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天井付近

お互い見つめ合い次の瞬間、双水そうすい辻井つじいの方に手をかざす。


「【弾水丸だんすいがん】」


双水そうすいがそういった瞬間に、手に水滴が現れダダダダという音がして、辻井つじいに勢い良く放たれる。


「危なすぎるやろ」


辻井はそう発言するが浮かべた笑みを崩すことはなく、よけるそぶりも全く見せない。


いや、よける必要がない。放たれた弾丸は自らに意思があるかのように辻井に当たらないように、それていく。


「今度はこっちの番やな」


辻井はそう言って上に向かって何かをひゅんひゅんひゅんと投げる。それが何なのかを見逃さず双水は上を向く。


その相手から目を離した一瞬の隙を辻井は逃さない。すかさず、間合いにまで入りこぶしに火をまとわせる。


「【火炎かえん】」


そういうや否や、双水のみぞおちにあたる部分にめり込ませふっとばす。


「くはっ」


そう言って、双水は土煙を舞い上がらせながら吹っ飛ばされていく。


「ふむ」


自分が攻撃したときの感触に違和感を覚えて、自分の手を見る。自分の手は水でびしょびしょだった。


「直前で、水のシールドを張って僕の火と重力によって威力を増したこぶし自体の威力を防いだんか……」


「【水刃すいじん】!」


辻井が自分の手を見ていると土煙の中からひゅんひゅんと鞭のようにしなりながら斬撃が飛んでくる。


だが、これもまた辻井を避けるようにして軌跡を描く。その様子に双水は思わず悪態をつく。


「くそっ!これでもダメなのか!」


双水の頭の中にある選択肢はどんどん減っていく。


あれもダメ、これもダメ…………

そして、フーと深呼吸をして、すばやくきもちをととのえ覚悟を決める。

今目の前にいる相手が強敵だと。多少無理をしなければならないと。


「【あめ】」


その瞬間、あたり一帯の風景が一変する。今まで晴れていたにもかかわらず急に雨が降り始める。


そしてその雨が降った所はじゅぅという明らかに普通ではない音を立て色が変色する。


肝心の辻井はというと、やはり、この雨も彼の周りを避けている。


「くそ、これで無傷かよ。バケモンが」


辻井はこの雨を見て、素直に驚く。まさか、ここまでとは思っていなかったからだ。そして、双水に称賛の言葉を言う。


「これはこれはすさまじいな。酸性雨なんてレベルじゃない。これは硝酸が濃度90%ぐらいで降っているのとさして変わらんな。ただ……」


双水は苦しそうに息をする。


「はぁはぁ」


「こんなに広範囲でこれだけの量の雨を降らしていたら、いくら君の【魔力量】が多いとはいえ、すぐ限界が来るんちゃうん?」


「そうなる前に決めればいいだけだろ」」


そう言うと、奥の手を使うことを決断しさらにドバっどばばばばばと自分のところから大量の水をだす。


たちまちあたり一帯水でおおわれていく。緑も土も建物も近くにいた動物も例外なく飲み込まれていく。


ここで初めて、今まで浮かべていた笑みが辻井の顔から消える。


「こりゃあ、やばいかもな」


自分の周り半径1メートルほどに空気のスペースを作り自分だけは呼吸できるようにする。


