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ゾンビと少女と〇〇〇〇キック

「はぁはぁはぁっ!」

 青年は足を引き摺りながら、息をつかせず月明かりの田舎道を懸命に走っていた。

 彼の形相は恐怖と驚嘆に歪み、その脳内は現実と常識の板ばさみにあった。

 そう。彼の背後には日常在らざる醜悪なる狂気の怪異が迫っていた。

「……ぞ、ぞんびぃっ!」

 そう言って肩で息をしながら振り返った先には、月光に照らされた不死者のおぞましい顔がこちらへと迫っていた。

 てらてらと黒いタールのような粘液を滴らせたゾンビの進むスピードは子供の駆け足ほどであったが、その疲れをみせない歩みは、不注意で足を負傷した上に、日中なれない田舎道を歩き疲れた彼にとっては大きな脅威であった。

 助けを呼ぼうにも民家の明かりは遠く、頼みの綱である携帯端末も足を挫いた際に何処かへやってしまった。

 もっとも、この島では村の中心部以外は電波がほぼ届かない。

 あったところで懐中電灯以上の働きは期待できない。

 いや、それでも電波の届く所まで行けば、という希望にはなったかもしれない。

「あっ……!?」

 極度の混乱と疲労が彼の足をもつれさせた。

 青年は顔を両手で庇いながら地面へ倒れこみ、その身体を衝撃が襲う。

 鈍い痛みに顔をしかめ、土埃に目を沁みさせながらもすぐさま身体を起こした。

 そして、絶望した。

 腐敗臭。

 いや、もっと悍ましく不快な冒涜的な汚物の臭いが彼の鼻を歪める。

 すぐそば、既に僅か数メートル先まで来ている。

 あの生命を冒涜するあさましき不死者。

 身の毛もよだつ程に醜く不快な存在。

 そう、ゾンビが迫っていたのだ。

 青年は恐怖に身を震わせ、無駄とわかっていながらも手近な小石を乾いた土ごと掴んで投げつける。

 しかし、ゾンビは怯む事無く変わらぬ様子で青年へと迫る。

 おぞましく嫌悪感を抱かせる悪臭を振り撒き、汚らしい体液にまみれてはいるが、意外と腐っているようには見えない。

 青年は恐怖の中にいながらも意外な冷静さでそんな事を思った。

 しかし、それは一歩ずつ着実に青年へと近づいてくる。

 その死の恐怖にゾンビから目を離さず、後ろへと這って逃げる青年の耳にタッタッタッタッ!という軽い何かが近づいてくる音が聞こえた。

 青年はそれゾンビかと思った。

 いや、ゾンビがこんなに軽く駆けるわけがないと青年は自身にそう言い聞かせた。

 青年が恐怖に硬直していると音の正体はすぐさま明らかになった。

「屈めっ!」

 幼い少女の声。

 しかし、その声は強い意志と自信に満ち溢れていた。

 青年がその指示に従うより早く、頭上を小さな影が素早く通り抜け、そのすぐ後に風を感じたかと思うと目前まで迫っていたゾンビの頭部が吹き飛んだ。

 いや、目の前に降り立った小さな少女の飛び蹴りによって木っ端微塵に粉砕された。


読んでいただきありがとうございました。

とりあえず、不死者の島完結までは書き終えてありますので、完結までチョビチョビ投稿していただきます。

続編があるかどうかは……ブクマ・評価次第です。


ブクマ・評価してクレメンス!!!

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