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失踪

俺は家に帰りながら動画で勝手に人を撮っている犯人候補の3人のことを考える。


1人目は神室紗耶香かむろさやか。彼女は非常にコミュニケーション能力がたけており、統率力があり、頼もしい存在だ。


いや、こんなまどろっこしい言い方をせず直球で言うならば、彼女は陽キャだ。男子のリーダーを村田とするなら、女子のリーダーは彼女だ。


2人目は小町楓こまちかえで。彼女は身長が小さく、友達からもそれをいじられることが多いようだ。何とも愛くるしい見た目で、庇護欲がわく。


いわゆる、小動物系だ。彼女の高い声は聞く人の気持ちを和ませてくれる。おそらく、まだ声変わりもしていないのではないだろうか?


3人目は木下花音きのしたかのん。彼女は女性にしては身長が高く167,8くらいがあり、出るところはしっかり出ており(どことは言わないが)、男性人気が高い。


以上3人のことについて俺が知っている情報だ。まだ、入学してから3日ということもありあまり詳しくは知らない。


当然全員SNSをしており、『HUTEREヒューテレ』をやっている。だから、これだけでは犯人を誰か一人に絞ることはできない。


やはり……手っ取り早いのは人海戦術だろうか?3人にまで絞られたのならば、俺たちが個別で調べることもできる。


犯人は【魔術】を使う可能性を考えると、俺、委員長、村田の3人で対応すれば問題ないだろう。


いや、だが相手がもしも俺達が探っていることに気が付けばぼろを出さないように動画を投稿しなくなるだろう。


そうなったら、手掛かりが完全に消える。つまり、犯人を突き止めるのはもう無理だ。


そして、村田はともかくとして俺と委員長はあまりそういう・・・・ことがうまくない。


つまり、犯人を俺もしくは委員長が追いかけていれば、犯人が俺たちの存在に気が付く可能性が高い。


それに……


なんだか、今回の相手には誘い込まれている気がする。もう少し、妨害などがあるんじゃないのかと思っていた。


いきなり、俺たちの学年全員からたった3人にまで絞り込めたり、順調なはずなんだが嫌な予感がする。


前回の委員長のおっさんと戦った時に感じたが、【魔獣】というのは徐々に脅かすのではなく、急に現れて俺たちのあたりまえの日常を壊してくるように感じた。


今回も順調に調査を続けて言った結果、最終的には敵の策略に引っかかって俺たちの日常が壊される、なんてことにならないといいが……


ま、未来なんて誰にも分からないか。俺がそんなことを考えているうちに家に到着する。玄関を開けると母の声が聞こえる。


「お帰りー。少し遅かったわね。また、どこか行っていたの?」


「まぁね。少し……」


「前みたいにものすごく遅いわけじゃないから、そこまで言わないけど今度からはRINEで少し遅くなるぐらい送っときなさいよ」


「ああ、わかったよ」


そう言って俺は手を洗い始める。俺が手を洗っているときに母はぼそりと何やら言っている。


「まぁ、ネットの世界だけなくて最近現実でいろいろと行動してくれていること自体は、親としてはうれしいことではあるんだけどね」


「なんか言った?」


俺は手を洗っていたので水の音で何と言ったかよく聞こえなかったので、水を止めて母にそう聞く。


「なんでも」


母は心なしか少し嬉しそうにそう答えた。俺はそのまま気にすることなく自室へ行く。


「さて、アニメでも見ますか」


俺はそのままアニメを見終えて、ご飯を食べ、風呂に入り、軽く勉強して、就寝した。






翌日、土曜日で社会人たちは学校に行かないというのに俺達高校生は学校に行かなければならない。


一番しんどいのは案外俺たち高校生か土日出勤しても給料が支払われることはないブラック企業の従業員かのどちらかではないだろうか。


俺はそのまま足取りを止めることはなく学校に向かって歩いていく。すると、前方に神室さんが歩いているのを発見する。


後ろ姿しか確認できないが、あの凛とした歩き方、しっかりと背筋を張っており、一歩一歩をかみしめるような歩き方。間違いなく、神室さんだ。


決して、神室さんのことが気になって無意識的につけていた、とかではなく本当に偶々神室さんを発見したのだ。


神室さんは珍しく周りにだれもおらず一人で登校しているようだった。いわゆる、ボッチである。

こんなところで俺は少し親近感を覚える。


何やらスマホをいじっているようだった。それ自体は普通の高校生と考えれば違和感など一つもないのだが、ついつい勝手に撮影したりしているのではないか、と疑ってしまう。


やはり、先入観を持つと普段なら気にならないような些細な行動であっても疑わしく思えてきてしまうものなのかもしれない。


流石に何をしているのかをのぞき込むのは失礼だと思い、そのまま後方5メートルぐらいをキープした状態で歩いていく。


できるだけ足音を立てないようにそのまま歩いていると、途中で田辺に出会う。田辺は俺に気が付き声をかけてくる。


「おお、矢井田じゃん。お前何してんの?」


俺は神室さんに俺の存在がばれて、怪しまれるかも、と思い神室さんを見る。


だが幸いにもスピーカーをしていたようでこちらの声にも気が付いていないし何なら存在自体にすら気が付いていないようだ。


存在にまで気が付かれていないというのはなんだか、悲しい。俺はそう思いつつ田辺に何をしていたのかを話す。


「いや、あそこにいるの神室さんじゃん?」


俺は神室さんの方を指さしながらそう言う。それに対して、田辺は戸惑って答える。


「後ろ姿だけだとまだ3日目ってこともあってよくわからないんだけど、距離も少し離れているし……」


「いやいや、よく見ろって。あの歩き方。あんな風に腰を動かしながら背筋を凛と伸ばして一歩一歩歩くのは神室さんぐらいだろ?」


俺は自信満々に田辺に向かってそう言う。すると、田辺は俺から少し離れている。どうしてだろう?

