だと言える。その態度や言動が様になるのだから。


 ──なんて事を考えるのは現実逃避だ。

 唯一の可能性も潰えた。これで逃げ場は無い。


 だから、少しだけ彼女と睨み合って──溜め息を吐いてから両手を上げ、降参を示す。



「やったあっ!!」



 ──と抱き付いてくる彼女。興奮と嬉しさにより羞恥心や自制心が吹き飛んでいるのだろうな。

 初対面で、しかも年の近い男が相手だというのに何の躊躇も無く、感情に従っての事。普通であれば顔見知りだろうと少しは躊躇するのだが。

 まあ、それだけ彼女にとっては特別な事であり、男女である事など気にも為らない程の歓喜なのは、判らない訳ではない。


 ただ、彼女は彼女、俺は俺。

 理解は出来ても考え方や感じ方は当然違う。


 俺としては逃げ道が塞がれた状況よりも、感じる見た目以上の大きさを誇る双峰が俺の胸に当たって潰れる様に形を変えている事の方が気になる。

 ……張りも弾力も有るのに柔らかくて大きいとか元の世界の常識とは違うな。それとも、魔力持ちの女性だからなのか?

 面白い。実に興味深い謎だ。


 ──なんて思いながら、このまま負けっぱなしで終わるという訳にはいかない。

 細やかながら仕返しをさせて貰おう。


 抱き付いた彼女を受け止めた格好のまま、身体を支える様な体で右手をスカートの中に滑り込ませ、無防備な尻肉を掴む。

 移動手段は判らないが、高い集中力と興奮からか身体が火照っている為、薄らと汗ばんでいる。

 しかし、その所為で自分の掌が吸い付く様だ。



「………………──っ!?」



 俺の行動に反応し、硬直(フリーズ)

 自分の感覚に対する疑問が生じ──自分の身体に何が起きているのかに気付く。

 我に返り、慌てて俺から離れようとする。


 ──が、当然、逃がすつもりなど無い。

 撫でて、揉んでいた右手は強めに鷲掴みにして、腕に力を込めて抱き寄せ、腰を密着させる。

 経験の有無に関係無く、知識が有れば否応なしに意識してしまうのは当然の反応だろう。

 彼女が再び身体を強張らせ、意識し理解をすれば顔を赤くし、慌てる様子を見せる。

 その反応が経験から演技ではないと判る。


 同時に、自分が犯罪者と変わらない事をしている状況に「酷い男だな」と冷ややかに呟く自分が心の中に居たりもする。

 だからと言って止めたりはしない。

 それに、この状況を作ったのは彼女の方からだ。此処で被害者面をされるなら詐欺も同然。その気が無かろうと誘った(・・・)という状況には変わりはしない。

 しかも、彼女にとってみれば俺を失う様な真似は絶対に避けたいのだから。そんな事は出来無い。



「あ、あのっ──」



 動揺しながらも距離を取ろうと反射的に後ろへと上半身を反らす様に両腕で突っ張る。

 距離──空間が出来た所で左手を伸ばして彼女の頬に触れる事で動き制止ながら、彼女が気付かない程度の力加減で少しだけ引き寄せ──俺からも顔を近付けてキスをする様にして、呼吸を(・・・)合わせてから、顔を引く事で此方等のリズムに引き込む。

 彼女が息を飲み、その瞳に俺だけが映り込む中、その意識を一瞬で俺に染め上げる。


 鏡を覗き込む様に。自分の姿に胸中では苦笑。



「──俺の事が知りたいんだろ?」




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