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人生初の女の子の家

まず最初に田辺たなべがトイレに行くために席を立つ、そしてそれに合わせて俺もゆびでわっかを作り委員長の席にその指のわっかを向ける。そしてそのわっかのところに鉛筆の芯を砕いたものを挟む。



委員長はふわぁーと口を開けて欠伸をする。ラッキーだと思い俺は委員長の机の上に置いてある水筒めがけて、わっかを作っている指と指を離す。その瞬間、挟まれていた鉛筆の芯が飛んでいく。



このときに注意すべきなのは強く挟みすぎないこと。あまり強く挟みすぎてしまうと鉛筆の芯が砕ける可能性があり、強風が吹いて教室が壊れてしまう可能性がある。



教室が壊れないにしろ、こちらから風が吹いたら向き的に俺が怪しいことになる。斜線上には当たらないように人がいないタイミングを狙ったので大丈夫だろう。



そして、すべては田辺の計画通り。JUST HIT!ゴン、という鈍い音がしてぐらッと水筒が倒れる。そして、どんと落ちる。それと同時に落ちた場所に田辺の足が出てくる。


結界、田辺たなべの足の上に水筒が落ちた。


「いって~いててめっちゃ痛いわ。これは折れちゃったかもな~」


これももちろん演技だ。それにしても、ここまで完璧に進んでいるとあいつが恐ろしくなるぜ。


「あ、あ、ごめんなさい。水筒が落ちちゃって……」


そう言って委員長は謝る。かわいそうだ、これらはすべて田辺たなべの手のひらの上で踊らされているだけだというのに。


そして、水筒を拾おうと二人同時に手を伸ばして触れ合う。


「「あ」」



二人は手が触れあってそんな声を出す。そして、委員長は顔を赤らめて、さっと手を引っ込める。委員長はどうやら恥ずかしがり屋な性格のようだ



そして、もう片方の田辺はというと……のろけている、完全に幸せ状態だ。顔がニンマリと笑っており、まったく痛いそぶりを見せていない。


それを見て、委員長は心配そうに田辺に声をかける。


「あ、あの大丈夫ですか?」


その声に反応して田辺は痛める顔に戻す。


「いいや、全然全く治る気配がないわ~、これは何かしてもらわないとだめだな~」


「な、何かって何ですか?」


「ううん、そうだな~」


何やら作戦にはない展開になっている。作戦ではここで戻ってきて、俺が今度は別の方法で肌を触れ合うというはずだったのだが……


それにしてもわが親友ながらなんて悪役っぽいせりふを吐くんだろう。顔も悪人面になっているし……


「あ、そうだ!お宅の家にお邪魔させてもらおうかな。友人と一緒に。」


田辺は急にそんなことを言う。それに対して委員長は思ってもいなかった答えに少し慌てる。


「え、えっと友人とは一体誰でしょうか?」


「えっとね、それは秘密。でも、俺含めて3人ぐらいだから全然お構いなく。」


田辺は委員長からの質問に対してはぐらかしてこたえる。


「え、いやでも……」


委員長が迷っていると田辺はごほんと咳払いをして、足の方を指でくいくいっとさす。そして、わかるよな?と言わんばかりの圧を送る。


それを見て委員長も瞬時に理解し、仕方なく承諾する。


「わ、わかりました。でも、掃除とかもあるので午後4時ぐらいに来てください。」


委員長はそれで話を終わらそうとするが田辺は肝心のことが聞けていないとして話を続ける。


「場所は?」



そう、まだ入学二日目ということもあって、入学する前から知っていた、もしくは一部の陽キャを除いて誰もお互いの家の場所を知っているほど仲良くはなかったのだ。


「こ、ここです」



自分のノートに書いたものを見せる。それを見て、満足そうに田辺は受け取る。まぁ、俺はどこの場所に住んでいるのかは昨日知ったんだが……田辺は知らないしな。



そして、田辺はそのまま外に出ていく。一瞬戻ってこないのか?と思ったがトイレに行っている最中という設定を思い出す。それで納得する。


数十秒後に俺のところに戻ってくる。俺はすぐさま田辺に作戦と違う展開にしたのかを聞く。


「なぁ、田辺作戦と違わないか?作戦ではあの後ひいて、俺が行くっていう予定だっただろ?」


「ああ、だが急遽予定を変更した。」


「なんで?」


「簡単な話だ。俺が行った後に作戦のまま行ったとするだろ?すると俺とお前の仲がいいのは傍から見れば一目瞭然だ。となると、俺たち二人が共謀して委員長に絡んだことになる。あとはわかるだろ?」