顔も俺の方を見て引いているように感じる。

俺が話しかけようとすると、俺の方を見て一言。


「キモ」


「待て待て、そんなことを言ってお前の良心はいたまないのか?」


「いや、これは普通の人間が抱く感想だと思うぞ」


ふむ。俺のどこが変態だったのだろう?あの相手が誰だったのかわからない田辺のために、どうやってわかったのかわざわざ教えてあげたというのに……


「委員長にも同じようなことを言われたんだが、俺ってそんなにキモイか?」

「キモイ」


即答されてしまった。自分では普通だと思っていただけにショックだ。俺は真剣な目で田辺に問う。


「どこが気持ち悪いんだ?言ってみてくれ」


「いや、どこがと言われると……うーん」


やや悩んでいたようだが俺の質問に答えてくれる。


「お前の言語化が何というかすぐに情景を思いうかばせてきて、気持ち悪い」


「つまり、俺の語彙力と文章構成能力が高すぎるということだな?」


「あと入学してから6日目のはずなのに自分と関係ない女子の歩き方まで把握しているのが気持ち悪い」


「つまり、俺の周りに対する洞察力と注意力、それを覚えている記憶力が高いということだな?」


「……お前なんでも肯定的にとらえんじゃん。それだと俺がいくらアドバイスしてもお前も直そうって思わないだろ?」


「いや、今のをすべて否定的にとらえたら俺の悪口でしかないだろ。なんでも否定的にとらえていたら軽くやむぞ」


「それもそうだな……じゃあ、お前がそういう風に思うのは自由だけど、それを口に出すなよ」


「OK」


俺たちがそう言って歩いていると、前を歩いていた神室さんがリュックを背負っている小町さんと合流しているのが見える。


「そういえばさっき委員長にも同じようなことを言われたって言っていたけど、なんて言われたんだ?」


「キモ」


「うわ、それはきついな。しかもあの委員長にだろ?絶対本気でそう思われて……」


そういった瞬間、風がビューとふき前にいた神室さんたちのスカートがめくれる。

俺はその一瞬を逃すほど雑魚ではない。すばやく確認する。


「黒、黒。あれどっちも黒か?」


「そういうとこだぞ」


俺が確認してわざわざその情報を言ってやったというのに、田辺はあきれたように俺に対してそういう。






俺たちがそんな他愛もないことをしゃべりながら学校につく。そのまま、教室に入り自分の席に着く。


ここまで多少のハプニングはあったものの【魔獣】による襲撃などはなかった。このまま平穏な日々が続けばいいんだが、きっとそうはいかないだろう。


俺は、はーとため息をつきつつ授業の用意をして授業を真面目に取り組む。一時間目は数学だ。


数学自体は苦手だが、数学の授業はあまり嫌いではない。なぜなら、先生がひたすら解説してくれるだけで、ボーとしてても大丈夫だからだ。


だが今日はそんなことはせず、犯人候補として怪しい3人の授業態度とスマホの扱い方を確認する。


犯人の『キャルチャー』は授業風景もとっていた。そのことを考えると、今だって撮影している可能性がある。


少しでも、動画のネタになりそうなことは撮っておくべきだからだ。


神室紗耶香はスマホを授業が始まる前にポケットの中にしまって授業も真剣に受けている。


小町楓はスマホを持ってきたリュックの中にごそごそと入れて授業は真剣に受けている。


木下花音は高そうなスマホ専用の箱に入れてバッグに入れて授業は時折寝かけたりしてそこそこ真面目に受けている。


うーん。どの人も確実に犯人だといえるものがない。これだけではまだわからないな。


そんな俺の様子に気が付いたのかRINEで田辺が俺にメッセージを送ってくる。さすがに授業中に喋っていたら数学の先生も俺たちのことを注意するだろうからな。


「どうしたんだ?さっきから周りをちらちらとみて。まるで授業に集中していないな」


「いやいや。そういうお前だって授業中に俺の様子を見ているんだから、授業に集中しているとはいいがたいだろ?」


