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かくれんぼ

 明日香を見送った英人は玄関を後にし居間へと向う。

 そこには彼女が言ったように夕食と晩酌が用意されておりまだいくばくか暖かかった。

 英人はそれを食べながら、哲将や明日香、百合佳、そして螢について思考を巡らした。

 昨日は混乱していて螢を信じてしまったが、果たしてそれは正しいのか?

 哲将、島側にも何か隠してる事はあるだろうが、螢だって全てを語ったわけではない。

 そもそもあのゾンビが島の人間に関係があるかだって憶測にすぎない。

 しかし、螢に助けられたのは事実であり、わざわざ集落まで送り届けまでした。

 いや、そもそも螢の狙いは村民に近づく事であり、そのだしに利用された可能性は?

 等と英人は疑心暗鬼に近い想像を膨らました。

 が、疲れ切った彼の頭はそれ以上の施行を拒否し、単純明快な方向を志向した。

「……どちらにせよ。助けられてのは事実だしな。当分は螢を信じて、何かあったらその時は臨機応変に」

 そう独り言を呟くと、英人は食べ終えた食器を流し台に置き、少し悩むがそこへ手を付けていない晩酌を流すと螢から連絡はないか、連絡を取ろうとと渡された携帯端末を開いた。

「……っ!?」

 英人は驚き、携帯端末を何度も確認した。

 携帯端末に螢からの連絡履歴はなかった。

 しかし、英人を驚かせたのは別の事だった。

 昨晩それを借りた時には確かに通じていた電波が一切届いていなかったのだ。

 何かの機材トラブルか、螢が何かやらかしたのか、それとも誰かの妨害工作か。

 なんにせよもう螢との連絡は取れない。

 英人はどうすべきか悩み、頭を掻きながら自室の扉を開け、ドスンと座布団に腰を下ろした。

「やあ、おかえり」

 幼くも老獪な声が意外なところから聞こえてきた。

 英人は驚き振り返る。

 それと同時に押し入れのふすまが開き、上段で螢がカバンを肘置きにゆったりと寝ころんでいた。

「そんな所で何をやっているんです?」

 未来から来たネコ型ロボットかと問いたくなりながらも英人は当然の疑問を方を優先した。

「かくれんぼ」

 螢は白々しく答えると、ぴょんっと飛び降りゴツイ携帯端末を取り出し耳に当てた。

「それ──」

 訊ねようとしたした英人を螢は唇に人差し指を当て黙らせる。

「しっ……ああボクだ。そろそろ出るから頼む」

 短くそれだけ言うと螢はゴツイ携帯端末を仕舞い込んだ。

「通話できるんですね」

 英人は渡された携帯端末を見ながら訪ねた。

 その携帯端末が特別なのか、それとも渡された携帯端末に問題があるのか、それともそれ以外に何かあるのか。

 螢は意地悪そうに何も答えず、別の携帯端末を取り出し英人へと投げた。

「おっと、ありがとうございます」

 それは英人無くした携帯端末だった。

 彼はすぐに確認のため電源を入れる。

 電池はわずかに残っていたが、やはり電波は来ていない。

「さて、疑問もあるだろうがすぐに行こうか」

 螢はそう言うと窓を開け放ち、その淵に足をかけた。

「ちょっと待って、いくら何でも説明がなさすぎる!」

 当然の要求に螢は面倒くさそうに眉を顰めた。

「ゾンビと島民のつながりを見つけた」

 予想以上の答えに英人は驚いた。

「その際見つかってゾンビと島民に追われてる」

 最悪の予想通りの答えに英人は頭痛を覚えた頭を押さえた。

「あの数はヤバイ。あの時いただけでも行列のできるラーメン屋よりも多かったよ」

「それは……」

 螢はそう冗談交じりに言いながら窓から外へ出ると英人に来いと手招きをする。

 英人は昨晩聞かされた懸念が嫌な現実味を帯びてきたと最悪の想像をしながら靴を持ちに戻る。

 忍び足で玄関に近付くと、扉の外に誰かが立っているのが見え、それにバレないよう慎重に靴を回収し部屋に戻った。

「玄関に見張りがいました」

「知ってる」

 英人は窓枠に腰かけ靴を履きながら訪ねた。

「それでどうやって、どこに逃げるんです?」

 螢は上を指さした。

「空だ」

「は?」

 意味の分からない答えに英人は眉を顰めた。

「兎に角港まで走るんだ」

読んでいただきありがとうございました。


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