わかるだろ、なんて自慢げに言っているがさっきの行動を見ていた教室にいた女子たちは田辺の悪口を言っている。田辺には聞こえないぐらいの音量で。具体的にはこんな感じで。



「うわ、あれは引くわ」「キモイ」「まだ二日目であんなことをするなんて……」「ご愁傷様」

「あれやって俺かっこいい~とか思ってるんでしょ?男子って幼稚」「生理的に無理」「気の毒だけど」


改めて、かなりの数の暴言が言われている。作戦通りに俺もしていたらこれと同じぐらいの数あるいはそれ以上の数の暴言を言われていたのだろうか?まぁ、なんにせよ……


「乙」


俺は田辺に向かってそういって、ポンポンと肩に手を置き肩をたたいてやる。


「きゅ、急になんだよ?気持ち悪い」


とそういいうが、俺はこいつに同情せずにはいられない。なにせ、周りの人たちの視線が痛いほどこちらに刺さっている。


こんなことにも敏感に気が付けるようになったことで、人の悪意や善意をこんな風に気が付けることになったが果たしてこれはいいことなのだろうか?まぁ、そんなことを考えてても今は仕方がないか。


「それで4時に行けばいいのか?」


俺は田辺に尋ねる。


「ああ、というかよくこれだけの距離で聞こえたな。耳がよくなってるってのはマジだったのか」


「なに、まだ信じてなかったの?」


「ぐっ……まぁ、な」


歯切れを悪そうにそういう。まったくちゃんと信じてほしいものだ。


「というか放課後のこと村田にちゃんと言っておかないとダメじゃん」


「ああ、そうだな。俺の方から伝えとくよ」



そう言って席につき、再びゲームを始める。俺も席につき時間を見て、急いでご飯を口の中に入れていく。そのあとは特に何事もなく休み時間が終わり授業も終わる。





終礼が終わり放課後になる。俺と田辺は書かれたメモをもとに委員長の自宅へと向かう。


村田はどうやら教室で今日は用事があるからと何やら女子に断りを入れていたりしていたので、少し遅くなるそうだ。だが、場所はすでにRINEで送っているから心配はいらないとのことだった。


「なぁ、本当におかしなものを感じたのか?触れたおれは何も感じなかったけど」


田辺は委員長の家に行く途中で俺に話しかけてくる。


「いや、いやマジで感じたんだって。というかお前は魔術とかそういうの感じるタイプじゃないからだろ」


俺はそう言う。あのものすごく嫌な感覚を間違えるはずもないし、忘れるわけもない。


「まぁ、そうだけど。人生で一番ぐらいの嫌な感覚だったんだろ?それなら俺みたいな一般人が感じだっておかしくないとは思わないか?」


言われてみれば確かに。あれに気が付かないとなると相当鈍感なのかあるいは場慣れしすぎて気が付かないぐらいのレベルだろう。


「まぁ、その話は置いといて。本当に道はこっちであってるの?」


俺は田辺に聞く。というのも、学校を出た時から明らかに神社とは真逆の方向に向かって歩いているからだ。


俺の家と神社は学校から見たら同じ方向にあるのだが、今向かっている場所は学校を軸に真逆なので違和感を覚える。


「ああ、もうすぐそこだ」


ここら辺に裏道があるわけでもないので、俺は不審に思い、メモ用紙を見せてもらう。


「ちょっと、見せて」


そう言って、メモ用紙を見ると……


「あっ、ここだここだ」


全く違うところだった。そこは神社などではなく普通の家だった。車があって、築10年ぐらいの二階建て。どこにでもある家。てっきり神社に直接住んでいるものと思っていたのだが……