「そうだが……さっきから周りを見ているのはなんでだ?隣にいるこっちからしたら、隣の奴が授業中にちらちらとみてうっとおしいんだ」


「それはもちろん、木下さんや神室さんや小町さんを見るためだ」


「おいおい、もしかして自分にワンチャンあるかもとか思ってんのか?やめとけ、俺たち陰キャが近づいたところで、痛い目に合うだけだぞ」


「冗談はそこまでにして、お前の目から見てあの3人に不自然なところはないか?」


俺が送ると、既読はつくものの返信がこない。ちらっと横にいる田辺を見ると田辺は注意深く教室にいる3人を見ている。


かなり集中しているようだ。これは少しの間時間がかかるな。俺には長年の経験から田辺がどれぐらい集中しているのかがわかるのだ。


俺は田辺がそうやって見ている間に、写せていなかった教科書の内容と黒板の板書を済ませる。


すると、ちょうど終えたタイミングで田辺からの返信が来る。


「わからないな。そもそも今の時間は撮っていない可能性だって普通にあるわけだし、犯人じゃない人がとっている可能性もあるだろう?」


「それはその通りだが、なんか怪しい人だけでも……」


「そういうわけにはいかないだろう。もし犯人を間違えていたらその人の人生を冤罪で壊す可能性だってある。今回は確実性が一番重要だ」


田辺からごもっともな正論をぶつけられて俺は黙ってしまう。そのあとも田辺からの追撃は続く。


「それに、そうやって偽の犯人にかまっている間に本物の犯人が逃げるかもしれないだろ?逃げられたら俺たちじゃ、どうしようもない」


確かにそうだ。そうなったら【聖術師】の辻井さんや一条さんの負担を俺のせいで増やしたことになる。


いくら俺が圧倒的な身体能力を持ったところで、高校生であることに変わりはない。できることには限度がある。


「わかったよ。軽率な発言をしてすまなかった」


俺は素直に自信の過ちを認めて田辺に謝罪を送る。田辺もたまにはいいことを言うんだよなぁ。すると、田辺からすぐに届く。


「あ~レスバで勝負すんの気持ちいい~」


俺は隣に座っている田辺をバッと見る。すると、田辺はにやにやとこっちを見ている。


前言撤回。やっぱこいつはいいところだけじゃなくて、多少むかつくところも存在しているわ。


そのまま、俺たちは土曜日の授業を終える。土曜日は平日と違って4時間授業であることが唯一の救いだ。いつもよりも早く帰る事ができる。


俺はそのまま家に帰る。田辺はどうやらこの後食堂で飯を食べてから帰宅するそうだ。村田はこの後運動部での活動があるそうだ。


「それじゃ」


「じゃあ、さようなら」


そう言って、俺たちは別れる。






家に到着すると、なんとも香ばしいにおいが漂ってくる。どうやら家では、母がすでに昼食の用意を済ませてくれていたようだ。


「新、昼ごはん出来てるわよ」


「はいはい」


そう言って俺は昼食を食べる。昼ご飯は牛丼で、非常においしい。すべて完食した後はのんびりとそのあとを過ごす。


この土曜日の夕方が一番楽しい瞬間かもしれない。日曜日だと明日学校に行くことを考えなければならないが、土曜日だと明日も休みで気持ちが落ち着く。


そのままいつも通りアニメを見て、勉強をする。そして、普通に夜ご飯を食べようとした直前にピコンという音がしてRINEの通知が来る。


俺はそれを確認する。それは村田からだった。


「委員長と田辺がいないみたいなんだ。探せのを手伝ってほしい!!」


相当逼迫している様子で一部日本語がおかしい部分も見受けられる。よほど焦って打ったのだろう。


ちらっと時計を見て今の時間を確認する。今の時間は約7時。今ならまだ外出しても問題ないだろう。


「ちょっとそこらへんに出かけてくるわ」


「気を付けてね~」


後ろから母が言っているのが聞こえる。そして、俺は家から急いで出ていく。





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