そして、双水の後ろには巨大な城が建てられている。正面には大きな扉があり、周りに何本も大きい柱がありそれがこの建物を支えているようだ。


城の一番上には魚が全部で3匹おり、右側には笑った魚、左側には泣いている魚、真ん中にはこっちをにらみつけている魚。


城の周りには大きなサンゴ礁や貝などがあり、太陽の光が入ってきて明るく照らす。だが、水面までは数百メートルはありそうだ。


見渡せど見渡せど、この水の端となる部分を見る事ができない。辻井は笑みを浮かべず真剣な表情で言う。


「これじゃ本物海との違いなんてないに等しいも同然やろ」


「【海中琉球王国】」


自分の奥の手の名称を、双水は自信満々に言う。






近くの道を一台に車がすさまじい速度で走り去る。平日の午前中ということもあってか車はほとんど通っておらず、その道にはその車だけだった。


そして、その車には中のよさそうなカップルが乗っており、男の方が運転席に座っている。


「マイハニー、外を見てごらん。とてもきれいだよ」


そう言って、車の窓を開ける。すると、外から風がぶわっと入ってくる。彼女も外に顔をのぞかせながら彼の言ったことに同意する。


「ええ。ダーリン、海がとってもきれいだわ」


「海?はは、ありえないよ。ここはかなり内陸で海なんて見る距離じゃないからね。湖と間違えたんじゃないのかい?」


といいつつも、もし見えていたらダサいなと思い彼氏は、ちらっとナビで確認する。近くには海も川もなく、平坦な土地が続いているだけだった。


「いや、見えるのよ。見てみて」


彼女が何度もそういうので、運転中だがちらっと彼女の言った方向に目を向ける。すると、視界に彼女の言っていたものが入ってくる。


それは確かに、海と呼ぶにふさわしいものだった。明らかに、湖で片付けられる大きさではない。


海だと言われたら思わずそれが海だと信じてしまうような圧倒的な大きさだ。


だが、彼がそれを見た時に抱いたのは、なぜここに?という疑問でもなく好奇心でもなくただの恐怖だった。


それを見た瞬間、彼が今まで使うことなどなかった本能が彼の中で芽吹き警告する。


あれはダメだと。関わったらその時点で終了だと。


「か、かっ飛ばすよ。マイハニィー」


思いっきりアクセルを踏む。一般道路であるにもかかわらず時速は100キロを超える。


「ダーリン、最高!」


彼女は、急に速度を上げて気分も上がったが、彼氏は顔が真っ青だった。





「うん?いま、なんか通ったか?」


辻井はこの水のギリギリ外を車が通ったような気配を感じる。だが、その気配はすぐに立ち去ったので気にも留めない。


すぐに、相手の方に神経を集中させる。相手は口元に笑いを浮かべ、気分が高揚した様子で言う。


「はは、ははは。どうだ、これが【魔術】の極地だ」


う~ん。これはかなりまずいで。こいつの高濃度の【魔力】が込められているせいか僕の【聖力】の通りが妨害されてかなり悪い。


要は、能力の使用を100%ではできないようにさせられたってことやな。水の操作権は向こうの方が上みたいやし、手持ちの空気を使うわけにもいかんから火と水は発動不可能。