「ここで合ってる?」


俺はそう尋ねる。もしも神社に住んでいないとしたら、明らかにおかしな点があるからだ。それは昨日買い物の帰りのはずなのに、神社に向かったことだ。


もしも、神社に住んでいないのであれば、買い物のあとこの家に向かうはずだ。だが、彼女は神社に行った。



もしかしたら、軽く祈ってから家に向かうつもりだったのかもしれない……だがそこまで神社に興味を持つものだろうか?ましてや、有名な神社などではなく近所の神社に?……SNSがあるこの時代で?



考えだしたらきりがない。そう思った次の瞬間にどこからか視線が感じる。いや、違う。集中していて気が付かなかっただけで、ずっと見られてる?俺はバット周りを見渡す。だが、周りにはどこにもいない。そして、家の方を見ると二階の窓のカーテンのところにかげがわずかに見える。



だが、それは次の瞬間さっとカーテンの陰に隠れてしまった。



「どうした?」


俺がきょろきょろしているのを不審に思ったのか田辺が俺にそう声をかけてくる。


「なんだか、視線を感じた気がして……さっきも2階のところに人影みたいなのが見えたし……」


「ふーん」


そういって田辺は2階の部分を見る。やっぱり何か違和感を感じる。そして、俺たちはピンポーンとインターホンを鳴らす。


「はいはい、よくいらっしゃいました。」


中からは眼鏡をかけて笑みを浮かべている中年の男性が出てくる。おそらく、委員長の父親だろう。


「どうも、いつも櫻がお世話になっています。ささ、外へ話すのもあれですし中に入ってください」


丁寧に礼をして俺たちを家に招き入れる。俺たちもその言葉に甘えて中に入る。


中はきちんと片付けられており、部屋もきれいだ。そのまま、ダイニングにまで通される。


「少し待っていてください。牛乳とコーヒー、紅茶どれがいいですか?」


「「牛乳で」」


俺はと田辺は牛乳を頼む。田辺はいつもブラックなのに珍しいな。


「櫻~田辺さんたちいらっしゃったぞ~早く降りてきなさい」


2階に向かってそういう。少ししてトントンという音がしたかと思うと、2階から委員長が下りてくる。


それにしても、委員長の名前は川島桜かわしまさくらっていうのか……初めて知った。


「ど、どうぞ。よくいらっしゃいました。」


委員長の私服姿だ~!初めて見る。白いワンピースをきている。レースがたくさんついており、清純そうな委員長とよく合っており聖女のようだ。


「まぁ、特に何かあるわけでもないですがゆっくりしていってください。では、手作りの出来立てクッキーをどうぞ」


そういい、俺たちの前に今焼きあがったばかりであろう湯気の出ているクッキーを出す。俺は牛乳を飲んで出されたクッキーを食べる。



ううん、なかなかおいしい。焼きたてということも相まって抜群においしい。バターの香りが鼻の中を貫いて、牛乳と非常によく合う。俺はそのままパクパクと食べる……それにしても気まずいな。まぁ、入学二日目で大して親しくないCLASSMATESをよんでも話すことなんて特にないしなぁ。



「きれいな部屋ですね。きちんと掃除されているのが分かります」


そんなことを思っていると、田辺がそう言い話を切り出していく。


「はは、そんなことを言われると照れますね。まぁ、ほめてもらって悪い気分はしませんが……」


そう言ってこのおじさんは笑いながらそう答える。対して、田辺は口元に笑みをうかべているものの目が笑っていない。


「失礼ですが、川島さんのお母さんはどこに?姿が見えないようですが……」


田辺はそう聞く。確かに母の姿だけが見えないが、どこかで買い物でもしているのだろうか?もしくは仕事?どちらにしても初対面で聞くような話題ではないことは確かだ。


「ええ、彼女は今は外に出かけております。今夜は遅くなるようですのでおそらくお会いできません。なぜそのようなことを?」


「いやね、お母さん以外の人には挨拶をしたのに、お母さんだけに挨拶していないのは失礼かと思いまして。」


「ああ、そういうことでしたら私の方から伝えておきますのでご心配ならずに」


そう言って二人の会話は終わる。それにしてもなかなかに気味が悪い。田辺が警戒するのもうなずけない話じゃない。さっきから笑みを全く絶やさない。



もちろん、笑いがだめって言っているんじゃない。だが、委員長のお母さんについて聞いた時も笑みを変わらず浮かべているのは少々薄気味悪い。なにより、さっきからずっと見られてる。



部屋の中に入ってからも目の前にいるおじさんと委員長とは別の方向からずっと。最初は気のせいだと思ったんだが…無視していたらどんどん気配が大きくなっている気がする。


「失礼、二階を見てもいいですか?」


田辺がまたしても話を切り出す。


「ええ、かまいませんよ。ただし寝室には入らないでください」


「わかりました。寝室には入りません」


「桜、自分の部屋に案内してあげなさい」「は、はい」


俺たちはそのまま2階に上がる。委員長と一緒に。そして、1つの部屋に入る。


「ここが私の部屋です」


その中はベッドとその上に1メートルぐらいのピンク色の蛇?のような人形。そして、勉強をするときに使われると思われる机がある。そして、この部屋が外側から覗いていた部屋にあたる部分だろう。間違いないこのカーテンだ。この窓からのぞいていたんだ。



「綺麗だね。なんというか、女子っぽくてとってもかわいいと思う」


俺はとにかくそうほめる。女子の部屋に入ったときにどんな言葉をかけるのが正解なのかが分からないが、とにかくほめておけばいいだろう。


「あ、ありがとうございます」


委員長は褒められて、照れたようにそういう。それにしても……


まただ。二階に来ても視線を感じる。1階でも2階でも感じるということはいまこの家にいない委員長の母親が怪しいんだが……もしかしてそのためにさっき田辺は母親がどこにいるか聞いたのか?


「何か好きなものとかはありますか?」


委員長が再び沈黙が当たりを支配する前にそう聞いてきた。きっと沈黙が気まずいのだろう。NICEだ。


「俺はゲームかな。とくにジャンルは問わない。それがゲーマーだからね」


田辺がその質問に答える。そして、その次に俺が答える。


「おれが好きなのはアニメかな。同じくジャンルは問わない。それがアニマーだからね」


「おい、俺のを真似すんな。てか、アニマーってなんだよ」


「ふふん、俺が自分で作った語だ。なんとなく意味が伝わるだろ?」


「いや、伝わるけども」


「っふふ」


委員長がそんな俺たちの会話を見てそう笑う。


「二人とも仲がいいんですね。もしかして、この学校に入る前からですか?」


「ああ、そうだな。」


その質問に対しては俺が答える。そして、田辺が委員長に質問をする。


「川島さんは一体何をするのが好きなんだ?」


「え、と私はですね。数のカウントっていうゲームが好きです」


俺は聞いたことがないゲームだったので、田辺の顔を見る。だが、田辺も知らなさそうな顔をしている。

田辺が知らないとなると、かなりマニアックなゲームなのだろうか?


俺たちが分からずに首をかしげていると、委員長が慌ててフォローを入れる。


「あ、これは私達が作ったオリジナルゲームなので説明しますね」


どうやら、委員長が勝手に作ったゲームだったようだ。これならルールが分からないなんてことはなく安心して遊べるな。



「これは1から100までの数の中から自分の好きな数を選んで、最初の人が言った数から自分までにみんなが言った数をその順番通りにいうものです。」


「例えば、私が2と言って、田辺君が31を選んだとしたら、2,31という風に。」


「ちなみに勝ち負けは?」


「最後まで言う事ができていた人の勝利です。最後の一人が決まるまでゲームは続きます」


なるほど。つまり、記憶力をはかるゲームということか。非常にシンプルだが、それ故に分かりやすい。


「じゃ、じゃあゲームを始めましょう」



主人公は全くモテておりません。なので、たまに自分とかぶせてしまうときがあります。

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