重力を使って相手に攻撃が届かないか確かめるが、やはり通りが悪く威力は落ち膨大な水によって相手に届く前にかき消される。


僕のその攻撃を見て鼻で笑う。


「ふっ、弱々しいな」


もちろん、僕の全聖力を使えば相手にも有効打は与えられるやろうけど、しとめることはできへんとみていいやろう。


こっちが聖力0で相手の魔力が一割残っています。とかならば、僕の死は確定や。


やけど……


「ま、何とかなるレベルやろ」


そんな僕の言葉は向こうにも聞こえていたみたいで僕に対して激怒したように言う。


「はあ?お前の能力は知っているんだぞ。お前の能力はありとあらゆる力の量と方向を操る能力。今のお前じゃ火も水も風も何もかも使えないだろうがぁぁぁ」


そう言って、少し離れたところで水流がものすごい勢いであつまっていく。そして、水中で渦が起き巨大な竜巻のようなものが起きる。


竜巻は本来地上で発生するものであって水中で発生したものを言うのに適した表現ではないだろうが、この表現が一番しっくりくる。


「【海中螺旋かいちゅうらせん】!」


そして、僕も今その渦の中に徐々に近づいて行っている。抵抗はするものの勢いはすさまじく、どんどん進んでいってしまう。


「なんともか弱い抵抗だなぁ、もっと頑張ってみろよ」


今度こそ僕が死ぬと思ったのか上機嫌でにっこにっこの凶悪な笑みをしながら俺に言ってくる。


その見立ては決して間違いではない。今までのような重力を使って攻撃を僕に当たらんようにする術もこの攻撃をもろに食らえば1分と持たずして死んでまうやろう。


そう、このまま・・・・だったら、な。


「そろそろやな」


僕はぼそりとつぶやく。相手は水中の中にいる僕に気を取られて気が付いていないみたいだがいま、この水には先ほど飛ばしたあれが近づいてきている。


ここまで使うとは思わんかったけど念のための保険を打っておいて正解やったな。


「天然じゃないけど、威力は保証するで」


「はぁ、なんのことだ?」


相手は僕が言ったセリフの意味を聞き取れたようだが分からず聞き返す。


「視野を広げろ、アホが。【人工隕石じんこういんせき】」


その瞬間、水面に僕が放った隕石3つがほとんど同時に着地する。そこでようやく僕の狙いに相手は気が付いたみたいやけど、もう遅い。


隕石がまとった火によって水はどんどん蒸発していき瞬く間に、双水の真上に来る。


「しまっ……」


そのあとの言葉は爆発の音にかき消され、何と言ったのかは聞こえない。そいつをぺしゃんこにした後も隕石は進んでいって地面に激突する。


その瞬間、地面の土が舞い上がり、水は一気に暖められたことにより蒸発する。


まぁ、いわゆる水蒸気爆発というやつが巻き起こる。



「いっつもこの技使ったら、後始末が面倒やねんなあ。便利やからつかうけど」


先ほどの水はすべてなくなっており、その代わり見渡す限りの大地が裏返ったかのようになっている。そしてものすごく湿度が高く熱くなっている。


おおよそ45度といったところだろうか。自分の周りに風を起こすことによって少し熱を逃がす。


「え~と、どこだっけ」


地面の中で熱エネルギーが違うところを発見すると、そこに風を使って土をどんどん掘り返していき、双水を見つける。


「みっけ!」


そう言って、土の中から引っ張り上げる。死んではいないがほとんど瀕死状態でいつ死んでもおかしくない状態だ。


だからといって、こいつを回復させてしまえばまた暴れることは明白なので、このままの状態で持って帰ることにする。


「それにしても、これを耐えるとはなぁ。君から情報を聞き出すことをあきらめて殺すつもりやったんやけど、耐えるとは大したもんやで」


そのまま右手にブランとさせた状態で抱え、後処理してくれる人を呼びふわふわと浮きその場を離れる。





少し離れた場所から辻井が立ち去るその様子を二人の男女が見ている。


片方は白い髪で青色の目をしたロングの女で、もう片方が黒い髪で赤い目をしている。


女の方から男に対して話しかける。


「これで、よかったのですか?」


「こうじゃないとダメなんだよ」


「ですが、双水を失ったのは戦力的には痛手では?」


「彼は若い。それ故に、力があって慢心することが多かった。今回の戦いでそれを痛いほど痛感したはずだ。彼はまだまだ伸びる」


「だから、彼を向かわせたと?ですが、殺されるかもしれませんよ」


「それはない。現に今もとどめを奴は刺さなかった。おそらく背後関係に気が付きはっきりさせておきたいんだろう」


「なるほど」


「さて、そろそろ去るべきだろう。ここの後始末のために職員がいろいろと来るだろうしね。見つかったら面倒だ」


「そうですね」


そう言って二人はその場から姿を消す。



テレビでは少し地震が起こったことにより、地面がひっくり返って土砂災害が起こったとして、報道された。


「ああ、やっぱりそうだよな」


「一瞬揺れたもんな」


「そうですね。震度2,3くらいですかね」


そんなことを知らない俺や田辺たなべたちは車に乗りながら、スマホに地震の通知速報が入ると眺めながら、そんなことを語る。


そして、事情を知っている村田むらた斎藤さいとうは特にこの件については何も言わず、黙っていた。


それからも話題は変わっていき、高校や中学のこと自分の趣味などを話していると、ある地点を過ぎたあたりから体に若干の違和感を覚え、そわそわする。


どうやら、違和感を覚えているのは俺だけじゃないようで委員長とたなべもこころなしかおちついていない。その様子を見て、村田が言う。


「ああ、ここは大規模結界内に入ったからね。違和感を感じるんだと思うよ」


「「「大規模結界?」」」


俺たちはそろって首をかしげる。


「そ、【聖魔術】の総本山ともいえる京都府全体に結界が張られているんだよ。少し違和感があるかもしれないけど、すぐ慣れると思う」


「ふ~ん。でも、これってどんな効果があるんだ?」


「人間はあまり感じないだろうけど、【魔獣】を軽くはじくんだ。といっても軽くばちッとなる程度だからあんまり効果には期待しない方がいい」


「じゃあ、なんでこんなのを張っているんだ?」


「これは数百年前に陰陽術の使い手が張ったとされているんだ。その当時の京都は首都だったからね。

その当時はかなり効果があったらしいけど、今はもほとんどないに等しい。

数百年効果があるだけでもすごいと言えばすごいんだけどね」


そう言っていると再び体に違和感を感じるようになる。先ほどよりも大きい違和感だ。


「今、なんか……」


「2枚目の結界を今通り過ぎたね。全部で3枚の結界が張られていてその結界の中心部分に、俺たちの目的地の高校があるんだ」


「その言い方だと一回来たことがあるみたいだな」


俺は村田に尋ねる。


「まぁね。一回と言わず何回かここに来たことはあるんだ。もともとこのがこの学校に入学するつもりだったからね」


「なんで入学しなかったんだ?」


「それは……」


村田が言いかけたところで、車がききぃと止まりいドアが開けられ俺たちは降ろされる。そして、斎藤さいとうさんは俺たちに言う。


「つきました、どうぞお忘れ物がないようにして降りてください。大きい荷物はこちらで寮の方に運んでおきます」


「ありがとうございます」


感謝の言葉を言って、見ると目の前には京都洛山高校きょうとらくやまこうこうと書かれた表札のある建物があった。


「あれ?3枚結界があるって言っていたけど2枚しかまだなくないか?」


この高校がすべての結界の中心であれば、その中心の高校に来たのだからすべての結界を通過していなければおかしいはずだが……


俺はちらっと村田の方を見ながら問いかける。


「ああ、この高校の敷地ちょうどに結界が張られているんだよ。だから、この結界を超えれば、この門をくぐれば全部の結界を超えたことになる」


そういわれて俺はその結界を超える。


ドックン。


なんだか、不思議な感じだ。さっきまではわずかな違和感しかなかったがこの結界をくぐったら違和感をかなり感じた。


具体的には物の遠近感が少しわかりにくくなっている気がする。それだけ強い結界ということだろうか?


「この結界はたまに張りなおしているからね。かなり効果が強い。効果としてはこの学校の位置座標を【魔獣】に特定されないようにするためのものだ」


「なんでこれだけ、効果が違うんだ?」


すべて【魔獣】を追い払うためのものにした方がよさそうだが。


「なんでも、学校の中にある最重要機密を外に持ち出されたり、壊されたりしないようにするために座標を特定できない結界にしたらしい」


「ふ~ん」


そのまま歩いていると、前からここの学校の制服を着たと思われる生徒が3人ほど歩いてくる。


1人目は金色の髪の青い目で長髪の女子だ。どちらかというと西洋顔である。容姿は非常に整っており、淑女の雰囲気を醸し出している。


凛とした雰囲気で姿勢をすっと伸ばしコツコツと歩いている。道端であったら思わず見とれるだろうが、話しかけることはできない高潔さを持っている。


2人目は黒髪黒目のボブでアジア系の顔の長身の女子だ。こちらの子も先ほどの子と同様に顔立ちが整っている。だが、先ほどの子とはかわいさのタイプが違う。


先ほどの子が凛とした淑女だというのであれば、こちらは元気はつらつな少女とでもいうのだろうか。一見男性とも女性ともとれる中性的な顔立ちで、スカートをはいているので女性とわかる。


日に焼けており、制服の下から見える腕は筋肉が付き引き締まっているのが少し離れたところからでも分かる。


3人目の子は灰色の髪の毛で全体的に前の二人と比べて薄暗い感じが漂っている男の子だ。顔を伏せて歩いており、その表情は見えない。


そして、一番初めに歩いてきていた子が村田を見るや否や走ってくる。そして、村田をぼふっと抱きしめる。


「今日は朝食がいつもよりも14分23秒遅くて、急いだせいで1回こけかけてトイレに大は1回小は7回も行った膀胱が小さくてかわいい門政かどまささん!」


その発言に近くにいた俺たちは村田とその子の方をえっ?という顔で見る。








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